第45話 不思議な女の子2
ある暑い日の休憩時間。
僕は体育が終わった後で、教室に帰るところだった。
着替えに手間取り、渡り廊下を一人で帰っている途中で、ある人と出会った。
「お久しぶりね」
そこで見たのは、良子先輩だった。
相変わらずの上品ぶりだけど、昭和と言う単語が脳裏に浮かぶ人だ。
「お久しぶりです、こんな所で奇遇ですね」
そんな事を僕は言った。
しかし、先輩が、
「体育の時間、秋人君がプールで泳いでる所を見ていたの。
女の子みたいに可愛い顔なのに、脱ぐと凄いんだね。
細身で肩幅がそんなに広くないのに、引き締まった筋肉をしているんだもの」
と、悪戯っぽい笑顔で、僕にそう言った。
会って間の無い、年上の女の子からそう言われ、僕は少し照れてしまう。
その様子を見た先輩は、”くすくす”と笑っていた。
「ごめんなさいね、秋人君が可愛いから、ついイジメてしまうの」
そう言うと、ペロリと舌を出した。
しかし、不思議な人だな。
色気があるのに茶目っ気もあるし、上品だけど親しみやすさもある。
「あ、ちょっと待っててね、まだ少し濡れているわよ」
そう言いながら、スカートのポケットからハンカチを取り出して、それで僕の頭を拭き始める先輩。
そして、拭き終わると、
「はい、いいわよ」
そう言って今度は、僕の頭を直接撫でている。
撫でると言っても、髪に水分が残っているので、先輩の細くて白い手が、頭に乗せた状態で指先だけを滑らせている。
「自然に乾くまで、もう少し掛かりそうだね」
僕の頭を撫でながら、先輩がそう言ってくる。
しばらくそうしていると、
「もうすぐ次の授業が始まるから、早く行った方がいいよ」
「はい、分かりました」
先輩が手を引っ込めながらそう言ったので、僕もそれに答えた。
「それじゃあ、またね」
軽く頭を下げると、先輩は渡り廊下の向こう側へと歩き出した。
それと同時に、
「おーい、秋人! おそいぞー!」
クラスの男子2人が、僕を向かえに来た。
「お前、何をしてたんだよ」
「いや、先輩をちょっと話をしていて」
「先輩? 一体誰だよ?」
と言うので、説明しようとして良子先輩の方を見たけど、そこには誰もいなかった。
「???」
「何を言ってるんだよ、ほら早く行かないと怒られるぞ」
僕は首を傾げながらも、教室へと急いだ。
良子先輩は、夏期限定のイベントキャラです。




