48.暴走スル心
前回のあらすじ
クロカゲと戦ったり槍ちゃんが浮いたりしました
「槍がひとりで……一体どういう事だ?」
「さぁ? 私にも分からないけど……っ」
私は彼女が守ってくれたお陰で、なんとかクロカゲから攻撃を受ける前に態勢を整え直す事が出来ていた。
そして改めてこの状況を整理しようとしたが―――
「透明化―――厄介な能力だが、まとめて黙らせてやろうッ!」
そんな隙を与えまいとクロカゲが私に向かって突っ込んできた。
マズい。今の私の手元にはあの槍ちゃんはいない。つまり、クロカゲから放たれる高速の刃を受け流すための獲物が無いのだ。
このままじゃ、負けてしまう……?
そう思ったのもつかの間。気づけば目の前までクロカゲが迫ってきていた。
「影咲奏! お前がそうなったのには私にも責任がある。だが、今は大人しくしててくれ……ッ!!」
『させませんッ!!』
「クッ……先程の槍かッ! 邪魔を……するなッ!!」
しかし、あの槍ちゃんが邪魔をしてくれたのだろう。
クロカゲは何かの気配に気づいて私から跳んで離れていく。
『何度だって邪魔しますよ……この人は、この人は―――』
「そろそろ時間か―――」
(……時間? それって一体なんの……)
『―――この人は、もう私の大切な人なんですからッ!』
槍ちゃんは、そう叫んだ。
直後、それに共鳴するように、
『ガルルルルルッ!!』
『アオオオオンッ!!』
と、契約した狼の魔物であるウルくんとメルくんが私を守るように立ちはだかったのだ。
それを見た私は、なんだか少し嬉しくなって頬がほころんでしまう。
「ふふ……っ♪」
『どうか……したんですか?』
そう槍ちゃんは尋ねてくる。
そんな彼女に私は首を振ってこう答えた。
「ううん……なんだか嬉しくなっちゃって。こんな私でも、守ってくれる人はいるんだなって。“あの人”だけじゃないんだなって」
『あの人……というのがどの方の事を言っているのかは私には分かりません。でも、少なくとも。私は……もう貴女の事を大切に思うひとりです。だから……だから……!』
槍ちゃんが、必死な様子で想いを伝えようとしていた。
私は、それに応えなくちゃいけないよね。だってもうこの子は、私の―――
『―――負けないでください!』
―――大切な相棒なんだもん♪
「当然、負けないよっ♪」
『『ガウガウッ!』』
「フン……仕切り直し、の雰囲気の中で悪いが……どうやら時間切れみたいだ」
「え? なんでよ。こっからが楽しいって時なのに―――」
そう呟いた直後の事だった。
ピキピキピキ、と何かの割れるような音が辺りに響き始めた。
(そういえばさっき時間がどうとか言ってたっけ……? もしかして姿が見えなくなったタイミングで通信をされた……?)
