第19話 手のぬくもり
ある日の昼休み。
今日、僕は準備室で本を読んでいる。
恵先輩は、今、カウンタで受け付けをして貰っている。
昼休みは、図書委員が誰か一人でも居れば、とりあえずはOKと。
静先輩とのどか先輩は、まだ来ていない。
一人で読書に没頭していると。
「だ〜れ〜かなぁ?」
急に、視界が真っ暗になった。
ん、声と手が違うぞ? この手は。
「静先輩でしょ」
「あれ、ばれた」
「なぜ、ばれたの(ふしぎ?)」
静先輩と、のどか先輩が答えた。
「だって、この手の感触と冷たさは静先輩の手ですね。
いつも、僕の手を握ってくるから、感触を覚えてるですよ」
「そう言えば、そっか」
「静、あーちゃんの手を握るのが好きだもんね(うんうん)」
「うん、あーちゃんの手を握ると安心するんだあ、暖かいし」
「静先輩、冷え性なんでしょ、手がヒンヤリするから。
あ、でも外国では、手が冷たい人は心が暖かいって言うし。
実際、静先輩は優しいから」
「え、そんな、私・・・」
静先輩は顔を赤くして、俯いてしまった。
「ねえ、あーちゃん、私の手はどう?(さわって)」
と言って、のどか先輩が僕の左手を握った。
うわ、ぷにぷにしている。
「のどか先輩の手、柔らかくてプニプニしてる。
何かに似てる気が・・・、あ、仔猫の肉球だ」
「わたしゃ、猫なのかい(おい)」
「そう、そう、のどかは顎の下をくすぐると、喉をゴロゴロ鳴らすんだよね」
「もう、静まで(ぷんぷん)。
だからあーちゃん、顎の下くすぐってぇ(にゃあ)」
そう言いながら、のどか先輩は握った僕の手に、頬ずりをし出した。
「ホントだ、あーちゃんの手、暖かいね(ぽかぽか)。
私、意外に、あーちゃんの手握った事、余り無いから(ないなあ)。
それに静の言う通り、あーちゃんの手、安心するなぁ(すりすり)」
のどか先輩は、僕の手を握りながら、本当に猫のように目を細めて、頬ずりを続ける。
「あーちゃんの手って、男の子にしては柔らかいから、女の子の手って言っても違和感ないよ(ふにふに)」
と、のどか先輩が言うと、今度は静先輩が、僕の右手を両手で包んで来た。
「でも、この大きさは男の子の手だよ。
この大きさだけでも安心するけど、いざと言う時この手は、ホントに頼りになるんだよね」
静先輩も何かを思いながら、僕の右手に頬ずりを始める。
しばらく、二人は僕の手を頬ずりを続けていると、午後の予鈴が鳴り出した。
「それじゃあ、戻ろうか」
と、静先輩がそう言うと、二人は僕を握った手をそのまま繋いで、一緒に準備室を出た。




