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45.魔の大陸へ、いざ!

―――今、集いし。




 ペイン王国。

 私たち“召喚者”がこの世界に召喚された場所にして、全てが変わってしまった―――全てが壊れてしまった場所。


 その原因となったのは、目の前にいる……この男。



「ククク……!」



 いやらしい笑いを、その汚い口から溢しているゴミ人間。

 ペイン国王―――その薄汚れた面で、私たちを悪利用しようとしていた、本当の人間のゴミだ。

 そんな国王ゴミと私たち“召喚者”は、訓練用の寮舎にて対峙していた。



「アンタ……今、彼らに何をしたの?」


「おお、一国の王に向かって“アンタ”とは。お前たちも随分と偉くなったものじゃないか?」


「いいから教えて。じゃなきゃ……殺すよ?」



 私はもう包み隠さずに殺気をぶつける事にした。

 コイツはもう、一国の王である以前に私たち召喚者―――ううん。私の『敵』だから。



「―――グァァ……ァァァ!!」


「ククク。まあいいだろう、お前たちには多少は恩があるからな。それを返すと思って、今回だけ素直に答えてやろう。―――我々はな、お前たちの“魔人化”を研究していたのだよ」


「魔人……化?」



 私たちの周囲で、化け物のように変わり果ててしまった“シャドウ・キングダム”の子たちは苦しそうにうめき声を上げている。

 そんな中でも、薄ら笑いを浮かべながらペイン国王は続けた。どうやら、今彼らの制御をしているのはアイツのようだ。



「魔人化―――文字通り、人を、魔人へと変えてしまう現象の事さ。フハハ……私はその研究をして、この国の民を守ることに繋げようとしていた。寝る間も惜しんで、民の為だと研究に勤しんでいたのだ」


「貴方が民の為に研究を? ふん……信じられないわね」



 麗が吐き捨てる様にそう呟いた。



「信じてもらおう等とは微塵も思わん。だがな、私も国を守る為に必死だったのだよ」


「それにしては、随分と悪い王様なのね。そんなに国民を思う気持ちがあるなら、もっとマトモな王様になりそうなものだけれど」


「フン。裏切り者のお前たちにそんな事を言われるとはな……まあいい。お前たちも、あの使えない召喚者のように“魔人化”させてしまえばいいだけの話なのだからな」



 そう言うペイン国王の手元には、小さな裁縫針のような物が握られていた。

 もしかすると、あれが……?



「魔人化させる、って……なんでなんだろうね? だって、私たち程じゃないにしろ、あの人たちも平均以上には能力の、適正数値?が高かったんでしょ?」


「確かに、冥の言う通りだ。何故貴方は、彼らの事を“使えない”と判断したんだ……?」


「フン……シキガミ、だったか。最後にお前たち兄妹の問いに答えてやろう。―――そこにいる人の成れの果て共はな、己の持つ力を過信し、傲慢の塊と成り果て、己を鍛えることを忘れてしまった……言わばただの穀潰しとなってしまったからだ」



 確かに、ほとんど今日しか彼らとまともに対面したことはないけど、それでも伝わってきてしまうほど……あの子たちは自分たちの方が上であるような態度や物言いをしていたように思える。

 でも、だからと言って“魔人化”なんて人が到底やってはいけないような事をするとは、この国王もやはり人の成れの果てと変わりないじゃない。


 そう、思った時だった。



 

