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第105話 大雪の中で

 ある日の朝。



 今日は大雪が降っていた。


 僕は辛うじて電車で学校に出る事が出来たが、路線によっては、運休やダイヤが乱れていた。


 それで、学校に出てみると、生徒の半数程度は出ていない様だ。


 学校に着いてしばらくすると、校内放送で、生徒及び教員の半数が出ていないので、臨時休校になったと放送された。


 当然、出て来た生徒の間には、大ブーイングの嵐が湧き起こった。


 しばらくしてブーイングが収まると、生徒達が文句を言いながら帰り支度とするが。

列車の運行状況からすると、出て来れても、無事に帰れるとは限らないみたいだ。


 開いているかどうか分からないけど、とりあえずカバンを持って、図書室の方に行ってみる事にした。


 図書室に向かって歩いていると、向こうに良く見る女の子の姿が見えた。



 「静先輩!」


 「あれ、あーちゃん」


 「こんな所でどうしたんですか?」


 「うん、電車が落ち着くまで、図書室に行こうと思って」


 「あーちゃんはどうしたの?」


 「僕も同じ理由ですよ」



 僕達はそう言いながら、図書館へと向かう。



 ***************



 図書室に着いてみると、扉に”閉館中”の札が刺さっていた。



 「やっぱり、閉まってますね」


 「先生、今日は来てないんだねえ」



 僕がそう言うと、先輩もそう言った。


 川尻先生、自動車通勤だから、この雪だと車が使えないから、多分来ていないだろう。


 道路の方は、電車以上の惨状らしいから。



 「で、どうしましょうか?」


 「ねえ、あーちゃん、校庭に出ない」


 「?」



 急にそう言って、先輩が僕を誘ったのだった。



 ***************



 二人は下駄箱で靴を履き変えて、校庭に出ていた。


 校庭は、一面の銀世界で、雪も10センチ以上は積もっているだろうか。


 僕は厚手のジャンバーを着て、先輩は膝までの長さのコートに、首にはマフラーをしている。


 カバンはと言うと、校舎側の方に置いてあるのだ。


 そして、先輩が校庭の中心に向かい、何歩か歩き出し、それから、その場にしゃがんだ。



 「一体、何をするつもりですか?」



 疑問に思い、先輩に尋ねた。



 「それは、こうするのよ!」


 

 先輩が起き上がると、イキナリ、雪玉をぶつけて来た。



 「さあ、こっちにいらっしゃい!」



 先輩が、大きく手を振って、僕を挑発した。


 僕は、それに乗って、先輩を追い掛ける為に、走り出した。


 すぐに追いついて、先輩を捕まえられそうになるが。


 すると、先輩が僕の顔目がけて、雪玉を投げる。


 それから、もう一度捕まえそうになるが、そうするとまた、先輩が雪玉を投げて来る。


 何度かそれを繰り返して、僕の顔が雪まみれになって、やっと、先輩を捕まえられる所まで来た。



 「きゃっ!」



 そして、やっと先輩を捕まえるが、バランスを崩して倒れそうになる。


 それで慌てて、先輩が上になるように、僕は体を回転させた。



 「ぽすっ」



 僕は雪の上に、背中から着地した。


 先輩は、僕の上でしがみ付いている。



 「あーちゃん、大丈夫?」


 「雪の上だから、大丈夫ですよ」



 僕は笑いながら、先輩を抱き締めた。


 雪の上に寝っ転がっているけど、ジャンバーのせいか冷たさは余り感じない。


 先輩はと言うと、僕の上に乗っかったままで、僕の胸に顔を埋めていた


 僕の上に乗っている先輩の体重が、心地良く感じられる。


 僕は、そんな先輩の髪の毛を、(くしけず)る様にして撫でる。


 そうすると、先輩の僕を抱き締める、腕の力が強まった。


 ふと、空を見上げれば、空から雪がチラついて来た。


 ”これは家に帰れるかな?” と内心、ちょっと思ったが。


 空からの幻想的な光景と、腕と体に感じる先輩の重さと感触に、このまま身を任せて、なにも考えない様にした。



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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
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