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第40話 ぬくぬく天然天使2

 ある雨の日の放課後。



 この日は、カウンターは恵先輩、静先輩、準備室はのどか先輩、僕と言う布陣で本を読んでいる。


 この所、ずっと雨続きで気温も余り上がらず、少し肌寒い。


 寒さに弱い、のどか先輩はと言うと、案の定、



 「何かちょっと寒いねぇ(さむ〜)」



 と、寒がっている。


 う〜ん、結構な寒がりだなあ、これは冬はどうするのだろうか?


 ちょっと心配になって来る。


 そう思っていると、のどか先輩が、



 「ねえ、あーちゃん、後ろからギュってして(おねがい)」



 急に、おねだりして来た。


 それで、読んでいた本を机に置いて、テーブルを回って、先輩の後ろに行き、それから先輩を抱きしめた。




 「あ〜、暖かい〜(ゴロゴロ)」



 目を細めて、まるで喉からゴロゴロと音が鳴ってるかの様な、表情でそう言う、のどか先輩。


 しばらく、そうやって先輩を後ろからハグしていたが、ずっと中腰で立っているから、膝の方がそろそろ苦しくなって来た。


 どうしようか? と考えていたいたら、ふと、良い考えが浮かんだ。


 それで一回、抱きしめていた腕を解くと、「あ〜!」と名残惜しそうな先輩の声が聞こえる。



 「先輩、もっと良い方法があるので、こっちに来ませんか」



 と、長椅子を指差して言った。



 「?」



 不思議そうな顔をしながらも、僕と一緒に長椅子の方に行く先輩。


 そこで僕は長椅子に座ると、自分の膝を叩いてから言った。



 「ここに座って下さい」



 それを聞いて合点がいった先輩は、横座りで僕の膝の上に乗り、それから僕にしなだれて来た。


 先輩に腕を廻して、先輩を抱きしめた。


 その時、僕は思いつきでやったこの方法を、”しまった”と後悔してしまう。


 太股に掛かるお尻の感触と、いつもよりも高い密着度に僕の心はクラクラして来た。


 さらに、先輩の柔らかな体の感触と暖かな体温、それに甘い匂いに、僕は何が何だか訳が分からなくなってしまう。


 ・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・

 ・・・・

 ・


 ******************



 「ん?」



 何か、あーちゃんの様子がおかしい?


 腰に廻した腕に力を入れて引き寄せて、もっと密着して来たり、私の髪を指で()いたり、おでこ同士をくっ付けたり、更には、頭に頬ずりしながら、抱きしめた腕を緩めたりキツくしたり。


 明らかに、今までに無い、濃い愛情表現をしている。


 確かに、一連の騒動(第37〜39話)があってから、あーちゃんは自分を少しずつ出すようには、なって来ているけど。

こんなにストレートに出しているのは、始めてだ。


 何と言うか、例えるなら”大型犬が、大好きなご主人様に抱きついて、思わず押し倒したけど、構わずに顔を舐めまくっている”と言う感じかな。


 そう思って、あーちゃんを見ると、頭に三角の犬耳と、背後にはち切れんばかりに振られた、犬尻尾が見えた気がする。


 しかし、冗談では無くて、このまま放っておくと、本当に私の頬を舐め始めかねない状態だ。



 「ちょ、ちょっと、あーちゃん、落ち着いて」



 (たま)りかねて、私はあーちゃんにそう言ったが、しかし、変なスイッチが入ったのか、聞こえている様子が無い。


 あーちゃんは、私をキュっと抱きしめたまま、頭を手で包み込むように押さえながら、ひたすら頬ずりをしていた。


 私は、恥ずかしくなり、あーちゃんに止める様に言ったが、全く耳に届いていない。


 私はしばらくの間、恥ずかしさに耐えなければならなかった。


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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
夏の涼風
姉弟物の短編を取り揃えていますので、どうか、お越し下さい。
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