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第54話 夕立の天然天使

 夏休みのある日の夕方。



 今日は、僕と静先輩が当番だった。


 ふと時計を見てみると、もう帰る時間になったので、先輩に尋ねてみる。



 「先輩、もうそろそろ時間なので、帰る準備をしませんか」


 「ええ、分かったわ。

ねえ、あーちゃん、今日は一緒に駅まで行かない?」


 「はい、じゃあ一緒に帰りましょうか」



 二人でそう話した後、図書室の窓の戸締りと空調を止め、それから図書室と準備室を一通り見廻る。


 別に何も無い事を確認した後、扉の鍵を詰めたら、二人で一緒に職員室に鍵を返却しに行く。


 そうして二人並んで廊下を歩いていると、窓の外に見える遠くの空が、暗くなっているのに気付く。



 「あれ、夕立が来るのかな?」



 僕がそう言うと。



 「早く、帰った方が良いかも」



 先輩もそう言った。


 僕らは、急ぎ足で職員室に行って、鍵を返却すると、急いで玄関へと向かった。



 ***************



 玄関で靴を履き替えると、二人一緒に玄関を出て、駅へと急ぐ。



 「先輩は傘を、持って来ましたか?」


 「いいえ、あーちゃんは?」


 「今日は、僕も忘れて来たんですよ」



 僕らは、そんな事を話していると、頬に何かが当たる感触が・・・。



 「あ、振り出した!」



 僕が慌てて、そう言うと。



 「どこかで雨宿りをしましょう」



 先輩が周囲を見回した。


 そうしている内に、雨足が更に強くなって来る。


 二人は、適当な雨宿りが出来る場所を探しながら、駅への道を走って行く。



 *****************



 しばらく二人で走っていると、とあるシャッターが閉まった、店の軒先に入る。


 走っている間に、二人はびしょ濡れなってしまった。



 「あー、濡れてしまいましたね」



 そう言って先輩の方を見ると、先輩は濡れた制服が透けていて、下着や肌の色までくっきりと見える。


 それに気付いた僕は、思わず先輩から目を反らした。



 「本当に災難だったね」



 そう言う先輩は、自分の状況に気づいていない。


 そうしていると、突然、屋根の上から大量の水が流れ落ちて来た。


 どうやら、雨樋(あまとい)から(あふ)れ出したようだ。



 「キャッ!」



 先輩が小さく悲鳴を上げると、それを見て僕は、先輩を自分の方に引き寄せた。



 「先輩、大丈夫ですか」


 「あーちゃん」



 正面から抱き締める形で、先輩が僕の腕の中にいる。


 先輩を見ると、先輩が熱の籠もった瞳で、僕の事を見詰める。


 そして濡れた衣服で、二人が接触した部分が、いつも以上に熱くそして柔らかい。


 そうして、段々と接触した部分の皮膚の感覚が薄らいで、二人の境目が無くなったかの様な錯覚に(おちい)る。


 だけど、僕は人目があるかもしれない場所で、こんな事をしていられないので、離れようとするが。


 しかし、頭ではそう考えるけど、この感触が惜しくて体が離れ無くなり、先輩をさらに抱き締めた。



 「あーちゃん、暖かいよぉ」



 ウットリとするようにそう言いながら、僕の首筋に頬を当てる先輩。


 結局、雨が止む30分程の間、僕らはその状態でいる事になった。



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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
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