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番外編4 小川 有佐

 ある日曜日。



 僕は、駅前で待ち合わせをしている所だ。


 その相手とは。


 あっ、やっぱり、慌てているな。



 「はあ、はあ、はあ」



 息を切らして走って来ている。


 その人は、僕の前に来ると、一旦、上がった息を整えながら。



 「ご、ごめん、寝過ごしとった〜」


 「いいよ、たった5分だから。

それに、せんぱ、うんん、有佐お姉ちゃんも社会人だし、疲れているんだよ」


 「・・・あーちゃん、ありがとう」



 そう、待ち合わせをしていたのは、有佐先輩である。


 そして、先輩が僕の、お姉ちゃん彼女になったのだ。


 そのキッカケはと言うと。



 ****************



 卒業式後、図書室で先輩に抱き付かれた時に。



 ”一時間後に、校舎裏に来て欲しか”



 方言で、そう(ささや)かれた。


 それで、僕に(まと)わり付く、静先輩達を振り切ると。

校舎裏で僕を待っているであろう、有佐先輩の所に行った。



 ・・・・・・



 「あ、いた」



 校舎の裏の目立たない所で、先輩が一人佇(たたず)んでいた。


 それを認めた僕は、先輩の側に足を進める。



 「あーちゃん、来たね」



 そう言って、側に来た僕を見ると、先輩が微笑んだ。



 「すいません、静先輩達に捕まっていました」


 「ふふふ、まあ、しょうが無かね」



 僕がそう言うと、先輩は今度は苦笑した。



 「それで、先輩、何の用ですか?」


 「あんね(あのね)、あーちゃん、え〜と〜、その〜」



 ハッキリした性格の先輩にしては、珍しく反応だ。



 「・・・、あーちゃん、私の彼氏になって欲しかと」


 「・・・はい?」



 予想外の言葉に、僕は呆然となった。



 「あーちゃんば、最初に見た時は、家ん弟に似とって可愛かて思ーとったと」


  (あーちゃんを、最初に見た時は、家の弟に似ていて可愛いと思っていたよ)



 「ばってん、家ん弟と違うと思う様になったとばってんがら、せやから、私のもう一人の弟と思う様になったとたい」


  (でも、家の弟と違うと思う様になったんだけど、そうだから、私のもう一人の弟と思う様になったんだよ)



 「せやけど、あーちゃんの事ば、弟とは別に、男の子としても意識するごつなったと」


  (だけど、あーちゃんの事を、弟とは別に、男の子としても意識する様になったの)



 「でも、あーちゃんば弟と思ーとる部分もあると。

だけん、あーちゃん、私ん弟彼氏になって欲しかと、ダメね?」


 (でも、あーちゃんを弟と思っている部分もあるのよ。

だから、あーちゃん、私の弟彼氏になって欲しいの、ダメ?)



 そう言って、先輩が僕の事を真剣な目で見詰めている。


 そんな先輩に僕は。



 「先輩、僕は先輩に弟として可愛がられて、居心地良かったし。

女の子として、守ってあげたいとも思っていました」


 「僕は、一体、どうしたら良いか分からなかったけど。

先輩の言葉を聞いて、先輩の事をお姉ちゃんでも、彼女でもどっちでも良かったんだと思いました」


 「だから、先輩、僕の方こそ、僕のお姉ちゃん彼女になってください」



 そんな事を言った。



 「・・・あーちゃん、うん、うん、よかよ〜」



 先輩がそう言うと、僕の頭を掴み。

それから、僕の頭を自分の方に引き寄せると。



 「チュッ♡」



 イキナリ、僕の唇に自分の唇を重ねた。



 「・・・先輩」



 不意打ちを喰らって、呆然をする僕に先輩が。



 「先輩じゃなかよ、お姉ちゃんばい」



 そう言いながら、オデコとオデコをくっ付けた。


 そして、しばらく、その状態でお互い見詰め合っていた。



 ***************



 「あーちゃん、何ばボーとしとっとね」



 先輩がそう言って、僕の顔を(のぞ)き込んだ。


 先輩は、ピンクを基調にした上品な花柄のスカートに、白のふんわりとしたブラウスの緩めた胸元には、金色のネックレスが見える服装である。


 それに、三つ編みを止めて、少しウエーブ掛かった髪を背中まで伸ばし、顔はうっすらと化粧をしているので、前よりも大人っぽく見える。


 そんな先輩が、僕を見ていたので、僕はドキッと胸が高鳴った。



 「う、うんん、何でも無いよ」



 先輩に、見惚(みと)れていたのを隠す様に、僕はそう言った。



 「そんな事より、ほら、(はよ)う来んね」


 「ちょ、ちょっと、お姉ちゃん」



 そう言うと、先輩が僕の手を取って、強引に引っ張り出した。


 こうして、いつも通りの先輩に振り回される、デートが始まった。



方言の訳が、正確ではないかもしれません。

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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
夏の涼風
姉弟物の短編を取り揃えていますので、どうか、お越し下さい。
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