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第30話 雨の日の天然天使

 ある日の放課後。



 今日は、僕を含めた4人が準備室で、読書部としての活動をしている。


 カウンターの方は、今は誰もいない。


 基本的には、貸出希望者が稀なので、別に無理にカウンターに張り付く必要は無い。

 貸出希望者が来た時に、対応すれば良いのだから。


 カウンターにいる場合は、そんな気分と言う、気分の部分が大きい。

後、純粋な図書委員がいる場合は、一緒にやったりはする。


 図書委員と言っても、有佐先輩以外はやって来ても殆ど会話も無く。

ただ、一緒に座っていると言う場合が多い。


 まあ、有佐先輩以外は、余り見る事が無いけど。


 4人が本を読むのに没頭していると、外から”ザー”と言う音が聞こえて来た。



 「雨が降り出して来ましたね」


 「あちゃ、傘を忘れて来ちゃた(あ〜あっ)」



 僕がそう言うと、のどか先輩がそう答えた。



 「ああ、私も忘れた!」


 「私もです」



 続けて、恵先輩と静先輩もそう言った。



 「今日は、朝があんなに晴れていたし、天気予報でも別に雨が振るとか、言っては無かったですもんね」


 「そう言う、あーちゃんはどう?」



 と、静先輩が尋ねて来た。

 

 そう尋ねられた僕は、準備室にある本棚に向かうと、その後ろから、傘を取り出した。



 「じゃん〜、こうもあろうかと、いつも傘をここに隠していたんですよ。

教室だと、こんな大きな傘置けないし、それに盗まれるから」


 「へえ、準備いいね」


 「さすがは、あーちゃん(えらいえらい)」



 僕がそう言うと、恵先輩とのどか先輩がそんな事を言った。


 取りあえず、僕以外の3人は、しばらく天気の様子を見てみる事にした。



 *****************



 もう、全校生徒の帰宅時間が来たが、雨は相変わらず振っている。



 「駅までどうしようか?」



 と、恵先輩が言った。


 僕を含めた4人は、学校の近くにある駅を利用した、電車通学で通っているのだ。


 駅までは、走って行っても10分以上かかるので、間違いなくずぶ濡れになるだろう。



 「駅まで、一緒に入りませんか」


 

 と、僕は言ってみた。


 僕が持っている、この傘は普通の傘より大きい傘で、値段もその分高かった。


 多少濡れるけど、ずぶ濡れになるよりは良いだろう。


 

 「え、いいの(やった)」 


 「ありがとう、あーちゃん」


 「ホントに、良いの?」



 のどか先輩、恵先輩、静先輩がそれぞれ言った。


 それで、僕の傘で3人を駅まで送る事になった。 

 


 ***************



 「あーちゃん、もっと良いかな」



 僕の背中に抱きつく、恵先輩。



 「あーちゃん、雨が冷たいよぉ(ぴたり)」



 僕の左腕に腕を絡ませてくっ付く、のどか先輩。



 「あーちゃん、濡れるから良い?」



 僕の傘を持つ右手を両手で持って、僕に寄りそう、静先輩。


 3人が同じ傘の中で、僕にくっ付いて、物凄く歩き辛い。


 回りを見れば、生温かい視線と、嫉妬に満ちた視線が入り混じった、何とも言えない視線が僕に集中している。


 そんな、微妙な空気の中、僕らは駅へと向かった。

この話は、私(作者)自身に似たような事がありました。


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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
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