第63話 犬耳あーちゃん
ある日の放課後。
今日は、カウンターで麗子先輩と一緒に座っている。
準備室の方は、恵先輩、静先輩、のどか先輩が中で本を読んでいる状態だ。
カウンターで本を読むのに没頭していると、頭の上から声がした。
「はろー、あーちゃん」
顔を上げて見ると、そこには、紙袋を持った翠先輩が、ニコニコしながら僕を見ている。
僕は翠先輩の姿を見た途端、身構えってしまう。
「やだー、あーちゃん、そんなに警戒しないでよ。
もう、女装なんてさせないから」
「ホントですか?」
疑問を抱きながらも、僕は警戒を解いた。
「ひょっとして、この人が、手芸部の部長さん?」
「その通り、私が手芸部部長の松橋翠。
ん、あなた、見かけない顔ね?」
「はい、新しく図書委員になりました、大津麗子です。
よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね。
って、あーちゃん、逃げないの!」
「むぎゅっ」
二人が自己紹介している隙に、脱出しようとしたら。
翠先輩に発見されて、また、首根っこをつかまれた。
「さあ、中に入りましょうか」
そう言って、翠先輩と麗子先輩が、僕を連行しながら準備室に入っていった。
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中に入ると、3人がこちらを向いて。
「翠、今日も持って来たの?」
「「え、また、あーちゃんの女装姿が見られるの」(わくわく)」
恵先輩と、静&のどか先輩が、そう言った。
「え、二人から聞いた、あの、あーちゃんの女装姿が見れるの」
好奇心一杯の顔で、そう言うのは麗子先輩。
「残念、今日は女装じゃないんですよ」
「「「「なーんだー!」」」」
翠先輩がそう言うと、心底、残念そうに言う4人。
「じゃあ、今日は何しに来たのよ」
憮然としながら、翠先輩にそう言う、恵先輩。
「今日はねえ」
そう言うと、紙袋から何やら取り出してから、僕に近づき、それから、その何かを僕の頭とお尻に取り付けた。
「じゃん、実はこれなのです」
「「「「かわいい〜♡」」」」
「???」
と、翠先輩が言うと、4人が黄色い叫び声上げ、僕は?マークを頭に浮かべた。
「とうなってるんですか?」
「コレを見て」
訳が分からずに僕がそう言うと、翠先輩が紙袋から鏡を取り出して、僕に見せる。
僕が鏡を覗くと、僕の頭に柴犬の様な耳がある。
もしやと思い、自分の後ろを見ると、柴犬の様な丸まった尻尾があった。
「何ですかコレ」
「名付けて、犬耳あーちゃん」
呆れた様にそう僕が言うと、得意満面に翠先輩が答えた。
「ねえ、ねえ、あーちゃん、いいかしら」
そう言いながら、鼻息を荒くしながら、恵先輩が近づいたかと思ったら。
ガバッと、僕の頭を胸に抱き締めた。
「よ〜し、よ〜し、ほうら、よ〜しよし」
抱き締めながら、僕の頭をガジガジと撫で廻す、恵先輩。
あなたはムツ〇ロウさんですか。
「あ、先輩ずるいですよ」
「私も、私も(もふりたい〜)」
「私も撫でたい〜」
静先輩、のどか先輩、麗子先輩がそう言って、僕の左右と後ろにくっ付いて来た。
「もお、それを持って来たのは、私でしようが」
文句を言いつつも、僕を取り囲む輪の中に飛び込む、翠先輩。
「誰ですか〜、変な所を触るのは〜」
ドサクサに紛れて、僕の大事な所を誰かが触っている。
「だ、誰か、助けて〜!」
思わず、僕は誰かに助けを求めるが、誰も来る訳が無い。
結局、僕は、5人の女の子に揉みくちゃにされながら、しばらくの間、モフられる事になってしまった。




