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第12話 天然天使のお出迎え3

 静先輩が向かえにきた次の日。




 ホームルームが終わり、帰りの支度をしていると。



 「おーい!あーちゃん!(やほー)」


 

 と、僕を呼ぶ声がしたので、教室の出入り口の方を見ると。


 のどか先輩が、ニコニコしながら、こちらに向かって手を振っているのが見える。


 そして、それと共にクラス全員の視線が、僕の方に向かう。


 好奇の視線と、「爆発しろ!」と言うような、憎しみの籠もった視線が半々の男子と。


 同じく、好奇の視線が大半だが、中には、一連の騒動で何かに目覚めたのか、まるで獲物を狙う猛獣の様な視線の女子の姿があった。


 僕はそれらの視線に耐えきれず、カバンを持って急いでのどか先輩の所に行った。



 「せ、せ、せ、先輩、ど、ど、ど、どうしたんですか!」



 「うん、今日は私が来る番だから(どしたの)」



 余りの教室の空気に僕はキョドったけど、先輩はいたってマイペースだ。



 「それじゃあ、行こうか(れっつごー)」



 と、僕の左腕に右腕を組んで、僕を引っ張って行く。


 その姿を見た、クラスの空気が更に禍々(まがまが)しくなった。


 頼むから、長閑(のどか)なのは、名前だけにしてよーーーー!



 *****************



 先輩は僕を引っ張りながら、機嫌良く言った。



 「んー、今日も良い天気だったね(るんるん)」


 「はーーーーー」


 「ん、何か、疲れてるみたいだね(だいじょうぶ)」



 って、あなたの所為(せい)でしょう! 



 ****************



 先輩の行動に疲れていると、目の前にこの前、3人に襲われた空き教室が見えた。



 「そうだ、ねえ、ちょっとあそこによってこ(ねえねえ)」



 ん、どういう事ですか?


 そのまま、空き教室に引っ張られて行った。



 「ねえ、そこに座って(おねがい)」



 すると、今度は誰も使っていない椅子に座る様に言われた。


 意味が分からないけど、取りあえず座る。


 椅子に座ると、僕の頭が先輩の胸付近になった。



 「じゃあ、今度は目をつぶって(ねっ)」



 しょうがないので、言われるがままに目をつむる。


 すると、僕の頭が何かに包まれた。



 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜」



 先輩が僕の頭を胸に抱きしめたのだ。


 僕の顔は、先輩の胸に埋まる形になった。


 僕は急いで脱出しようとしたが。



 「あーちゃん、お願い、じっとして」



 いつもと違う真剣な声で言うので、僕は大人しくジッとした。



 「あーちゃん、疲れてるのは、私の所為でしょ」



 本当はそうだけど、先輩の様子がいつもと違うので、心配かけたくない為に。



 「いいえ、違いますよ」



 と答えたが、先輩は。



 「ううん、あーちゃん、優しいから、私を気遣うけど、私は分かるんだ」


 「私、こう言う性格だから、知らない間にあーちゃんに負担を掛けてしまってるんだね」


 「私はこの性格を直す気も無いし、負い目を感じるつもりは無いけど、それで、あーちゃんに負担を掛けるのは辛いな」



 と先輩は、僕に語りかけていた。



 「私、あーちゃんを癒す方法を知らないから、私が出来る事をしてるけど、あーちゃん迷惑?」



 僕は否定の意味で、首を左右に振ろうしたが、抱きしめられているので、わずかに動くだけだった。


 その瞬間、先輩がビクッと体を振るわせた。



 「お、お願い、あーちゃん、動かないで・・・」



 その上気した声を聞いて、動くのを止めた。


 そして、先輩は、僕の背中を擦りながら。



 「ありがとう、あーちゃんが少しでも癒せる様に、しばらくこうさせて」



 僕はあふれる程の安心感に包まれていった。



 ****************



 「あーちゃん、元気になれた」



 という声が聞こえたので、顔を上げると、優しい微笑みをたたえた、先輩の顔が見えた。



 「はい、ありがとございます」



 と、僕も笑顔で答えた。



 「あー、もおー、こんな時間(げっ)



 先輩は時計を見て、焦りだした。


 放課後になってカナリ経ってる。


 僕は椅子から立ち上がった。 



 「さあ、急がないと(あせあせ)」



 僕らはまた腕を組ながら、図書室へと向かった。



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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
夏の涼風
姉弟物の短編を取り揃えていますので、どうか、お越し下さい。
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