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第44話 天然天使とお勉強2

 ある暑い日の放課後。



 もうすぐ試験があるので、部活も休止だけども。

 図書委員は、試験前でも図書室の管理や貸出の対応で、一応、図書室に来なければならない。


 とは言え、理由を付けて来ない人間が多い。


 図書委員の活動に不熱心な人間が多いのも、図書室の認知度が低い事も有るが、放課後や試験前などの拘束が多いのも大きい。


 その辺も、学校側が考慮すれば良いけども、今までの慣習や、学校のシステムがその様に出来ているので、ナカナカ変える事が出来ない。


 だけど、出てこない人間の事情も分からなくは無いが、全く知らんぷりをするのもどうかと思う。


 結局は、読書部を兼任している自分たちに、その皺寄せが来てしまうのだから。


 そんな事も有って、静先輩が、そう言う人間を良くは思っていない。


 まあ、自分以外の部員は優秀な人間ばかりだから、成績の面では心配は無い。


 それに、ここで勉強しても、分からない事は尋ねられると言う、メリットもある訳だし。


 そう言う訳で、今回は静先輩に勉強を見て貰っている。


 恵先輩と、のどか先輩は、カウンターで勉強をしながら、一応待機している。


 今は、静先輩が隣に座って、僕に懇切丁寧(こんせつていねい)に教えている所だ。



 ******************



 「ふう、少し休憩しましょうか。

でも、あーちゃんは理解力が有るから、助かるわ」



 と言いながら、ニッコリ微笑む静先輩。


 その笑顔を見ると、胸の奥から暖かい物が湧き出て来た。


 

 「ん、どうしたの、そんなにニコニコして」



 と嬉しそうに微笑みながら、優しい眼差しで僕に尋ねて来る。


 そんな先輩の暖かな心に触れている内に、涙が出そう位の喜びを覚えた。


 僕は、そんな優しい先輩に甘えてみたくなって、椅子のキャスターを転がして、先輩の背後に回った。


 それから、脚の間に先輩を入れて、先輩のお腹に腕を廻して、先輩の右肩に顎を乗せた。


 先輩の肩に顎を乗せると、左頬と先輩の右頬とくっ付けながら、廻した腕の力を少しだけ強めて抱きしめた。


 そして、先輩の頬と体の柔らかさや体温を感じながら、挟んだ脚や抱きしめた腕の力を緩めたり、強めたりした。



 「あっ・・・」



 先輩は、僕のその行為に一瞬ビックリしたが、先輩の右手が抱きしめた僕の腕に軽く沿われ、左手は、僕の右頬を優しく撫でだした。


 それから、掛けている眼鏡が僕に当たらない様に、そっと外してテーブルに置いた。



 「先輩が微笑んでいたから、僕は嬉しくなったんですよ」



 僕はそう言いながら、頬だけでなく頭も”こっつん”とくっ付ける。


 それを聞くと先輩は、右手で僕の腕を擦り、左手は僕の頬を押し付けて、頬っぺたがもっとくっ付く様にした。



 「ふふふ、あーちゃんは甘えん坊だから。

でも、もっと甘えて来てもいいよ。

たっぷり、可愛がって上げるから」



 と言うと、僕の頬にあった左手が僕の頭に移動して行き。

そして髪に指を通しながら僕の頭を撫でる。


 その柔らかな感触を感じると、僕は抱きしめる力を少し強めた。


 この優しい雰囲気にお互いに浸っている内、ちょっとの休憩が最後まで続いてしまうのだった。


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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
夏の涼風
姉弟物の短編を取り揃えていますので、どうか、お越し下さい。
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