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第38話 あーちゃんを甘やかそう1

 ある雨の日の昼休み時間(第37話より)。



 「うっ、うっ」



 有佐に抱きついて、泣き声を殺している、”あーちゃん”。


 それを準備室のドアの隙間から、見ていた3人。



 「「「・・・・・・」」」



 それを見ながら、沈黙する。



 「あーちゃんて、そうだったの?」


 「気づいていなかった・・・」



 と、言って絶句する、恵と静。



 「あれ、二人は気づいていなかったの?(そうなの?)」



 そんな事を言う、のどか。



 「だって、物凄く優しいけど、全然甘えて来ない人って、本当は物凄い甘えん坊だけど、甘えるのが下手な人なの。

だけど、甘えん坊の裏返しで、人のそんな心に敏感だから、とても優しいのよ。

だから、私は、機会が有ったら、あーちゃんを可愛がっていたんだからね」



 「ガガーーーン!」



 まるで雷に打たれたかの様に、硬直する恵と静だった。


 特に、今まで、秋人に色々と助けて貰っていた、静に取っては、心臓に杭を打たれる言葉だった。



 「(そ、そんな、あーちゃんがそんなに、苦しんでいたなんて・・・)」



 午後の予鈴が鳴るにも構わずに、有佐に抱きついて泣いている、秋人を見詰めている3人であった。



 ***************



 それから、静は秋人を癒す方法を考えていた。


 秋人の事を思うと、胸が張り裂けそうだ。


 しかし、どうしたら・・・。 



 *************



 ある雨の放課後。



 この日は、静は恵とのどかに、頭を下げて早く帰る様にしてもらった。

 

 そして静は、準備室にある、長椅子に座っている。


 この長椅子は、座るのに大変低いので、誰も座らずにいる内に、いつの間にか物置と化していた物である。


 それを片付けて、キレイにした。


 そうしている内に、秋人が入って来た。



 「あーちゃん、こっちに来て」


 「はい? 何ですか先輩」



 そう言って、自分の傍らに誘う静だった。



 「はい、ここに座って」


 「?」



 不審(ふしん)に思いながらも、秋人は座った。


 それを見た、静は秋人の頭を掴んで、自分の胸元に引き寄せる。



 「せ、先輩、何を・・・」


 「あーちゃん、私、見ちゃったの。

あーちゃんが、有佐先輩に甘えていた所を」


 「・・・」


 「あーちゃんが、そんなに苦しんでいたなんて。

私、ちっとも知らなかった。

私は、今までずっと、あーちゃんに助けて貰ったけど。

私、あーちゃんに、その分の事を返していないの」


 「そ、そんな事はないですよ」


 「ううん、私、あーちゃんに、その事を倍にして返したいの。

だから、私に甘えて来てね」



 おずおずと、私の背中に腕を廻して抱きつく、あーちゃん。


 泣いた、私たちは二人で抱き合って泣いた。


 それから、しばらくの間、二人で泣いた。



 *****************



 その後、あーちゃんは、自分から私たちにくっ付く様になった。


 まだ、少し遠慮がちな所があるけど、それでも良い。


 少しずつ、私たちに甘えて来てくれているのだから。 


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