第47話 天然天使の休息
ある暑い日の放課後。
今日は恵先輩と僕の二人で、準備室で新入荷の本の整理をしている。
静先輩とのどか先輩は、今日は予備校で講義を受けている所だ。
二人で整理しながら、中身を一冊ずつ確認していると。
「ふう」
「どうしたんですか、先輩?」
恵先輩が、溜め息とつきながら、右手をこめかみに当てながら、頭を傾けている。
「うん、ちょっとね、最近、根を詰めすぎたみたいね」
先輩は受験生だから、いくら推薦が確実だと言っても用心に越した事は無いし、仮に推薦で落ちても一般で行くつもりだから、その時の為に準備をしているのだろう。
「余り、無理をしないで下さいね」
そんな気を遣う様な事を言ったが、まだ一年で切実さが無い僕が言うと、無責任に聞こえるかもしれないな。
「うん、ありがとう」
そう言って、また作業を再開したけど、先輩の様子がまたおかしくなった。
今度は椅子に座って、右手を額に当てながら、肘とテーブルに付き、大きな溜め息をついた。
「先輩、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫よ」
「とりあえず、保健室に行きませんか」
「大丈夫よ、ちょっと休憩すれば良いから」
そう言いながら、先輩が長椅子の方に歩いた。
長椅子の方に行くと、長椅子に深く座って、大きく後ろに寄りかかった。
どうやら、かなり無理をしている様だ。
先輩が少しでも楽になるように、トレードマークのポニーテールを解いた。
すると、先輩の髪の毛がファサリと落ちる。
先輩の背に普段見られない、黒い流れが出来あがった。
しかし、それでも先輩の顔を見ると、眉根にシワが寄っている。
僕はそんな先輩見かねて、側に近づき先輩の左隣に座った。
それから先輩に密着して、先輩の優しく抱き締めて胸元に引き寄せた。
「あ、あーちゃん・・・」
「先輩、キツいんでしょ、このまま休んで下さい」
「だ、大丈夫だから・・・」
「お姉ちゃんを助けるのは弟の役目だから、休んでよ”恵おねえちゃん”」
僕がそう言うと、先輩がこちらを向いて、ニッコリとしながら首を縦に振った。
それから先輩は、抱きしめた僕の左肩付近の腕に頭を乗せて来た。
僕は先輩が動かない様に、左腕を先輩に密着させて固定し、それから右手で先輩を撫でる。
髪に指を通しながら梳くと、サラサラと髪が指をすり抜けてゆく。
おでこに手を当てると、火照っているが熱があると言う訳では無い。
「あーちゃんの手は、ヒンヤリして気持ち良いね」
と先輩が言うので、しばらくおでこに手を置いておく。
すると、先輩が自分の右手を僕の手の上に置いた。
「ねえ、気持ち良いからそのままでいいかな」
「いいですよ」
先輩がそう言ったので、僕はそう言って答えた。
覗き込んで先輩の顔を見ると、苦しそうな表情が無くなり、穏やかな顔つきになっている。
しばらくそうしていると、先輩の手が僕の腕に落ちた。
先輩を見ると、”すう、すう”と言う音が聞こえる。
どうやら、寝入った様だ、僕は先輩が起きるまでこのままでいる事にした。
少し場面が、分かりにくいかもしれません。




