第44話 天然天使とお勉強2
ある暑い日の放課後。
もうすぐ試験があるので、部活も休止だけども。
図書委員は、試験前でも図書室の管理や貸出の対応で、一応、図書室に来なければならない。
とは言え、理由を付けて来ない人間が多い。
図書委員の活動に不熱心な人間が多いのも、図書室の認知度が低い事も有るが、放課後や試験前などの拘束が多いのも大きい。
その辺も、学校側が考慮すれば良いけども、今までの慣習や、学校のシステムがその様に出来ているので、ナカナカ変える事が出来ない。
だけど、出てこない人間の事情も分からなくは無いが、全く知らんぷりをするのもどうかと思う。
結局は、読書部を兼任している自分たちに、その皺寄せが来てしまうのだから。
そんな事も有って、静先輩が、そう言う人間を良くは思っていない。
まあ、自分以外の部員は優秀な人間ばかりだから、成績の面では心配は無い。
それに、ここで勉強しても、分からない事は尋ねられると言う、メリットもある訳だし。
そう言う訳で、今回は静先輩に勉強を見て貰っている。
恵先輩と、のどか先輩は、カウンターで勉強をしながら、一応待機している。
今は、静先輩が隣に座って、僕に懇切丁寧に教えている所だ。
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「ふう、少し休憩しましょうか。
でも、あーちゃんは理解力が有るから、助かるわ」
と言いながら、ニッコリ微笑む静先輩。
その笑顔を見ると、胸の奥から暖かい物が湧き出て来た。
「ん、どうしたの、そんなにニコニコして」
と嬉しそうに微笑みながら、優しい眼差しで僕に尋ねて来る。
そんな先輩の暖かな心に触れている内に、涙が出そう位の喜びを覚えた。
僕は、そんな優しい先輩に甘えてみたくなって、椅子のキャスターを転がして、先輩の背後に回った。
それから、脚の間に先輩を入れて、先輩のお腹に腕を廻して、先輩の右肩に顎を乗せた。
先輩の肩に顎を乗せると、左頬と先輩の右頬とくっ付けながら、廻した腕の力を少しだけ強めて抱きしめた。
そして、先輩の頬と体の柔らかさや体温を感じながら、挟んだ脚や抱きしめた腕の力を緩めたり、強めたりした。
「あっ・・・」
先輩は、僕のその行為に一瞬ビックリしたが、先輩の右手が抱きしめた僕の腕に軽く沿われ、左手は、僕の右頬を優しく撫でだした。
それから、掛けている眼鏡が僕に当たらない様に、そっと外してテーブルに置いた。
「先輩が微笑んでいたから、僕は嬉しくなったんですよ」
僕はそう言いながら、頬だけでなく頭も”こっつん”とくっ付ける。
それを聞くと先輩は、右手で僕の腕を擦り、左手は僕の頬を押し付けて、頬っぺたがもっとくっ付く様にした。
「ふふふ、あーちゃんは甘えん坊だから。
でも、もっと甘えて来てもいいよ。
たっぷり、可愛がって上げるから」
と言うと、僕の頬にあった左手が僕の頭に移動して行き。
そして髪に指を通しながら僕の頭を撫でる。
その柔らかな感触を感じると、僕は抱きしめる力を少し強めた。
この優しい雰囲気にお互いに浸っている内、ちょっとの休憩が最後まで続いてしまうのだった。




