第46話 一粒で二度美味しい
ある暑い日の昼休み。
今日は、有佐先輩とカウンターで受付をしている。
恵先輩、静先輩、のどか先輩の3人は、準備室で待機&読書をしている所だ。
冷房が入っているので以前とは違い、図書室には2〜3人程いるが、その人間がカウンターにやって来るとは限らない。
なので、暇なのは以前とは、差ほど変わりはない。
「はあ、暇やね、いつもの事つやけど」
「でも、冷房が入ったから、今の時期は楽でしょう」
「あー、ほんなこて、ここは気持ちよかばい」
そうい言いながら、カウンターでゴロゴロする有佐先輩。
「どうしたんですか?」
「うんにゃね、私が家の家計ば握っとるけん、色々と節約せんといかんとばい。
だけんが、家ん冷房ば必要最小限にしととたい。
(うん、私が家の家計を握っているから、色々と節約しないといけないんだ。
だから、家の冷房を必要最小限にしているんだよ)」
「かわいそかばってん、家ん弟にも協力ばしてもろうととたい。
せやけど、”お姉ちゃんの為やけん、よかよ”って、あん子が言うとたい。
ほんなこて、かわいかね〜。
(かわいそうだけど、家の弟ににも協力をしてもらっているの。
だけど、”お姉ちゃんの為だから、いいよ”って、あの子が言うんだよ。
ほんとうに、かわいいよ〜)」
と、言いながら、悶える有佐先輩。
本当に、このブラコンは・・・。
「ん、何ね、あーちゃん、妬いたとね」
「違います!」
僕が呆れている所を、突然そんな事を言う先輩。
「照れんと、また、おねえちゃんに甘えんね」
と言いつつ、僕を頭を抱き締めて、自分の胸に押し付ける。
しかし、今、図書室には人がいるのでは?
「ちょっと、今、図書室には人がいるんでしょう」
「大丈夫たい、ここは今おる人間からは死角になっとるし、第一、誰もカウンターには来んやろたい。
(大丈夫よ、ここは今いる人間からは死角になっているし、第一、誰もカウンターには来ないだろうから)」
そうだった、ここは角度によっては死角になるんだったな。
「ほら、また”おねえちゃん”て呼んでんね」
そう言って、僕の腕を自分の背中に持って行き、それから、僕の頭を優しく撫で出した。
「おねえちゃん・・・」
僕はその行為に安心感を感じて、思わずそう言った。
先輩は、そのまま撫で続ける。
「あーちゃんは、もう一人の弟んごたんね。
あっ、この前ん女装は可愛かね、何か、妹んごたる。
そうたい、あーちゃんは弟と妹で、一粒で二度美味しいか。
(あーちゃんは、もう一人の弟のようだね。
あっ、この前の女装は可愛かったね、何だか、妹みたい。
そうだね、あーちゃんは弟と妹で、一粒で二度美味しいよ)」
先輩は僕を撫でながら、そんな事を言った。
「シュ、シュ、シュ」
しかし、向こうからカウンターに近づく足音がする。
僕らは、急いお互い離れて、指定席に戻った。
それからカウンターに、人影が現れる。
「あの、これを・・・」
とその足音の主である男子生徒が、本を手渡そうとするが、先輩の様子がおかしい。
顔は笑顔だが、全身に”良い所を邪魔しやがって(怒)”と言う、どす黒いオーラ放っている。
「ひえぇぇー!」
その余りの異様な雰囲気に、思わずその男子生徒が逃走した。
結局先輩は、どす黒いオーラを放ちながら、昼休み中座っていた。




