第52話 ぐったり天然天使
夏休みのある日。
今日は僕だけだけで無く、のどか先輩も来る予定である。
しかし、遅いなあ。
もう、10時近くになっているのに、忘れたのかな?
「ごめんなさい!」
ガラッと音を立てながら図書室の扉を開けて、それから急いで入って来る、のどか先輩。
「駅を降り損ねて、二駅先で折り返して来たの」
はあ、はあ、声を弾ませながら、先輩がそう言った。
「良かった、忘れていたんじゃないんですね」
「ううん、そんな訳ないよ、あーちゃんが来るんだし(とうぜんでしょ)」
二人でそう言っていると、何だか、のどか先輩の様子がおかしい。
そう思っていると、イキナリ、先輩がふらっと前に倒れそうになった。
「どうしたんだろ(あれれ)。
何だか、頭が少しフラフラするし(おかしいな)」
「熱射病かもしれませんね。
とりあえず、保健室に行きましょうか」
僕は先輩を抱き抱える様にして、そのまま保健室に向かった。
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「軽い熱射病みたいね、とりあえず、ここで横になっていてちょうだい。
ちょっと、職員室に用事があるから、何か用があったら呼んでね」
校医の先生がそう言うと、職員室の方に行った。
「ごめんね、あーちゃんに迷惑をかけて(しゅん)」
「いいですよ、大事にならなくて」
そう言って、済まなそうしている、先輩。
「昔、誰もいない図書室で発作を起こして、そのまま誰にも発見されずに亡くなった女の子がいたそうですし。
僕がいて、良かったですよ」
僕は、良子先輩の事を言った。
「へえ、そんな事があったなんて初耳。
あ、でも、学校の七不思議の一つに、髪の長い女生徒を校内のアッチコッチで見かけるってのが、あったね(そうそう)。
それと、関係しているのかな?(どうだろう)」
一応、目撃した人もいたのか・・・。
でも、会話したのは、僕だけの様な感じだし。
「でも、そうならなくて、本当に良かったですよ」
「うん、そうだね、ありがとう、あーちゃん(ニッコリ)」
と言って、僕にお礼をした、のどか先輩。
しかし、何だか、先輩が妙にモジモジしている。
「それでお願いがあるけど、あーちゃん、私の頭を撫でて(もじもじ)。
そうしたら、気分が楽になるから(おねがい)」
そう言って、おねだりをしてきた、先輩。
「はい、いいですよ」
僕はそう言いながら、先輩の頭に手を乗せた。
それから、先輩の髪に指を通して、その滑らかな感触を楽しみつつ、先輩の頭を撫でる。
「あ〜、あーちゃん、気持ち良いよ(ゴロゴロ)」
僕の手の動きを感じながら、猫の様に目を細める先輩。
先輩のその表情を見ていると、僕まで頬が緩んで来る。
「すう、すう」
しばらく、先輩の頭を撫でていると、先輩が寝息を立て始める。
でも、撫でているこの髪の感触が気持ち良くて、止めたく無かった。
「(なでなで)」
そして、そのまま僕は、先輩の寝顔を眺めながら、頭を撫で続けていた。




