第61話 新しい天然天使
ある日の昼休み時間。
夏休みも終わって、もう数日が経った。
今日は、有佐先輩と一緒にカウンターに座っている。
恵先輩、静先輩、のどか先輩は準備室で本を読んでいる所だ。
そうしてカウンターで、座りながら本を読んでいると。
「ガラッ」
急に、音を立てて、図書室の扉が開く。
その方向を見てみると、二人が図書室に入って来る。
もう一人は川尻先生で、もう一人は女の子で、ドコかで見たことがあるなあ。
髪型が前髪を切り揃えた、肩まで掛かる位のストレートで、背格好と雰囲気が、静先輩に似ている。
あ、そうだ、夏休み中に出会った、 2年の大津麗子先輩だ。
しかし、どうして先生と一緒に来たのかな?
「丁度良かった、今日は有佐さんがいる日だったわね。
有佐さん、秋人くん、一緒に準備室に来てね」
と、先生が僕らに言う。
そんな訳で、僕らは先生達と一緒に、準備室に入る事になった。
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中に入ると、3人がこちらをみて、そして。
「「麗子、どうしたのよ!」(ビックリ)」
静先輩、のどか先輩は、同時にそう言った。
「チョット待ってね、私が説明するから」
と、先生がそう言って、一旦、落ち着かせる。
「知っている人もいるけど、彼女は2年生の大津麗子さん。
実は、彼女のクラスの図書委員が転校する事になって、急遽、彼女が図書委員になる事になったの」
「大津麗子です、よろしくお願いします」
先生がそう言って紹介すると、前に出て、挨拶をする麗子先輩。
「それからこちらは、図書委員長の木葉恵さん」
「よろしく、恵って呼んでね」
「はい、こちらこそ、お願いします」
「こちらは、3年の小川有佐さん」
「よろしくね、私も有佐って呼んでよかけんね〜」
「・・・ははは、よろしくお願いします」
イキナリの有佐先輩の方言に、ちょっと驚き気味の麗子先輩。
「その二人は、顔なじみみたいだから、省略して。
こっちは、1年生の伊倉秋人くん。」
「あ〜、秋人くん、久しぶり〜」
「はい、麗子先輩、久しぶりです」
笑顔を見せながら、僕に挨拶した麗子先輩。
それに答えて、僕は挨拶を返した。
「あれ〜、麗子、あーちゃんと会った事があるの?(いつ?)」
と、のどか先輩が、麗子先輩に尋ねた。
「うん、夏休みに図書室に出て来た時にね」(第50話参照)
「へえ、そうだったの」
麗子先輩がそう答えたので、静先輩が納得する。
「あ、麗子も図書委員になったのだから、秋人くんじゃなく、あーちゃんって呼ばないと(そうそう)」
「え、そうなの?」
「うん、いつの間にか、読書部員か図書委員は、秋人くんじゃなく、あーちゃんと呼ぶようになっているの」
のどか先輩がそう言うと、麗子先輩が尋ねて、静先輩が答えた。
「ほれ、あーちゃんって、呼んでごらん(ほらほら)」
「あ、あーちゃん・・・」
のどか先輩がそう言う様に急かすと、麗子先輩が顔を赤くして、照れた様にして僕を呼んだ。
「じゃあ、次は、あーちゃんとハグするのよ、ここにいる人間は、みんな、あーちゃんとハグした事があるのよ、ねえー、先生」
そう、のどか先輩から向けられて苦笑いをする、川尻先生(第22、49話参照)。
「え、その・・・、夏休み中に会った時に、抱き止められたから・・・」
顔を真っ赤にして呟く、麗子先輩。
その言葉を聞いて、麗子先輩以外の全員の顔色が変わった。
「へえ、そんな事があったんだ」
「それは、聞き捨てならんたい〜」
「その時の状況を聞きたいわね」
「ねえ、ねえ、どうなの(わくわく)」
「それは、図書委員の人間関係に関わるから、詳しく聞かないとねえ〜」
そう言って、ある者は嫉妬に満ちた目で、そして、ある者は好奇心で僕に迫ってくる、恵先輩、有佐先輩、静先輩、のどか先輩、川尻先生たち。
その状況に、呆気に取られる、麗子先輩。
こうして、昼休みと放課後に跨る、僕への尋問が開始された




