39.やっぱりテメーは駄目だ、クソ国王!
―――少女の悪知恵。
「おはよう、みんな」
「おあよ〜ございますおねーさん」
「おはようございます」
「ええ、おはよう」
悠・冥・麗は、若干寝ぼけた状態でリビングへと集合していた。ポカポカな三人を迎えたのは、三人を起こした張本人である蒼華だった。
「さ、今日から頑張るんだから! まずは気合い入れるために、朝ごはん作ってみたよ!」
「ふぇ……まだ朝5時ですよぉ……? おねーさん頭おかしいんですかぁ……?」
「失礼ね! 朝早起きしてもらったのにはちゃんと意味があるんだから!」
「意味……? あら、それって何かしら? 詳しく聞かせてもらってもいいかしら?」
朝も朝、まだ日が完全に出きっていない早朝に四人は起きていた。冥が蒼華の事を軽くディスりながらも、四人はテーブル席へと腰掛けた。
「まあまずはさ、せっかく作ったし朝ごはん食べてからにしない? 美味しいかどうかは分からないけど……」
「それもそうね。せっかく貴方が早起きして作ってくれたのだから、まずはいただくとしましょうか」
「ですねぇ〜」
「はい……」
寝起きだからか、はたまた叩き起こされたからか。
蒼華以外の三人のテンションはかなり低く感じられた。
が、蒼華の作る朝食がどうやら美味しかったらしく、一口食べた三人はその後止まることなくガツガツど蒼華の作った朝食をペロリと平らげてしまった。
……超スピードで朝ごはんを取り終えた三人を見て、蒼華は少し嬉しそうに笑みを零した。
「なかなか美味しい料理を作れるじゃないですか、蒼華!」
「うん、びっくりしましたよ私も! おねーさんめちゃくちゃ料理上手じゃないですか! 初めて知りましたよ!」
「確かに、蒼華さんにここまでの料理の才があるとは……流石紅蓮のお姉さん、といったところですかね」
「みんな……ありがとね。紅蓮ほど上手く作れるか不安だったんだけど、みんながそう言ってくれて嬉しいよ。これからは私がごはん作ってあげるから、任せておいてね!」
そう言って見せる蒼華だったが、その表情はどこか暗い物が見えていた。
十中八九、紅蓮の名前が出たからだろう。
一瞬だけ重い空気に包まれた後、麗が口を開いた。
「……それで? 貴女、さっき“早起きしてもらったのには意味がある”って言っていたけれど、それについてそろそろ聞いても大丈夫かしら……?」
「あ、おっけー。ちょっと昨日の夜考えてた事があるから、そのことをみんなに話しておきたくて」
「こんな朝早くからですかぁ……?」
「うん、ごめんね? 冥。でも朝早くから動かないと、ちょっと怪しまれちゃうと思ったから」
「怪しまれるような事するんですね……」
悠のツッコミが、蒼華の心に痛く刺さった。
が、すぐに蒼華は言葉を続けた。
「ぐ……紅蓮の為を思えば悪事に手を染めることなんて、全然怖くないんだから……!」
「それで? 結局何をするの?」
「あ、うん! それなんだけどね―――」
そう言って、蒼華は三人に“考えていた事”を話した。
そしてそれを聞いた悠たち三人は、すぐに出発するために身支度を整え、そのまま蒼華に続いて家を出ることにした。
時刻はまだ、朝の6時になったばかりだ。
■
「さて、と。着いたね」
「ねぇ……本当にやるの? “そんなこと”……」
麗は不安そうに蒼華に問いかけた。
しかし、蒼華は固く決心したように頷いて答えた。
「もちろん……やるよ。無茶かもしれないけど、多分これが今の私達にできる精一杯の作戦だと思うから」
「それにしても無茶過ぎますって……本当に大丈夫なんでしょうか、蒼華さん」
「うん……私もちょっとだけ心配かも」
「……まあ、蒼華がそこまで言うんだったらいいわ。別に他の作戦が思い浮かんでいる訳でもないし。確かに不安なのは分かるけどね」
「みんな……ごめんね。あと、ありがとね。これが、馬鹿な私に思いついた、蜘蛛の糸のような考えだったから……」
全員、すぐに戦闘できるような武装状態になっていた。
蒼華は拳にメリケンサックのような鉄製の武具を。麗は武具店で買った氷属性魔法の強化杖を。悠は腰に差しておける鉄製のロングソードと、魔法使い用の小さなステッキを。―――ちなみに冥は素手だった。
そして、蒼華たちが見上げた先にあったのは―――紅蓮と奏のクラスメイトが居る、寮舎だった。
「―――じゃあ、行こうか。“みんな”に会いに……!」
蒼華たちは意を決して敷地内へと入った。
