第27話 天然天使とお勉強1
いつもと違う放課後。
普通は人の気配が無い図書室だけど。
今日は、疎らながらも人がいる。
一週間後に試験があるからだ。
本来なら、試験前一週間は部活動は禁止なんだけど。
僕らは、図書委員でもあるので、今日も図書室に来ている。
それで、僕はと言うと、準備室で恵先輩と一緒に試験勉強をしている。
静先輩とのどか先輩の二人は、カウンターで試験勉強をしつつ、受付をしている。
いつもだと、暇を弄んでいる所だけど、時折、貸出希望者がやって来る。
何か、集中できそうには、思えないけど・・・。
準備室で二人で勉強とは言うものの、実際には、僕が恵先輩に勉強を見てもらっている状態である。
ただでさえ、学年トップで、普段から家庭教師について勉強をしている先輩は。
別段、学校の試験だからと言って、特別な事をするつもりは無いらしい。
「先輩、ここどうやるんですか?」
「うん、ここはねえ・・・」
テーブルに座っている僕の斜め後ろに、先輩が座っている。
後ろから問題を見ながら、僕の質問に対して、問題の解き方を教えている。
しかし、チョットくっつき過ぎでは・・・。
「良く出来たわねえ」
と言いながら、正解すると微笑みながら、頭を撫でる。
それは、まるで可愛い弟に勉強を教える感じだ。
そう言う部分は、有佐先輩に似ている。
流石、親友だけの事はある。
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しばらく、先輩に勉強を教えてもらうと、今日の目標を済ませた。
「とりあえず、この教科については、大丈夫だと思うよ」
と言いながら、後ろから軽くハグする。
「あーちゃんが、理解力があって、教え甲斐のある子で良かった」
と、耳元で囁くと、頬っぺたを僕の頬っぺたにくっ付ける。
その状態でしばらくいると、先輩の甘い匂いがして来るのに気付いた。
その甘い匂いに、心臓の鼓動がドキドキしてきて。
その事を先輩に悟られたくなくて、思わず先輩に聞いた。
「先輩、X大の推薦を狙ってるそうですけど、将来、何になりたいんですか?」
「ん〜、そうねえ、一応は出版社に勤めて、編集者になりたいかな。
そんなのがあって、図書委員長をしたり、読書部の部長をしたりしてるんだ」
「作家じゃなくて?」
「自分には、画才や文才が無いのは分かってるし。
それでも、本を関わりのある仕事がしたいなって」
と、先輩は自分の夢を語った。
「それで、あーちゃんの夢はなあに?」
だけど、自分は・・・。
「僕は昔はなりたかった物があったけど、それが向いてないと分かると、それからは特に何になりたいかは・・・」
「ふ〜ん、そうなんだ、そうだよね、小さい頃夢見た物が、中学位に現実が分かると、出来ないと理解する事があるんだよね。
それでも、夢を捨てきれない人もいるけど、新しい夢を探すのも別に悪くは無いよ。
それまでに時間が掛かるかもしれないけど、焦らずに行けば良いから」
・・・恵先輩、
その言葉を聞いて、心が軽くなった。
「先輩、ありがとうございます」
「ふふふ、あーちゃんが元気になれて良かった」
と、言いながら、僕を抱きしめる腕に力を込めた。
「じゃあ、明日も続きをしましょうか」
「はい、お願いします」




