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43.異端種族の中の異端者たち

―――少年が望んだ世界は。




 魔人族が住まう大陸、《リューディッヒ》にやってきた俺と桜花、アン、サイケリの3人。

 俺を核として利用していた兵器“グレン”の余力を使い、獣人族の住まう大陸 《グラ》と《リューディッヒ》を結ぶ大樹海を密かに抜け、出発から早3時間程で目的地である《ゼアン》という村へと辿り着く事が出来た。


 ここで俺は、サイケリによって不完全な肉体を完全な物へと改造してもらうのだ。



「と、いうわけで頼んだぞ。サイケリ」


「どういう訳かは知らないですけど、まあ約束ですからね。分かってますよ。さ、それでは早いところ私のラボまで行ってしまいましょう」



 見晴らしの良い丘の上から、俺たちは到着した《ゼアン村》を見下ろしていた。

 ここに来る道中、サイケリから『ここは“曰く付き”の村だから気をつけるように』と忠告されていたのだが、既に桜花とアンは村の中で遊んでいるようだった。



「ラボまで案内しますよ」


「ああ。ありがとう」


「普通にやめてくれないですか。そう素直だとキモいので。殺意が湧きます」


「お前は変わらないな」


「フン……」



 悪態をつきながらサイケリは丘を下って、村の中へと入っていく。俺もその後に続いて村の中へ。


 曰く付きの村、なんて言うからもっと物々しい雰囲気の村を想像していたが、近くにきてみても特にこれといった違和感は感じない。



(そういえば住んでいる人……?を見かけないけど……いるのかな)



