第39話 あーちゃんを甘やかそう2
ある雨の日の昼休み時間(第37話より)。
「うっ、うっ」
有佐に抱きついて、泣き声を殺している、”あーちゃん”。
それを準備室のドアの隙間から、見ていた3人。
「「「・・・・・・」」」
それを見ながら、沈黙する。
「あーちゃんて、そうだったの?」
「気づいていなかった・・・」
と、言って絶句する、恵と静。
「あれ、二人は気づいていなかったの?(そうなの?)」
そんな事を言う、のどか。
「だって、物凄く優しいけど、全然甘えて来ない人って、本当は物凄い甘えん坊だけど、甘えるのが下手な人なの。
だけど、甘えん坊の裏返しで、人のそんな心に敏感だから、とても優しいのよ。
だから、私は、機会が有ったら、あーちゃんを可愛がっていたんだからね」
「ガガーーーン!」
まるで雷に打たれたかの様に、硬直する恵と静だった。
しかし、恵は直ぐに、今までの事を考え始める。
良く考えて見れば、思い当たる事が一杯あったのだ。
例えば、勉強を見てやって、良くできた時に頭を撫でると、とても嬉しそうにしてた事とか(第27話参照)。
それに私から、あーちゃんに抱きついた事は有るけど、あーちゃんが私に抱きついて来た事は無い。
まあ、男の子がイキナリ抱きついて来るとか、セクハラだけど、あーちゃんになら別に構わない。
あと、有佐とのやり取りとか、あーちゃんを弟みたい扱うと、嬉しそうしている所を見ると。
どうやら、あーちゃんは”お姉ちゃん”が欲しいのかもしれない。
それに有佐の事を見ていたら、あーちゃんみたいな弟が欲しくて欲しくてしょうが無くなっていた。
****************
それから数日後の、ある雨の日の放課後。
この日は、静とのどかに頼んで、早く帰ってもらった。
そして、いつの間にか片付けられていた長椅子に座って、あーちゃんを待っている。
そうしていると、あーちゃんが準備室に入って来た。
「すいません、遅れました」
「あーちゃん、こっちにおいでよ」
私は自分の横をトントン叩いて、ここに来る様に誘った。
「?」
不審に思いながらも、私の横に座る、あーちゃん。
そして、私は、あーちゃんの頬を両手で包んでから、さらに、自分のおでこを、あーちゃんのおでこにくっ付けた。
「え、先輩・・・」
「ねえ、あーちゃん、この間ね、有佐と抱き合っていた所を見ちゃったの」
「・・・・」
「だから、あーちゃん、私の事をお姉ちゃんって言っても良いの。
違う、お姉ちゃんって言って頂戴。
私、あーちゃんのお姉ちゃんになりたいの」
「そ、そんな・・・」
「それとも、あーちゃんは嫌なの?」
「違う、そんなんじゃないよ」
「じゃあ、お姉ちゃんって言って」
「恵おねえちゃん・・・」
その言葉を聞いた途端、嬉しくなって、あーちゃんの頭を思わず胸に抱きしめていた。
「恵せ・・、お姉ちゃん!」
「お姉ちゃんは弟を可愛がる物だから、あーちゃん、お姉ちゃんに甘えてよ、ねっ」
そう言うと、あーちゃんは私に抱き付き、そして、ジッとしたまま私の暖かさを感じている。
そんなあーちゃんを私は、しばらく、頭を撫でながら慰めていた。
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それから、あーちゃんには二人きりの時は、出来るだけ”お姉ちゃん”と呼ぶ様にさせている。
まだ、少し照れながらだけど、それが物凄くかわいい。
それから、あーちゃんから、少しづつだけど、自分から私たちにくっ付くようになった。
まあ、それもだんだん自然となって来るのだから、じっくりと見守っていきましょう。




