第22話 天然先生のおまじない?
今回、ちょっと話が苦しいです。
ある日の放課後。
僕は今、川尻先生と二人で準備室にいる。
恵先輩は生徒会に、静先輩とのどか先輩は予備校の日である。
何をしてるかと言うと、新入荷した本に保護シールを張る作業である。
先生の方は、新入荷した本のチェックである。
「先生、やっぱり、ライトノベルが多いですね」
「うん、今、活字離れとかで、年を取った人達がなんか必死になっているからねぇ」
そう、最近は学校だけでなく、公立の図書館でもライトノベルを学生向けに充実させている。
大昔は、漫画で何とか学生に本を読ませようとしてたけど、流石に漫画は・・・と言う声と、ライトノベルの台頭でそちらにシフトして行った。
従って、入荷する本の中でライトノベルは、カナリの割合を占めている。
もっとも、図書室のロケーションが悪すぎて利用が少ない、この学校の事情もあるけども。
しかし、妙に偏ったジャンルのラノベばかりだなあ。
「先生、このライトノベルの購入って誰が決めてるんですか?」
「ん、それねぇ、先生が決めてるんだよ。
先生、ライトノベルのそう言うのが好きだから」
先生、それって職権乱用じゃあ・・・。
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僕は、淡々と新しい本に、保護シールを貼り付けている。
カッタでシールを、本の大きさに切っていると。
「イタっ!」
カッタで指を切った。
「ん、秋人くん、どうしたの?」
「ちょっと、指を切りました」
「ねえ、見せてもらって良いかな?」
と、言って先生は、僕の指を切った方の手を取ると、
「(パクっ)」
先生は、切れた僕の指を口に含んだ。
口の中で、先生の舌が僕の傷口を舐めて行く。
傷が開いて、むき出しになった感覚器官に直接触れているので、くすぐったいとも、気持ちいいとも付かない感覚がする。
血が止まったかなと思うと、次に先生はその指を口から放して、そして僕の指を、自分の額に付けて何やらブツブツと唱えた。
「先生、何してるんですか?」
「早く治るように、おまじない、念を送ってるの」
先生、それ、おまじないですか?
まあ、先生らしいと言えば、先生らしいけど。
「先生、それ、おまじないですか」
「そうだよ、先生、おまじない、色々知っているからね」
「へえ、他にも有るんですか」
「うん、例えば、仲良くなる、おまじないとか」
「どんなのですか?」
「こう言うのだよ」
そう言うと、イキナリ先生は、僕に抱きついて来た。
「これが、仲良くなる、おまじないだよ」
って、これは、ただ単なるハグじゃないんですか!
「ほら、ほら、秋人くんもギュってして」
と言いながら、僕の腕を取って、自分の体に持って行った。
そうしていると、突然、準備室のドアが開いた。
「先生ー、この問題はどう解くんですか?」
一人の女生徒が、準備室に入ろうとしていた。
そして、その女生徒は、この光景を見てしばらく固まると、ゆっくりと動いてドアを閉め、それから盛大な足音を上げて走り去った。
「あれ、どうしたのかな?」
その元凶は、いたって呑気である。
って、先生、早く行って誤解を解かないと、アナタ、懲戒免職になりますよ。
と、僕は、そう怒鳴りたくなった。