「なぁサイケリ。ここって誰かちゃんと住んで―――」




「―――アナタ、なんか面白いニンゲンねェ〜?」

「―――カカカ! コヤツはニンゲンではナイのではないカ?」

「―――強ェヤツかカワイイヤツなら大歓迎だゼ!」




「―――る……の……か…………?」



 それはいきなりの出来事だった。

 俺がサイケリに問いかけようとした瞬間、俺の目の前にいきなり3体の魔物……?が現れたのだ。



 喋る魔物がいきなり現れた事。

 それだけで驚くには十分過ぎるくらいだが、俺を驚かせ……そして同時に“恐怖”させたのはその魔物たちの特徴にあった。



「アラ、ビックリして動かなくなっちゃった?」

「カカカ! 死んだのデハないカ?」

「おいおい、コレくらいでビビってんのかよ! この村には俺たちみてぇなヤツ“しか”いねェんだゾ?」



「クク……ヒカミ・グレン。驚きましたか? ―――この村は、いわゆる“キメラ族”の住む村なのですよ」


「キメラ……族?」


「ええ、キメラと言うのはですね―――おっと、ちょうど良い所に。後の説明は彼から聞いてください。私は貴方の改造しゅじゅつに必要な素材を集めてきますので」



 そう言い残すと、サイケリは村の奥へと消えていってしまった。そして、代わりに現れたのは一人の獣人……?だった。



「―――彼奴も中々変わらんな。発明者というのはああいう奴ばかりなのだろうか」


「は、はぁ……? あ、あの……貴方……は?」


「おお、悪いな。俺の名前は“シャオン”。見ての通り、魔獣サーバント化した狼族の元獣人さ」



 シャオン。そう名乗った男の外見は、本人の言うとおり銀と薄い紫の間くらいの色合いの毛並みをした、一見すると凶悪そうな見た目の狼男だった。

 しかし、一つ気になることがある。いや……一つどころじゃないけど……まず一つだ。聞いてみよう。



「シャオン……さん? 今、“魔獣サーバント”化した……って言ってましたけど、それってどういう……?」


「そうか、彼奴の先程の言葉はその説明をしろという意味だったか。なら……分かった。お前さん、ちょっと待っててくれ」


「あ、は、はい……」



 そう言うと、シャオンさんはさっき俺を驚かせてきた3体の魔物たちに指示を出した。



「お前たち。さっきこの村にきた嬢ちゃんたちを連れてきてくれ」


「いいケド……場所は?」


「村の広場でいい。彼処の噴水ならゆっくり話が出来るだろうしな」


「分かったワ〜。他に呼んできてほしい人とかはいるカシラ?」


「とりあえずお前たちが居てくれればいいさ」


「アラ、シャオン様かっこいいワ〜。オッケーよ、それじゃあまた後で噴水でネ〜!」


「ああ。任せたぞ」



 女っぽい口調の魔物と手短に会話を済ませたシャオンさんは、再び俺の方へと向き直る。


 それにしても、さっき村にきた嬢ちゃん……って十中八九桜花とアンだよな。あの二人もビックリしてないかな……心配だ。

 だって、それくらいこの人たちの特徴は驚き、そして恐ろしいモノだったのだから。



 ―――キメラ族。

 そう。彼らの特徴は、魔族と言いながらも、まるで魔物のような見た目をしていて……しかも、何体かの魔物を無理矢理合体させたような、そんな奇妙で不気味な見た目をしていたのだ。



「それでは我々も行こうか。詳しい話は、向こうで皆が合流したら話そうと思う故」







「ぐ、ぐれぇぇぇぇぇぇん!!!」

「グレンっ!!!!!」


「二人とも無事だったかぁぁ!!」



 俺たちは、村の広場の噴水で感動の再会を果たしていた。

 のだが……桜花の体もアンの体も、小刻みに震えているようだった。きっと俺と同じように怖い思いをしたのだろう。

 ここは俺がカッコよく慰めてあげないと―――



「すっごい面白いのだ!!!」



 きらん☆



「ミンナ優シイ!! スゴイ楽シイ!!」



 きゅぴーん☆



「え……?」


「ウフフ! この子達の反応がマアいいカラ、こっちも楽しくなっちゃって、つい遊びすぎちゃったワ〜!」

「カカカ! このワシをここまで楽しませルとは中々どうして逸材ジャ!」

「ガハハ! コイツらはカワイイから良いゾ〜!!」



 ……? 状況が理解できない。整理できない。

 なぜこの二人はこんなにも楽しそうなんだ?


 いや……ビックリしなかったのか? というか怖くなかったのかな……?



「ハハ、良かった良かった。でも楽しんでくれてるところ悪いけど、今から少しだけお話をしようと思う。だからちょっと静かにしててくれると助かるよ」


「分かったのだ〜!」

「なノ〜!」



 はしゃぐ二人を、一瞬で静かにさせるシャオンさん。

 彼はそのまま、桜花たちの相手をしてくれていた3体……いや、3人の魔族について紹介してくれた。



「ではまず、彼等を紹介しようと思う」



 そう言って、一番手前にいた魔族―――女……というよりかはオネエっぽい口調の魔族。見た目はタコのような見た目をしていて、それに不釣り合いな黒くて禍々しい羽が背中に生えていた―――を指差すと、



「彼女は“カレナ”。見ての通り魔蛸オクトと烏天狗のキメラだ。そして次は―――」



 次に指差したのは、カレナの隣にいた「カカカ」と笑う老人のような魔族。見た目は動く骸骨……に蛇のような腕をしている。



「彼は“ケラーナ”。こちらも見ての通り、骸骨人スケルトンと大蛇のキメラだ。そして最後が―――」



 そう言って視線を移したのは、ケラーナの隣にいた「ガハハ」と笑う豪快な大男だ。彼の見た目は、明らかに鬼だった。鬼と……それから何本かの尻尾も生えていた。体は真っ赤なのに、尻尾は白い……何だか不思議な魔族だった。