「それは……それはアンタも同じじゃないのかァッ!!」


「あっ……待って暁月くんッ!!!」




 私たちに味方してくれた、反王国派のリーダー暁月君がペイン国王へと向かって一直線に殴りかかって行ったのだ。

 しかしこの状況で……ペイン国王のあの様子で、突っ込んで行くのは絶対に良くない。だから私は止めようとした。けど……



「ククク……お前も眠るがいい!」


「響也っ!!」



 国王が吐いたそのセリフとほぼ同時に、暁月くんはその場に倒れてしまった。



「うそ……響也……っ!?」



 彼のもとに、水瀬璃奈ちゃんが駆け寄って行こうとしたのだが、流石にそれは私が止めた。



「今は……近づいちゃ駄目……!」


「でも……でも! 響也が……響也がっ!!」


「フハハ! 残念だが私はここからでもこの針を当てられるぞッ! ―――こんな風になッ!!」



 そう言いながら、ペイン国王は何かを投げるような動作を行った。その直後の事だ。



「ぐ……ぁ……!」


「ちょっと、島田!?」


「チィ……ッ……んだよ、これ……ッ」



 ヤンキーの島田くんが、その場にぱたりと倒れてしまったのだ。さらに続けて、



「ぅあ…………!」


「麻薙君!」



 悠の隣で麻薙くんまでもが倒れてしまった。

 流れるようにみんなやられていく……まさかあの国王がここまでやるとは思わなかった。だけど、これ以上アイツの好き勝手にやらせる訳にはいかない……



「蒼華!」


「うん、分かってる! アイツを止めるよ!」


「フハハハ! もう誰も私を止めることなど不可―――」





「―――騒がしいが、何かあったのか〜!?」



 と、そこへさらに乱入者が現れる。

 私と麗が、ペイン国王を止めようとした矢先に、だ。


 しかしまだ姿は見えず、その人物は遠くから私達に向けて声をかけているようだった。



「チッ……稽古をつけに来た兵士か……。どうやらここまでのようだな」


「ッ……逃げるつもり?」


「当然だ。こんな所で捕まってたまるか……クハハ……そうだ、私はこの国を治める王なのだから……!」



 カシャン、カシャンという鎧の動く様な音がどんどん近づいてくる。音は、一人分。きっと国王が言うように、暁月くんたちの稽古をつけに来た兵士なのだろう。


 それに気づいた国王は、この場から逃げ出そうとしていた。



「逃がす訳……ないでしょ?」


「チッ……こうなれば、仕方がない。―――お前たち、そこの煩い反逆者共を足止めしろッ!」



「グルルル……ぐ……ぅ……ガァァァァァァ!!」



 しかし国王は、ここで制御していた“シャドウ・キングダム”の子たちを私たちへと差し向けてきたのだ。



「クク……残念だがお前たちにバレてしまった以上、あまりこの国に長居することもできまい。私はこのまま逃げさせてもらうとする」


「待て……!! ッ……!」



 そう言い残して、この場から逃げ去っていくペイン国王。

 その後を追おうとしても、それを化け物と化した由良たちが邪魔してきて……



「あ〜……もうッ!」



 そんな状況に少しだけイライラして、襲い来る化け物をちょっと本気で殴り飛ばしてしまった。



「どうしよ……このままじゃあの国王に……また仕返しが出来ないまま逃げられちゃう」


「そんなの嫌です! おねーさん、なんとかしてください!」


「何とかしてって言われても……こいつらが邪魔でどうしようもできないんだよ!」


「うぅ〜……どうにかならないんですか!?」



「そ、それなら私に任せてくださいっ!」



 私と冥が言い争う中に、鳴瀬美咲ちゃんが割って入ってきた。

 そしてその場で何かの詠唱をすると、彼女の足元から影で出来た小さな鳥のような何かが2匹ほど現れて、それが国王の逃げていった方向へと飛び去って行ったのだ。



「あ、あれは?」


「あ、はい! あれは追跡用の魔法の一種で、文字通り対象の追跡をしてくれるんです! 国王様……じゃなくて国王を対象に指定しましたので、あの子達が倒されない限りは追いかけてくれます!」


「ナイスです! それなら後は……!」


「うん、そうだね。ここにいるこの子達を倒して……と、言いたいところだけど―――」



 私は少し、悩んでいた。

 同じ日本人で、召喚者としてこの世界に無理矢理連れて来られたこの子達を、この場で倒す―――殺してしまってもいいのだろうかと。



「―――何か、この子達を助ける方法はないのかな……?」




「―――お〜い! 先程国王様とすれ違ったのだが、一体何が…………………って、何だこれは!?」



 ……そこへ、先程の声の兵士だと思われる人物が現れた。

 しかしその兵士はすぐに状況を理解したのか、剣を抜いて私たちのもとへと駆けつけてきたのだ。



「どうしてこうなったのかは分からないが、今は彼らを拘束しよう。この化け物たち……見覚えがある気がするが、自分の推測が間違っていなければ、上坂由良を始めとした、あの反抗的だった彼らなのだろう?」