なんて思うが、何かの割れるような音はだんだんと大きくなっていく。音は鳴り止まず、そろそろうっとおしく感じてきたその時。
私が意図的に塞いでいた通路側の瓦礫が、ドガーン!と爆音を立てていきなり爆ぜて消えたのだ。
「わわっ……何? いきなり……」
「―――はいは〜い。喧嘩はそこまでだよ〜?」
「ゔぇ……メリド」
そしてそこから現れたのは。
メリドと、クロカゲ以外の【十ノ色】メンバーだった。
「詳しいことは後で聞くから。まずは外に出るよ」
「ちぇー……」
「クロカゲも。それでいいね?」
「ああ。もとより俺に戦うつもりは無かったからな。むしろ来てくれて助かった」
そう言いながらさっさと洞窟を出ようとするクロカゲ。
なんだかそれだけを見ると戦いから逃げたみたいな……
「ぷぷ。なんだか逃げたみたいだね、クロカゲ」
「……なにか言ったか。キサメ」
「なーんにも?」
一瞬でキサメに圧をかけて、彼を黙らせたクロカゲ。
と、そんな中メリドが私にこんな事を聞いてきた。
「あ〜……っと。そうだったそうだった。―――影咲ちゃん……これ、なんだか知ってる?」
そう言って差し出してきたのは、とある一つのカゴだった。
鳥を飼うような、檻型のカゴ。その中に入っていたのは、火の玉のような……モノ……だった。
「それ……は。―――知らないかな♪」
「本当に何にも知らないの?」
「うん。私は何にも知らないよ」
「そっか。じゃあ―――これを見てよ」
そう言ったメリドは。
火の玉に手をかざして、何かの魔法を唱え始めた。
◆
それから私は、とある一つの映像を見ていた。
誰かが唱えた魔法から流れ込んでくる、不思議な映像を。
そこには、とある男女が写っていた。
はじめに見えたのは、黒髪の少年と、同じ黒髪の少女の映像。
二人は仲がいい……とは言えないが、悪いようにも見えなかった。そしてお互いに、赤面しあっている、なんとも不思議な二人だった。
次に見えたのは、剣と話す不思議な少年の映像だった。
その桜色に輝く剣は、見ていて何故だが不快に気持ちになる。だけど、何でそんな気持ちになるんだろう。
最後に見えたのは、ゴスロリチックな服を着た変な少女が、先程よりも少し弱っているように見える少年と共にじゃれ合っている映像。
じゃれ合っている―――いや。これは愛し合っていると言ったほうがいいのだろうか。服をはだけた少女と、いやいやと言いながらまんざらでもない様子の少年。
多分、この映像を見た瞬間だと思う。
ワタシの中で、何かが壊れたのは。
◆
「影咲ちゃん。これ、やっぱり貴女の魔法でしょ―――」
「ユルサナイ……」
「え……?」
何が起きたのかは分からないけど、それは一瞬の事だったと思う。
―――力が、抑えられなくなったのだ。
「アハ、アハハ。許サナイ……ユルサナイッ!」
私の中で、さっき見せられた映像が何度も何度も再生される。その度に沸々と煮えたぎるような憎悪が噴き出してきて、それを抑えきれなくなってしまう。
「か、影咲ちゃん……っ?」
何度も、何度も再生されて。
最初に見た映像が、焼き尽くされていくような。そんな。
「マズい……変なタイミングで見せちゃったかな……っ」
「アノ女を―――コロス」
既に【十ノ色】のメンバーたちは続々と外に出ていたようだった。だからこそ、メリドは焦る。
「あの女って……もしかして桜花ちゃんの事……?」
「アノ女は……アノ女。私は行く―――」
もうこの気持ちを抑えることなんて不可能だ。
それどころか、時間が経てば経つほどこの気持ちは増していくのだ。早く、何とかしなければ。
ワタシが、壊れてしまう。
「駄目だ。行かせられない」
「邪魔……しないで」
「邪魔するよ。まずは君の状態をちゃんと把握して対処するのが優先だからね。発明者に会うまでは、大人しくしててくれないかな」
そんな事、もう無理だ。
抑えたくても、抑えられないのだから。
「アハハ……邪魔するなら、無理矢理退かすだけだね♪」
「あ〜もう。やっぱりそうなるよねぇ……。こりゃあ私も本気を出さないとやられちゃうか―――な―――」
メリドがそう言いながら戦闘態勢に入る瞬間。
突然、彼女は膝から崩れ落ちた。
「あ……れ? 何……これ」
見れば、彼女のお腹からは血が溢れ出ていた。
だけど私は何もやっていない。じゃあ、これは一体―――
「何……この槍―――」
槍。
そう言われて私は手に持っていたはずの槍に意識を向けた。
すると、何やら彼女も様子がおかしい事にようやく気がついた。
『あれは。アレは……アレハアレハアレハ…………ッ! ユルサナイッ……ユルサナイユルサナイユルサナイッ!!』
「どうかしたの?」
『あれ……は、あれは……私の大切な人を殺した―――憎き剣の―――』
「そっか。それじゃあさ―――」
『ユルサナイ……ユルサナイッ!!!』
「全部壊しちゃおっか♪」
次回→6(水)
ゆうべは おたのしみでしたね(特に意味は無いボケ)
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