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第49話 天然先生の夏休み

 夏休みのある日。



 とうとう夏休みに入った。


 僕ら読書部&図書委員は、読書部としては基本的に、土日とお盆以外の日を任意で活動し、図書委員としては特に受験生の為に、夏休みでも図書室を開放しているので、ローテーションを組んで出てこないといけない。


 しかし肝心の図書委員が、部活でもないのにこの夏休みでも出校しなければならないと言うのと、図書委員がクラスで半強制的に任命された経緯が重なって、図書委員がやる気を無くし、マトモに出てこようとする人間が少ないのだ。


 と言う訳で、またもや僕ら図書委員を兼務している読書部が、その尻拭いをしなければならない。


 結局、1学期と変わらず、図書委員の仕事をしながら部活をする形となった。


 そのローテーションは、まず受験生の恵先輩を優先して立てられる。


 最初は、勉強に専念してもらうために、出なくて良いと言ったけど、どうしても出たいと言う恵先輩の意志を尊重する事にした。

でも、一応は受験生だから、勉強に差し障りが無い程度にしてもらう。


 次に、静先輩とのどか先輩だけど、二人は予備校に行っている関係上、その予約との兼ね合いを考えなければならない。


 最後に、まだ一年で特に予定の無い僕が、その間を埋める形になった。



 ”はあ、夏休みにまで学校か”とも思ったが、どうせ夏休み中は家でゴロゴロするか、ゲームでもやってばっかりなのが想像出来るので、図書室で勉強でもすれば良いかとも思う。


 どうせ僕ももう少ししたら、受験が控えている訳だし。


 そう思いながら、学校に出て来て図書室に入ると、カウンターに入り勉強を開始した。


 夏休み中は、時々、部活関係の人間が来る位で余り人が来ない。勉強するなら街の公立図書館に行った方が良いしね。


 カウンターで勉強をしていると、図書室の扉が開いて、誰かが入って来た様だ。


 その姿を見てみると、川尻先生だった。


 先生は僕の姿を見つけると、カウンターにやって来た。



 「あれ、今日は秋人くんなの?」


 「はいそうです、で、先生は?」


 「うん、疲れたから休憩と気分転換を兼ねて、ここに来たの」


 「あれ、先生って、夏休み中は何をしているの?」


 「あのね、ずっとね研修が詰まっていたり、後、街中の見回りとか色々とあるのよ」



 へえ、先生って、夏休みにそんな事をしているのか。



 「この二、三日あった講習は、講師のおじいちゃん先生が、昔がドウトカコウトカでと言う話ばかりで、ウンザリしていたのよ」



 ゲッソリした顔でそう言う、川尻先生。


 

 「だから、秋人くんがいて丁度よかった」



 ん、どう言う事。



 「秋人くん、ちょっと立ってくれる」



 と言われて、僕が立つと、先生が急に僕に抱きついて来た。



 「先生、一体何を・・・」


 「ん、先生ね、疲れたから秋人くんに癒されたいのよ。

それに、職員室には若い先生が少ないから、若い男の子のエキスを補充にと言うのもあるの」



 先生・・・、それは口に出してはイケナイ事では・・・。



 「他の男の子には怖くて出来ないけど、秋人くんは可愛いし優しいから、あなたには甘えたくなるの。

だから、ねえ、ギュってして。」



 と言って、おねだりする川尻先生。

ハッキリ言って、本当に、この人教師なの?



 「はあ、気持ち良い〜」



 僕が抱きしめると、まるで温泉に入ったかの様な声で、そう言う先生。



 「大丈夫ですか、誰かに見つかったら」


 「大丈夫、大丈夫、今は夏休みだから人がいないんだし」



 大丈夫かな、前に似たようなシチュエーションになった時に、他の人間に見られた騒動になった事がある(第22話参照)。

その時は、二人で教頭先生から大目玉を喰らってしまったんだよね。


 そう思っていると、図書室の扉が開いた。


 誰かが来た様だ。


 その音を聞くと、それと同時に、先生が僕から離れた。



 「じゃ、じゃあ、先生、職員室に戻るから」



 と言って、そそくさと、先生が図書室から退散した。

 

 流石に、あの時の事は相当堪(こた)えたらしい。


 あの先生ですら、学習する位だから。


 僕は溜め息を付きながら、図書室から出る先生を見ていた。



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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
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