44.影に咲く花たちの共鳴
―――影の中で彼女たちは共鳴し合う。
《ゼアン村》にて、緋神紅蓮やシャオンらが手を結びあっていた頃。
ほぼ同時刻に、メリド率いる《十ノ色》の面々と影咲奏は《ゼイン村》へと向かって足を進めていた。
「みんな〜? 全員居るかしら〜? 誰か勝手な行動してるヤツはいないかな〜??」
「ふふっ。そんな人いるの〜?」
私は、先頭を歩くメリドの度々される点呼に乗っかるように煽りを入れてみた。
―――私の名前は影咲奏。でも、分かるのはそれだけ。自分の事なのに、それ以外の事はぜ〜んぜん分からないの。
名前と……後は―――
(愛しのあの人のこと以外は、ね♡)
……でも、“あの人”の名前も思い出せないなんて……自分が憎くてしょうがない。
あ、そうだ。あとは私が闇属性の魔法が使えるっていうことも分かるね。最近は魔力がたっくさん溢れ出てるみたいだから、それを抑える特訓をさせられてるわ。
でも、そのお陰で魔力のコントロールはすっごく上手くなったし、使える魔法もいっぱい増えたし。
今ならこの《十ノ色》っていう、私を生き返らせてくれた人たちにも勝てるかもしれないわ!
「え〜っと。確かメンバーは……」
私は《十ノ色》のメンバーを、一人ひとり名前を呟きながら再確認していく。
【黄】のキサメに……【青】のアオギリ。
【赤】のアカギに、【桃】のモモカ。それから【白】のハクアに、【金】のキンカと【銀】のギンガ。
あとは【紫】のシエンと【緑】のリョクジと、それから―――【黒】のクロカゲだね。
「ひーふーみー…………うん、全員居るんじゃない?」
「あら、そう? なら良かった。シエンとかは勝手にいなくなっちゃいそうで怖いのよね〜」
「あらちょっと。私この中でもいっちばんのお姉さんなんですけど〜?」
「ふふっ。おばさんのクセによく言うよ〜!」
「ア"?」
「きゃはは! 怖い〜!」
私の煽りで、シエンおばさんは怒っちゃったみたい。
ヤンキーみたいな声出してるし。
でも確かに、この中じゃ一番のお姉さんだし、間違っては無かったのかも。
「あれ、それで今何処に向かってるんだっけ……?」
「え〜? 奏ちゃんもう忘れちゃったの〜?? さっき説明したばっかりなのに……」
「あっ、そうだったね。確か―――」
そうだった。さっき私が聞いたばっかりだったんだ。
つい“他の事”に集中しちゃってたから、忘れちゃってたや。
えっと確か……《ゼイン村》ってところに向かってるんだよね。
それで、そこにいる知り合いの専門家だか“発明者”だかに……私の……カラダを―――
(カラダを、見せル……?)
「ネェ……本当にそんな事するつもりなノ……?」
「……お、おい! 言葉に魔力を込めるな―――」
「“黙ッテ”」
「ッグ……!」
私がそう命令すると、止めようとしたクロカゲは地面に膝をついてしまった。いや、膝をついて“くれた”んだ。
「はぁ……もう奏ちゃん。怖いよ?」
「でも、私の身体、見られちゃうんだよね? “あの人”だけの身体なんだけど。ねぇ、本当にそんな事シちゃうの? 私、どうなっちゃうかわからないよ??」
「安心してってば。―――彼女は、普通の“発明者”じゃないからさ」
「……ふーん。本当に大丈夫なのね? 私の身体、穢されないのね?」
「うん。それはマ・ジ・で保証してあげる。なんなら命かけてもいいわ。ここにいる全員の」
『ハァ!?!?』
「ふしゅ!?」
「……そ。分かったわ」
メリドからその言葉を聞いた私は、フッと肩の力を抜いた。
それにしてもさっきの皆の反応がシンクロしたのは面白かったね。
「ふ〜、もうびっくりさせないでよ奏ちゃん。皆死ぬかと思ったよ?」
「ふふっ。ごめんなさい。でも貴方たちが私を不安がらせるような状態にしていたのがイケないのよ?」
「そうね……それは反省しておくわ。次からは気をつけるから!」
「うん、そうしてもらえると助かるわ」
普通にいい人たちだから、ここで“消す”なんてこと、したくないしね。
「ね〜ね〜。それよりもさ、一体いつまで歩かなくちゃいけないの?」
「ん〜、えっとね。多分そろそろ着くはずなんだけど―――あっ。あの洞窟が見えたってことは、多分もう少しだよ。ほら、看板もあるし」
洞窟に、看板ね。
ずっと木に囲まれた道を歩いていたのに、突然洞窟が出てくるなんて、ちょっと不思議な感じ。
確かに看板もあるけど、何にも書いてないし。
(ふぁ〜あ。なんか退屈―――)
そう、私が暇そうにあくびをした時だった。
―――『誰か、私を助けて……っ!』
「ん〜?」
何処からか、声が聞こえてきた。
か細い、女の子の声だ。
でも、一体何処から……? それに、この頭に直接響く不思議な感じは一体なんなの?
「? 奏ちゃん、どうかしたの?」
「んー……どうかしてるかも」
「え?」
―――『暗い……よ。ここは……何処なの……?』
自分のいる場所が……分かってない?