「彼は“ゼヘナス”。まあ見ての通りだ。鬼人オーガと九尾のキメラだよ」



 カレナに、ケラーナ、そしてゼヘナス……。

 全員、キメラなのか―――



「皆さんがキメラということは……シャオンさんも?」


「俺か? 俺は違う。俺は発明者によって生み出された、本来なら存在しないはずの存在さ。どっちかっていうと、“クリーチャー”とかいう呼び方をした方が正しいかもな」


「クリーチャー……ですか」



 これまた物騒な言葉が出てきたな。

 しかし、ここまで来ると大体の事情は見えてきたな。


 この村が曰く付きと呼ばれている理由も、何となく察せる。



「そろそろ気がついたと思うが、この村は俺たちみたいな……そうさな、いわば“異端者”たちが集まって出来た村なのさ。―――ちなみにキメラってのは複数の魔物が合体したような化け物で、俺みたいな奴らは大体、魔族を研究してる“発明者”によって生み出された化け物の事だな」



 異端者の、集まり。

 それが、曰く付きと呼ばれる理由だろう。


 だけど……こうして実際に話をしてみると、魔族も思ったより怖くない……のかも。もしかしたらこの人たちが優しいだけかもしれないけど。

 それでも、こんな優しい人たちが“異端者”と呼ばれたりするのには正直納得はいかないな。


 それに、俺も―――



「それで? お前たちは……一体何しにこの村へ? それにお前さんと……あとそっちの嬢ちゃんの気配が、どうやら普通じゃない気がするんだが……?」


「カカカ! ワシらに話せる範囲でいいカラ、話してミルと良い!」


「……そうですね。多分、貴方たちと巡り会えたのもきっと何かの運命なので、全部お話しようと思います」



 それから俺は、シャオンさん達に俺たちがこの村にやってきた理由と……現在の俺の状況について、話すことにした。



 ……大体30分くらい話していただろうか。

 初めて桜花と出会った時と同じように、俺が王国から追放された事を皮切りに、命をサイケリによって救ってもらう、最新版の俺ストーリーを語っていた。


 すると―――



「おいおい……ッ! ……なん……だよ……っ! 泣けるじゃねぇか!」


「グスングスン……辛かったワネ……。でもモウ大丈夫よ……ワタシたちが、ついてるからネ……」


「カカ……血を知らぬ純粋な少年に……ココまでスルとハ。神もなんト非道な奴よ……」


「オメェ……心は十分強ェじゃねーかよ……! かっけぇよ……!」


「ぶふぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!! やっぱりひどいのだ……こんな優しいぐれんにする仕打ちじゃないのだぁぁ!!!」


「……ヨシヨシ」



 なんか、すごいことになってしまった。

 魔族の皆さんは泣いてくれてるし、なんかついでに桜花まで泣いてるし、さらにはアンによしよしされちゃってるし。


 逆に俺が泣けない……んだけど。

 それでも……やっぱり、嬉しいな。


 姉ちゃんたち以外に……分かってくれる人が増えるっていうのは。



「……ありがとう、皆さん」


「……そうか。そうだったのか……。ならば我々は、全力でお前さんの支援をしよう。彼奴―――サイケリには以前良くしてもらった恩があるからな。それも纏めて返すくらいには、良くさせてもらおう」


「そうネ……このことはワタシたちで村の皆にハ伝えておくワ。短い間かもしれナイケド、少しでも心を休めてイッテネ?」


「カカ! そうじゃそうじゃ。何せワシらは似たようナモノじゃからな!」


「そうだな! それに、強くなりてェってんなら、俺が稽古を付けてやってもいいシナ!!」



 そう言って、笑顔で俺たちを迎えてくれたゼアン村。

 本当に、温かい。噂とは違う、とても優しい村だ。


 世界がこんな、平穏であれば―――そう願うばかりだけど……




 ……まさかこの後、あんな事が起きるとは―――今の俺は、想像もしていなかった。




「―――こんな所にいましたか。……改造しゅじゅつの準備が整いましたよ」








 緋神紅蓮が、サイケリについて隠しラボまで向かうことになった、その道中。




 ―――彼を、覗く不気味な影が一つ。








『彼を守るのハ―――ワタシだけで、十分ナノニ……憎い……憎い……憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いッ!!!!!!』

命からがら!!

面白いと思っていただけたらブックマークや高評価を何卒お願いします!!


次回は月曜日に更新したいと思います!

ちなみに今日の話は比較的力作だと思うんだけど……!!!!


では!!!また!!!

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