第114話 バレンタインデー2
その日の休憩時間。
はあ、あれから大変だった。
先輩達が帰った後、クラスに帰ると、クラス中の男子から詰め寄られてしまった。
その後、直ぐに、ホームルームになったので、男子連中の追求は済んだけど。
これからの休憩時間に又、再開されるのは目に見えている。
そう思っていると、クラス中の男子連中が席を立ち、僕の方に近づこうとしていた、その時。
「おーい! あーちゃん」
と、声が聞こえたので、クラス中の目が廊下の方に向かうと。
そこには、美咲先輩がいたのだった。
「あーちゃん、おいで、おいで」
先輩は、手招きをして、僕を呼んでいる。
僕は慌てて、先輩の所に向かう。
「先輩、何ですか?」
「ここでは何だから、こっちにおいでよ」
そう言って先輩は、僕の手を引っぱり出した。
強烈な視線を感じて後ろを見ると、好奇心全開の女子と、嫉妬心全開の男子の視線が合わさって、何とも言えない視線の圧力を感じた。
それらの視線を浴びながら、僕は先輩に連れて行かれる。
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「ここなら、いいかな」
そう言いながら、廊下の向こうにある角の影に、連れて行かれた。
「ねえ、あーちゃん、今日はバレンタインデーだよね」
「あ、はい!」
「ふふふっ、もちろん、あーちゃんにあげるけど。
そのまま、あげるんじゃ面白くないから」
そう言って、先輩がポケットから、小さなリボンが付いた包を取り出すと、それを、僕に見せた。
「これを、こうするの」
先輩がそう言うと、その包を制服の中に入れると、丁度、胸の膨らみの上にその包を置いた。
包は胸の上にあるけど、服に引っ掛かって、落ちては来ない。
「ほら、プレゼントを取ってごらんよ」
妖しい笑みを浮かべながら、先輩がそう言う。
さすがに、女の子の服の中に手を入れるのを、躊躇っていると
先輩が溜め息を付きながら。
「もお、しょうがないなあ」
僕の手を取ると、自分の服の中に入れる。
先輩の服の中に手が入ると、僕は先輩の体温の暖かさを感じた。
次に、柔らかい膨らみに手が当たると、反射的に手を引っ込めようとしたが。
先輩の手が、それを許さなかった。
「ふふふっ、ダメだよ」
引っ込めようとした僕の手を、逆に自分の胸に押し付ける、先輩の手。
先輩の胸の柔らかさと暖かさにドギマギしていると、廊下の角から異様な雰囲気が漂って来た。
見ると、またもやクラスメイトが後を付けていた様だ。
好奇心全開にして、ドキドキしながら事の成り行きを見守る女子と、嫉妬心を極大にして、殺意の籠もった視線を送る男子。
先輩は丁度、背後になっているので、気づいてはいない。
「(こんな所にまで、来なくても良いのに)」
僕は、心の中でそう思っていた。
「どうしたの? 手が止まっているよ」
そう言って僕の手を、自分の胸に押し付けながら動かして行く先輩。
僕は今、先輩の胸の柔らかさをその手に感じている。
それと同時に、様々な感情がない交ぜになった視線にも、晒されている。
僕は、教室に帰ってからの事を考えると、気が重くなる。
「あ〜ん、あーちゃん、くすぐったいよ♪」
僕はプレゼントを取って、早く手を抜き取りたいけど。
それを妨害している癖に、そんな事を言う先輩。
それに反応して、視線が強烈になって行く、ギャラリー。
僕はどうしたら良いのさー。




