第102話 正月ボケの天然天使
ある日の放課後。
今、僕は、準備室で本を読んでいる所だ。
隣には、のどか先輩が同じく、本を読んでいる。
カウンターの方には、静先輩、麗子先輩が待機していた。
恵先輩と有佐先輩はと言うと、3学期からは自由登校で、時々にしか学校には来なくなった。
それで、のどか先輩はと言うと。
「(ボ〜ッ)」
本を読んでいるのかと思いきや、本を持った状態で、”ボ〜ッ”としている。
「先輩、どうしたんですか?」
「ん、はっ! あー、ビックリしたぁ」
僕が声を掛けると、先輩がビックリして大袈裟に驚いた。
「すいません、でも、先輩、どうしたんですか?」
「あ、いやねえ、まだ、正月ボケが抜けないのよ」
まるで、オバチャンみたいに、手を空中をかき出す様に上下させる、先輩。
しかし、もう冬休みが終わって、もう大分経つけど。
僕でも、もう流石に、正月ボケは抜けましたよ。
「ダメだなあ、全然、読書に集中出来ないの。
油断すると、すぐにボーとしてしまうのよね」
今度は先輩が、”テヘヘ”と頭を掻きながらそう言う。
「そうやって着膨れしているのが、原因の一つだと思うのですが。
着膨れしてるから、体が暖かくなり過ぎて、それで頭がボーとするんですよ」
先輩の服装を指差しながら、僕はそう言った。
今の先輩の服装は、見ためは普通のセーラー服だが、上に厚手のカーディガンを羽織り、下は見るからに分厚そうな黒のタイツを穿いている。
そして、服の下にも着込んでいるせいか、全体的に幾分か太って見える。
「そんなに着込んで、熱くは無いんですか?」
「だってえ〜、寒くて、寒くて、しょうがないもん」
そうなのだ、先輩は極端な寒がりなのだ。
けど、冬休み前には、ここまで着膨れしていなかったはずなのに。
「でも、先輩、冬休み前には、ここまで着てなかったでしょう?」
「冬休み中、コタツに潜り込んでいたら、余計に寒さに弱くなってしまったのよ」
はあ〜、結局、そう言う事か。
「先輩、着込んだままだと、頭がボ〜としたままだから、一枚脱いで、気合を入れないと正月ボケのままですよ」
「え〜、ブーブー」
「はい、はい、文句は言わないの」
「は〜〜い〜」
文句を言いつつも、先輩はカーディガンを脱いだ。
「どうですか、先輩」
「・・・、やっぱり、寒いよ!」
突然、そう言うと、先輩が僕の膝の上に乗って来た。
突然の動きに対応する為に、僕は脚の間を閉めて先輩が落ちない様にする。
「ねえ、あーちゃん、ギュってしてぇ〜」
先輩のその言葉に、先輩を思わず抱き締める。
その時、先輩を抱き締めた感触が、着膨れしてる為、まるでヌイグルミを抱き締めた様な感触がした。
「はあ〜、暖かいなあ〜」
ご満悦の様子で、そう言う先輩。
「先輩、どれ位、着てるんですか。
先輩、着膨れしてるから、まるでヌイグルミみたいですよ」
「え、私、ヌイグルミなの!
だったら、もっと、ギュってしてぇ〜」
どう言う耳をしているのか、先輩が更なる抱擁を要求した。
先輩の要求通り、更に抱き締めると、先輩が。
「あーちゃん、気持ち良いよぉ・・・」
ウットリする様な声で、僕にしなだれて来た。
そして、そのままの状態で、しばらくの間、先輩が僕の膝の上で甘えていた。