んーんー……何だかすごい気になるかも。
このまま放っておくなんてこと、出来ないよね。
だったら―――
―――『いや……私……消えちゃう……の?』
声は……もしかして。
「この洞窟の中から、かな?」
あーもう。今にも消え入りそうな声だし……ほっとけないって。
ほら、私ってば優しいからさ。
「さっきから何をぶつぶつ言ってるの〜? ―――って、ちょ、ちょっと奏ちゃん!?」
私は、すぐさま駆け出していた。
ただの気まぐれのはずだけど……何だかこの子の声は私を惹き付ける何かがあったから。
「みんなごめんなさ〜い。ちょっと遊んでくるね〜!」
「遊んでって、ええ〜っ!?」
私は驚くメリドを尻目に、洞窟の中へと入っていった。
(ふふん。待っててね〜?)
◆
「ありゃ。だいぶひどいね……これ」
私が洞窟の中に入ったすぐ後の事だった。
私を待ち受けていたのは、たくさんのモンスターたちと、それに殺られたのであろう人間や魔族の死体たちだった。
「グルルル……」
「ガウウ……」
はぁ……匂いもくっさいし、地面も血でベチャベチャだし、ホント最悪。でも多分、さっきの子の方が嫌な思いしてるんだろうし、ここはおねーさんの私が我慢しなきゃね。
―――『いや……いや……っ!』
―――『ゼェ……ゼェ……やっと見つけたぜ……伝説の槍さんよぉ……ッ! へへへッ……悪魔と契約して強くなるのは俺って事だァ……!!』
「んー……?」
何か変なおじさんの声も聞こえてきたけど……何これ。
「ガルルルッ!!!」
「ガオオオッ!!!」
「あーもう、うるさいな〜! “近寄ラナイデ”ってば!! あと“煩イ”よ!?」
「キャウン!?」
「グウウウ……」
私が怒鳴ると、狼みたいな魔物はその場に倒れてしまった。
ちょうどいいや、パパっと殺しちゃ―――
「……そうだ。いいこと思いつーいた☆」
―――おうかと思ったけど、いいこと思いついたからやめよ。
よし、せっかくだからこの狼ちゃんを……
「私と“契約”、して? ペットになってよ!」
眷属にしちゃおう!
そう思って私が手をかざすと、2体の狼にそれぞれ魔法陣が現れて、すぐにそれは消えた。
もう終わったのかな?
「ガウッ!」
「ガウガウ!」
「わあ、かわいい! それじゃあちょっと吠えてみてよ!」
「アオ〜〜ン」
「ガルルルルルルッ!」
わあ、ちゃんと成功してる。
こんな一瞬で成功するなんて。それじゃあこの子達に名前を付けてあげなくちゃね。
「えっと……右の素直そうな子は、“ウル”くんで、左のちょっと怖そうな方は“メル”くんで!」
特に意味はないから、ただの思いつきだけど……うん、結構呼びやすいしかわいい名前になったね!
なんだ……闇属性の魔法って結構便利で簡単に使えるんだね……!
(って……こんな事してる場合じゃなかったや!)
さっき変なおじさんの声と、怯えるあの謎の女の子の声が聞こえてきたし……早く行かないと!
「ふふっ! 今すぐ行くよ〜!!」
「ガウッ!!」
「ガウガウッ!」
とりあえず魔物は全部無視しよ!
そう思って私はとにかくひたすら真っ直ぐ、洞窟の奥の方まで駆け抜けていった。
あんなに魔物がいたのに、なぜか私には敵意を向けてこなかったから、きっと私は存在感がない―――訳ないけどね。
「っ……!」
と、あれからほんの少し走っただけだけど、どうやら目的地に到着したようだった。
開けた空間……真ん中には一本の槍―――多分、ここだよね。
―――『いや……いや……!』
「へへ……それじゃあ―――」
―――『イヤァァァァッ!!!』
おっと……!
「はいは〜い! そこまでだよ〜☆」
「……誰だッ!? って―――グァッ!?」
ちょっと危なそうだったから、私はおじさん……?に向けて痺れさせる魔法の瓶を投げつけておいた。
ついでに―――
「そこから“動カナイデ”ね」
「ッ……ぐ……ぁ!」
うん、もう動けなさそうだね。
なんか私の言葉には力があるみたいだし……試してみたけどやっぱり成功するみたい。でも痺れて動けないだけかもしれないからまだ実験は必要かもね。
って……それよりも!
「んー、大丈夫だった〜?」
―――『あ……な……た……は?』
「私? 私はね〜……ん〜……なんだろうね? ふふっ!」
―――『私の声が……聞こえるの……?』
「うん、聞こえるよ〜」
―――『っ……!! そ、それじゃ……あ……あ、あ、貴女が……!』
「ん〜?」
―――『私を抜いて……ください……! 私をここから抜いて……助けて……くださいっ! ―――そして……私と契約してくださいっ!』
「契約〜?」
―――『はい……! 私から差し出せるのは……私の全てです……! そして私が求めるのは―――私の記憶です!』
命からがらです!
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次回更新予定は今週金曜〜日曜のどこかに更新します。のでちょくちょくチェックしてやってください。
頑張ります。
ではまた!