「ええ、そうみたいね」



 麗が兵士の言葉に頷いた。



「そう言えば……君たちは―――」


「―――来るよ!」


「あ、ああ!」



 それから私達は、迫りくる化け物になった由良たちを拘束するのに全力を尽くし、全てが終わったのはあれから2時間が経過した頃だった。







「ぅ……ぁ……」


「―――なるほど、そのような事が……」



 私達はその後、やってきた兵士―――名前をデノールというらしいが、彼に事の経緯を全て話した。

 由良たち“シャドウ・キングダム”の子達は囚人に使うような拘束具にてガッチガチに拘束しておき、あのクソ国王にやられてしまった暁月君、島田君、麻薙君、藤島君、蔵馬君は寮舎内にある保健室のような部屋に全員まとめて寝かせておいた。


 この場には、私と冥、麗、悠、それに加えて璃奈ちゃん、美咲ちゃん、鈴ちゃん、周防君、スーラさんの5人がいる。



「しかし、国王様がそのような事を……。それに、“魔人化”……とは」


「どうにかして助ける方法があればいいんだけど。それに、暁月くんたちに何をしたのかを、あの国王に問いたださなきゃいけないね」


「魔人化した人間を救う方法が、無いわけではない。しかし、その方法が『伝説』と呼ばれている……いわゆる言い伝えの世界の話であるが故、あまり助かる保証は出来ないのだが……」


「ふむ……ある事には、あるのですね。ならば、迷う必要は無いでしょう。彼らがどうにかなってしまう前に、行動したほうがいいのでは?」


「確かに、君の言う通りかも……しれない。―――分かった。私の知っている情報を全て伝えよう」



 悠の後押しで、兵士デノールさんはその『伝説』について語り始めた。



「全て……と言っても、あまり多くはないのだが。魔人族の住む大陸リューディッヒの端に、対立する二つの村があってな。そこのちょうど中間にある山……だったか森だったか。とにかくそこに小さな洞窟があるのだ」


「洞窟?」


「ああ。なんでも、そこには“全てを蝕み殺す”呪いの槍だとか、“呪いによって相手を永遠に拘束する”狂気の槍だとかいう噂のある、呪具、と呼ばれる武器があるそうなのだ」


「そんな恐ろしい物が……?」


「ああ。これを用い、彼らを侵蝕する魔のウイルスをさらに上から蝕み殺してしまえば……と思ったのだが」



 確かに、それだけ聞くとめっちゃ怖い武器だけど……ちゃんと意味を捉えれば、“蝕む対象”は決められるっぽいし、うまく行けば由良たちだけじゃなくて暁月くんたちまで助けられるかもしれない……? かな。



「うん。なら行こうよ! その、魔人族の大陸に!」


「ちょっとおねーさん、馬鹿なんですか? この人たちを放っておいて、万が一何かあったら……!」


「そ、それなら私が残るわ! ほら、私ついてってもあんまり活躍できないし……」



 そう言うのは、茜坂鈴ちゃんだった。



「それなら、私も残りましょう。国王様の事も知ってしまったが故、そちらも私がなんとかしておかなければなりませんからね」



 それにデノールさんもこの国に残ることにしたようだった。

 私たちは、倒れた暁月くんたちの事を鈴ちゃんに任せることに決め、少しの時間、寮舎の後片付けや休憩、その他諸々の準備に使った後―――




 ―――私たちは、そのまま出発することになった。





「曖昧な情報源で申し訳ありませんが……どうかお気をつけて。“奇跡”の皆様―――」



「はい。それじゃあ……行こうか。魔人族の大陸―――リューディッヒに!」

命からがらです……!

明日にちょっとした覚悟のような決意のような目標のような物を活動報告にてしたいと思いますので、ご一読お願いします・人・


結構大事な話なので皆様ぜひ読んでくださいね。


次回更新予定日→一週間後

いいところまで行きましたが、ここで章を区切ろうと思うので、一旦キャラ表なるものを作ろうかな、と!


では!

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