第30話 雨の日の天然天使
ある日の放課後。
今日は、僕を含めた4人が準備室で、読書部としての活動をしている。
カウンターの方は、今は誰もいない。
基本的には、貸出希望者が稀なので、別に無理にカウンターに張り付く必要は無い。
貸出希望者が来た時に、対応すれば良いのだから。
カウンターにいる場合は、そんな気分と言う、気分の部分が大きい。
後、純粋な図書委員がいる場合は、一緒にやったりはする。
図書委員と言っても、有佐先輩以外はやって来ても殆ど会話も無く。
ただ、一緒に座っていると言う場合が多い。
まあ、有佐先輩以外は、余り見る事が無いけど。
4人が本を読むのに没頭していると、外から”ザー”と言う音が聞こえて来た。
「雨が降り出して来ましたね」
「あちゃ、傘を忘れて来ちゃた(あ〜あっ)」
僕がそう言うと、のどか先輩がそう答えた。
「ああ、私も忘れた!」
「私もです」
続けて、恵先輩と静先輩もそう言った。
「今日は、朝があんなに晴れていたし、天気予報でも別に雨が振るとか、言っては無かったですもんね」
「そう言う、あーちゃんはどう?」
と、静先輩が尋ねて来た。
そう尋ねられた僕は、準備室にある本棚に向かうと、その後ろから、傘を取り出した。
「じゃん〜、こうもあろうかと、いつも傘をここに隠していたんですよ。
教室だと、こんな大きな傘置けないし、それに盗まれるから」
「へえ、準備いいね」
「さすがは、あーちゃん(えらいえらい)」
僕がそう言うと、恵先輩とのどか先輩がそんな事を言った。
取りあえず、僕以外の3人は、しばらく天気の様子を見てみる事にした。
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もう、全校生徒の帰宅時間が来たが、雨は相変わらず振っている。
「駅までどうしようか?」
と、恵先輩が言った。
僕を含めた4人は、学校の近くにある駅を利用した、電車通学で通っているのだ。
駅までは、走って行っても10分以上かかるので、間違いなくずぶ濡れになるだろう。
「駅まで、一緒に入りませんか」
と、僕は言ってみた。
僕が持っている、この傘は普通の傘より大きい傘で、値段もその分高かった。
多少濡れるけど、ずぶ濡れになるよりは良いだろう。
「え、いいの(やった)」
「ありがとう、あーちゃん」
「ホントに、良いの?」
のどか先輩、恵先輩、静先輩がそれぞれ言った。
それで、僕の傘で3人を駅まで送る事になった。
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「あーちゃん、もっと良いかな」
僕の背中に抱きつく、恵先輩。
「あーちゃん、雨が冷たいよぉ(ぴたり)」
僕の左腕に腕を絡ませてくっ付く、のどか先輩。
「あーちゃん、濡れるから良い?」
僕の傘を持つ右手を両手で持って、僕に寄りそう、静先輩。
3人が同じ傘の中で、僕にくっ付いて、物凄く歩き辛い。
回りを見れば、生温かい視線と、嫉妬に満ちた視線が入り混じった、何とも言えない視線が僕に集中している。
そんな、微妙な空気の中、僕らは駅へと向かった。
この話は、私(作者)自身に似たような事がありました。




