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第114話 バレンタインデー2

 その日の休憩時間。



 はあ、あれから大変だった。


 先輩達が帰った後、クラスに帰ると、クラス中の男子から詰め寄られてしまった。


 その後、直ぐに、ホームルームになったので、男子連中の追求は済んだけど。

これからの休憩時間に又、再開されるのは目に見えている。


 そう思っていると、クラス中の男子連中が席を立ち、僕の方に近づこうとしていた、その時。



 「おーい! あーちゃん」



 と、声が聞こえたので、クラス中の目が廊下の方に向かうと。


 そこには、美咲先輩がいたのだった。



 「あーちゃん、おいで、おいで」



 先輩は、手招きをして、僕を呼んでいる。


 僕は慌てて、先輩の所に向かう。



 「先輩、何ですか?」


 「ここでは何だから、こっちにおいでよ」



 そう言って先輩は、僕の手を引っぱり出した。


 強烈な視線を感じて後ろを見ると、好奇心全開の女子と、嫉妬心全開の男子の視線が合わさって、何とも言えない視線の圧力を感じた。


 それらの視線を浴びながら、僕は先輩に連れて行かれる。



 **************



 「ここなら、いいかな」



 そう言いながら、廊下の向こうにある角の影に、連れて行かれた。



 「ねえ、あーちゃん、今日はバレンタインデーだよね」


 「あ、はい!」


 「ふふふっ、もちろん、あーちゃんにあげるけど。

そのまま、あげるんじゃ面白くないから」



 そう言って、先輩がポケットから、小さなリボンが付いた(つつみ)を取り出すと、それを、僕に見せた。



 「これを、こうするの」



 先輩がそう言うと、その包を制服の中に入れると、丁度、胸の膨らみの上にその包を置いた。


 包は胸の上にあるけど、服に引っ掛かって、落ちては来ない。



 「ほら、プレゼントを取ってごらんよ」



 妖しい笑みを浮かべながら、先輩がそう言う。


 さすがに、女の子の服の中に手を入れるのを、躊躇(ためら)っていると


 先輩が溜め息を付きながら。



 「もお、しょうがないなあ」



 僕の手を取ると、自分の服の中に入れる。


 先輩の服の中に手が入ると、僕は先輩の体温の暖かさを感じた。


 次に、柔らかい膨らみに手が当たると、反射的に手を引っ込めようとしたが。

先輩の手が、それを許さなかった。



 「ふふふっ、ダメだよ」



 引っ込めようとした僕の手を、逆に自分の胸に押し付ける、先輩の手。


 先輩の胸の柔らかさと暖かさにドギマギしていると、廊下の角から異様な雰囲気が漂って来た。


 見ると、またもやクラスメイトが後を付けていた様だ。


 好奇心全開にして、ドキドキしながら事の成り行きを見守る女子と、嫉妬心を極大にして、殺意の籠もった視線を送る男子。


 先輩は丁度、背後になっているので、気づいてはいない。



 「(こんな所にまで、来なくても良いのに)」



 僕は、心の中でそう思っていた。



 「どうしたの? 手が止まっているよ」



 そう言って僕の手を、自分の胸に押し付けながら動かして行く先輩。


 僕は今、先輩の胸の柔らかさをその手に感じている。


 それと同時に、様々な感情がない交ぜになった視線にも、晒されている。


 僕は、教室に帰ってからの事を考えると、気が重くなる。



 「あ〜ん、あーちゃん、くすぐったいよ♪」



 僕はプレゼントを取って、早く手を抜き取りたいけど。

それを妨害している癖に、そんな事を言う先輩。


 それに反応して、視線が強烈になって行く、ギャラリー。


 僕はどうしたら良いのさー。



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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
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