別段変わった様子も無く、まだみんな寝ているからかかなり静かだった。
蒼華と冥を先頭に、四人は寮舎へと入っていく。
気配は感じられない。
やはりみんなまだ眠っているのだろう。
「よし、それじゃあみんな寝てるうちに何処か一箇所に集めて―――」
そうして、蒼華が作戦を開始しようと口を開いた直後の事だった。
「―――あ、あの……何、してるんです? ……こんな時間に」
蒼華たちは、その瞬間―――作戦を、開始した。
◆
蒼華の考えた作戦は、こんなものだった。
「まず、この前の事で分かった事だけどさ―――」
“双翼の爪牙”と名乗る連中は、恐らく紅蓮と奏のクラスメイトたちに深く関係しているのでは無いかという事。
そして、“パレッツ”と名乗る不可思議な二人組と、そのリーダーだと思われる人物……メリドが怪しいという事。
現時点で、緋神紅蓮や影咲奏に繋がると思われる情報を持っていそうなのはこのどちらかだった。
しかし、今いるこの四人では絶対にその尻尾を掴むことは不可能だろう。
……何かの奇跡でも起きれば話は別だが、蒼華たちには“奇跡”を待っているほどの余裕が無かったのだ。
「で、そこで提案なんだけど……」
そこで、蒼華はこう提案した。
「人手が足りないなら、奪っちゃおうよ」
と。
足りない人材を確保する為に、白羽の矢が立ったのは紅蓮と奏のクラスメイトたちだった。
だけど彼らには現在蒼華たちが、紅蓮を追って、国王の期待を裏切っている事は知られているはず。
それに元々彼らは、他国との戦争の為に、国王によって無理矢理訓練させられている為、昼になれば王国騎士たちが稽古をつけに例の寮舎にやってきてしまうのだ。
だからこそ、蒼華はクラスメイトとコンタクトを取るために朝早くからの行動を考えていたのだった。
蒼華たちは、この世界に来て間もない頃だけだったが、他のクラスメイトたちと同じく騎士からの訓練を受けていたことがある。
その時、確かにこの現状に早速嫌気がさしている人たちがいた事を知っていたのだ。
「どう? 私の考えた作戦は」
「―――“双翼の爪牙”と“パレッツ”……二つの怪しいグループを調査しないといけないけれど、私たち四人では恐らく難しい……。だから、その調査の為の人手として後輩くんのクラスメイトたちに協力してもらおう……ってことね」
「うん、そうだね」
「そして、そのクラスメイトたちの中には、無理矢理戦争の為の訓練をすることを嫌がってる子達がいるから、その子たちなら協力してくれるだろう……と」
「そう! 全員が全員協力してくれる訳じゃないだろうし、せめてこの意見に肯定してくれる子達だけでもいいんだけど……」
「……そうね。悪くはない考えね。だけど、それならもうちょっといい作戦があるわ」
「もうちょっといい作戦……?」
「ええ。どうせ国を裏切るなら、とことん裏切ってやりましょう?」
「国を……裏切る……?」
「ちょっとおねーさんたち……? 何か変なことしようとしてません……?」
「う……冥。覚悟を決めるんだ。多分、またはちゃめちゃな事になるぞ……」
「うぇ……まあセンパイが助けられるなら、何でもいいですけど」
「まあ、それもそうだな」
不安がる冥たちを横目に、麗は蒼華の考えた作戦に後付けしていくようにこんな提案をした。
「どうせなら、こうすればいいのよ―――」
曰く、賛同してくれるクラスメイトたちが少なかった場合の作戦も用意しておいたほうがいいと言う。
具体的に何をどうするかと言うと、ギルドに依頼すると言うのだ。
しかし依頼者となってしまえば、その目的が達成された場合こちらから“報酬”を支払わなければならなくなってしまう。
そしてその依頼が高難易度であるほど、多額となってしまう……。
その為にはかなりの資金が必要だった。
ギルドに依頼を発注するのもそうだが、それ以外でもお金は今後多く必要になってくるだろう。
だからこそ、麗の提案する作戦はこんな物だった。
「国王を、脅しましょう?」
そう。それは、悪魔な麗が思いついた、ペイン王国をはっきりと裏切る事になる……恐怖の作戦だった。
「―――見てなさい、クソ国王。私たちを狂わせたその責任……しっかりと取ってもらうわよ」
命からがらです。
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次回はこの続き!
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