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第27話 天然天使とお勉強1

 いつもと違う放課後。



 普通は人の気配が無い図書室だけど。

今日は、(まば)らながらも人がいる。


 一週間後に試験があるからだ。


 本来なら、試験前一週間は部活動は禁止なんだけど。

僕らは、図書委員でもあるので、今日も図書室に来ている。


 それで、僕はと言うと、準備室で恵先輩と一緒に試験勉強をしている。


 静先輩とのどか先輩の二人は、カウンターで試験勉強をしつつ、受付をしている。


 いつもだと、暇を(もてあそ)んでいる所だけど、時折、貸出希望者がやって来る。

何か、集中できそうには、思えないけど・・・。


 準備室で二人で勉強とは言うものの、実際には、僕が恵先輩に勉強を見てもらっている状態である。


 ただでさえ、学年トップで、普段から家庭教師について勉強をしている先輩は。

別段、学校の試験だからと言って、特別な事をするつもりは無いらしい。



 「先輩、ここどうやるんですか?」


 「うん、ここはねえ・・・」



 テーブルに座っている僕の斜め後ろに、先輩が座っている。


 後ろから問題を見ながら、僕の質問に対して、問題の解き方を教えている。


 しかし、チョットくっつき過ぎでは・・・。



 「良く出来たわねえ」



 と言いながら、正解すると微笑みながら、頭を撫でる。


 それは、まるで可愛い弟に勉強を教える感じだ。


 そう言う部分は、有佐先輩に似ている。


 流石、親友だけの事はある。



 ****************



 しばらく、先輩に勉強を教えてもらうと、今日の目標を済ませた。 



 「とりあえず、この教科については、大丈夫だと思うよ」


 

 と言いながら、後ろから軽くハグする。


 

 「あーちゃんが、理解力があって、教え甲斐のある子で良かった」



 と、耳元で(ささや)くと、頬っぺたを僕の頬っぺたにくっ付ける。


 その状態でしばらくいると、先輩の甘い匂いがして来るのに気付いた。


 その甘い匂いに、心臓の鼓動がドキドキしてきて。

その事を先輩に悟られたくなくて、思わず先輩に聞いた。



 「先輩、X大の推薦を狙ってるそうですけど、将来、何になりたいんですか?」


 「ん〜、そうねえ、一応は出版社に勤めて、編集者になりたいかな。

そんなのがあって、図書委員長をしたり、読書部の部長をしたりしてるんだ」


 「作家じゃなくて?」


 「自分には、画才や文才が無いのは分かってるし。

それでも、本を関わりのある仕事がしたいなって」



 と、先輩は自分の夢を語った。



 「それで、あーちゃんの夢はなあに?」



 だけど、自分は・・・。



 「僕は昔はなりたかった物があったけど、それが向いてないと分かると、それからは特に何になりたいかは・・・」


 「ふ〜ん、そうなんだ、そうだよね、小さい頃夢見た物が、中学位に現実が分かると、出来ないと理解する事があるんだよね。

それでも、夢を捨てきれない人もいるけど、新しい夢を探すのも別に悪くは無いよ。

それまでに時間が掛かるかもしれないけど、焦らずに行けば良いから」



 ・・・恵先輩、


 その言葉を聞いて、心が軽くなった。



 「先輩、ありがとうございます」


 「ふふふ、あーちゃんが元気になれて良かった」



 と、言いながら、僕を抱きしめる腕に力を込めた。



 「じゃあ、明日も続きをしましょうか」


 「はい、お願いします」



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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
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