第62話 新人天使と手遊び
ある日の放課後。
今日は、恵先輩は最近、無理をし過ぎている様なので、強引に返ってもらい。
静先輩と、のどか先輩は予備校の予約があるので、今日は図書室には来ない。
と言う訳で、有佐先輩がいない限りは、いつもだったら、僕が一人で貸出希望者の応対をしなければならないが。
今回は、新しく入った、麗子先輩と一緒にカウンターの中にいる。
「分かってはいたけど、こんなに少ないんだ」
「これでも、今は冷房が入っているからまだ人気があるけど、普通は、全く、人はいないんですよ」
図書館の事を少しは知ってはいる先輩でも、しばらくカウンターに座っていると、余りの暇さに驚いている。
「それよりも、この間は大変だったよね」
「はい、まいりましたよ」
先輩が、この間の集団尋問の事を言った。(第61話参照)
「でも、あーちゃんって、そんなに誰とでもハグしてたんだ」
「ぎくっ!」
「でも、あーちゃんの事だから、多分、抱きつかれたんだろうね」
「ははは」
最近は、甘えて自分から抱きつく事もあるのは、今は黙っていよう。
****************
そんな事を色々と話していると。
「あーちゃんって、手が綺麗だね」
カウンターの上で、貸出期限をオーバーしている人間がいないかを、資料を確認していた僕の手を見ながら、先輩がそう言った。
「え、そうですか?」
「うん、男の子の手にしては綺麗だね」
そう言いながら、僕の手を握る先輩。
しかし、自分の行為に気づいて、直ぐに手を引っ込める。
「ご、ごめんなさい・・・」
そう言って、顔を赤くする先輩。
でも、今度は僕が先輩の手を握る。
「あっ・・・」
「麗子先輩、別に恥ずかしい事じゃないですよ。
静先輩や、のどか先輩なんかも平気で、僕の手を握るんだから。
だから、先輩も握ってください。」
「あーちゃん、ありがとう」
お礼を言いながら、先輩も僕の手を握り返す。
「あーちゃんの手は、細くて長くて、しかも柔らかい。
大きさは違うけど、女の子の手って言っても違和感ないよ」
と言いながら、僕の指を一本、一本を三本の指で摘みながら滑らせる先輩。
そう言う先輩の指がこんなに滑らかなので、僕は先輩の指が滑るごとに、気持ちよさを感じている。
先輩が指を撫で終わると、今度は僕が先輩の手のひらを親指で揉みだす。
プニプニとした感触が面白い。
適当に揉むと今度は、手のひらに円を描く様に滑らせる。
「くすぐったいよ、あーちゃん」
くすぐったさに、先輩が軽く体を捩らせる。
「すいません」
直ぐに止めて、謝る。
すると、先輩が同じ様に、僕の手のひらに円を描いた。
そうすると、僕の背筋に”ゾワゾワ”する物が走る。
「先輩、止めて、止めて」
今度は、僕が体を捩らせる番だった。
「どうだ、まいったか」
し返して、得意満面の先輩。
「はい、まいりました」
弱った素振りを見せて、降参する僕。
それから、手のひら同士を合わせて、大きさを見てみる。
先輩の指先が、僕に指先に関節部分に来る位の違いだ。
「こんなに、違うんだね」
そう言うと、次にお互いの指の間に、指を通して握り合う。
「手だけでも、包み込まれると、何だか安心するね」
先輩の小さな拳を、僕の手のひらで包み込むと、先輩がそんな事を言う。
「あー気持ちいい」
手のひらのツボを押してやると、先輩が気持ち良さそうに言う。
そうやって、時間が来るまで、僕たちは手遊びをして遊んだ。




