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第33話 天然天使と相合傘(あいあいがさ)

 ある雨の日の昼休み。



 いつもの様に、カウンターで静先輩と座っていると。

 


 「はあ、困ったわね」


 「とうしたんですか?」



 ふと、静先輩がつぶやくのを聞いて、僕が尋ねてみた。



 「傘の渇き具合を見に、玄関まで行ったの。

そしたら、傘が無かったのよ」


 「あらら、盗まれたんですかね」


 

 と先輩が答えた、どうやら盗まれたみたいだ。



 「帰りはどうしょうかな、恵先輩も、のどかも今日は直ぐに帰るのに・・・」


 「じゃあ、先輩、駅まで一緒に行きませんか?」


 「いいの?」


 「はい、僕は別に構いませんよ。

先輩は電車から降りてから先は、大丈夫ですか?」


 「うん、電車から降りてからはバスに乗って行くし、家はバス停から直ぐだから」


 「それじゃあ、一緒に行きましょうか」


 そう言う訳で、僕が帰りに先輩を駅まで送る事になった。



 ****************



 放課後、



 また、いつもの様に、準備室で部活をしつつ、貸出希望者が来るのを待っていた。



 「もう、時間ですかね」


 「じゃあ、行きましょう」



 帰宅時間になったのを確認すると、戸締りをした後、出入り口の鍵を詰めて、それから、職員室に鍵を返して、靴箱へと向かった。


 靴箱に着いて、先に靴を履き替えると、玄関先で先輩を待つ。



 「お待たせ〜」



 と先輩が言うのと同時に、右手に持った傘の中央に、先輩が来る様な形で差しかけた。


 先輩の頭上が傘に(おお)われる。



 「・・・あーちゃん」


 「さあ、行きましょうか」



 ジッと僕を見詰める先輩に、照れくさくなって、先を急ぐ様な事を言った。


 二人で並んで歩いていく。


 僕は、先輩が傘の中央になるように差しているので、左肩が濡れて来ている。


 それに気付いた先輩が、僕の右手を両手で握り、僕の右肩に寄り添うようにくっ付いて来た。


 校門を出て、道路を歩いているが、常に先輩が歩道側になるように誘導する。


 その度に、先輩が僕の事を見詰めてくる。


 そうして歩いていると、対向車がこちらに向かって来るのに気づく。


 僕は注意しながら歩いていると、車がすれ違おうとした時、水たまりを通った。


 それと同時に、盛大な水しぶきが上がる。


 それを見た僕は、先輩を隠す様に傘を向けた。



 「バシャーーー!」


 「ブルルル」



 僕らに、水しぶきを浴びせた車は、そのまま走り去った。


 僕は先輩が濡れていないか、急いで見た。

 


 「先輩、大丈夫ですか?」


 「うん、大丈夫よ。

それよりも、あーちゃんの方が!」



 どうやら先輩を庇って、僕が水を被ってしまった様だ。


 頭がびしょ濡れになっている。


 先輩がポケットからハンカチを取り出して、僕を拭いてくれる。



 「あーちゃん、ごめんね、ごめんね」


 「どうして先輩が謝るのですか」


 「うんん、あーちゃんが私の事を庇ってくれたから、あーちゃん、濡れてしまったんだよ」


 「そんな事、気にしなくても良いのに」


 「あーちゃん、いつも私の事を庇ってくれるの、そんなあーちゃんの事をいつも感謝してるんだよ」



 僕の頭を拭き終わると、先輩が僕に抱きついて泣き出した。


 僕はそんな先輩の背中を擦りながら、慰める。


 それからしばらくして、先輩が落ち着くと。



 「先輩、急ぎましょうか、電車の時間も余り無い様だし」


 「うん、行きましょう」



 先輩は少し赤い眼で、はにかみながらも笑顔を見せた。


 傘を差した右手に両手を添えて、僕の右肩に頬を乗せながらくっ付いている先輩と一緒に、駅までの道を歩いて帰った。



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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
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姉弟物の短編を取り揃えていますので、どうか、お越し下さい。
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