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38.あの人に会えるのね!行動開始よ!!

―――魔に堕ちた少女はただ笑う。




「影咲、奏―――」



 それが今、目を覚ました少女の名だった。

 異世界からの“召喚者”であり、ほとんど戦う力なんて持っていなかったか弱い少女。それが、彼女だった。



「ふふ……ふふふっ! ああ、早く会いたいわ。私だけの愛しい貴方に!」



 しかし彼女は、目覚めてから変わってしまった。

 恐らく、『魔人化』の影響だろう。人格が、変わってしまったのだ。



「ねーねークロカゲ! これって成功かな!? 成功だよね?!」


「む……まあ、失敗はしていない……な」



 俺は渋々そう答えた。

 俺は“クロカゲ”。この《十ノ色パレッツ》という組織の副リーダー的な立場にある人間だ。


 そして今問いかけてきた獣人族の少年は、“キサメ”だ。

 キサメはぴょこぴょこと飛び跳ねながら実験の成功を喜んでいた。



「フム、これで成功……か。しかしこれでは……」


「あァ。俺でも分かるぜェ。コイツ、元々こんな性格じゃあなかっただろう」


「きっと『魔人化』の影響でしょうね。“魔”の力に、彼女が元々持っていた“闇”の魔力が共鳴して、その力を増幅させたんだわ」



 俺の後ろでは、同じくメンバーの“アオギリ”、“アカギ”、“モモカ”が今回の実験に関しての情報を纏めていた。



「ほっほっほっ……これじゃあ“成功失敗”、じゃな」


「はっはっはー! 確かに成功失敗だな、ハクア爺!」


「煩え黙れクソカス兄貴。成功失敗ってそもそも何だし……。てかハクアは爺さんじゃなくて爺さんの見た目してるただの子供だろうが」



 さらにその隣では、“ハクア”と“キンガ”、“ギンガ”の三人が騒いでいた。正直ここの三人はいっつも何かと場をかき乱すので俺個人としてはあんまり得意ではないのだが、それぞれが持つ【白】・【金】・【銀】の力はかなり強力な力なので、煩いからと切り捨てられる者達では無かった。



「さて……と」



 と、俺はそんな《十ノ色》メンバーを横目に、目覚めた奏の様子を見ていた、ちょうどその時だった。



「よーっす。お疲れ〜」



 ウィーン、と部屋の扉が開いて、そこから三人の人物が中へと入ってきた。

 それを見た俺たちメンバーは、すぐに“彼女”の前に整列をした。



「???」



 奏は状況を理解できずに、ただ首を傾げている。

 しかしそれは無理もない事なのは、この場の全員が承知していた。

 すると“彼女”は、隣に連れていた二人を俺たちの横に並べさせると、再び口を開いた。



「よーっすよーっす、お疲れさま〜。どう? みんな元気してた〜?」


「ふん。元気な訳がな―――」


「―――めーっちゃ元気だよー!!!!」


「お〜、どこかの堅物とは違ってキサメは元気だねぇ〜!」


「にへへ〜! もっと褒めて褒めて〜……!!」


「……チッ。相変わらず適当な女だ。―――メリド」



 俺はその女の名を口にした。

 《十ノ色》を統べるリーダーであり、とても特殊な立場に居る人物……それが、メリド。メリド・シェヴィールという人物だった。



「メリド様。お疲れ様です」


「おう! アオギリも相変わらず堅物っぽいね〜!」


「いや、別にそんなことはないと思うのですが―――ってそれより、どうしてコイツらと一緒だったんですか!?」


「ん? あぁ、その二人ね。ここに戻ってくる途中で拾ったのよ」


「はぁ〜い。拾われましたよぉ〜ん」


「フシュ! フシュ!!」



 アオギリとメリドに指を差された二人の奇抜な格好をした人物―――【紫】の“シエン”と、【緑】の“リョクジ”の二人は呑気にそう笑いながら答えた。

 と言ってもリョクジの方は“答えた”と言えるのかどうかすら怪しいが。



「……それで。一応実験には成功したが……これからどうするつもりだ?」



 俺は気を取り直して、奏の方を見ながらメリドに尋ねた。

 するとメリドは、奏の元まで駆け寄っていくと、彼女の現在の様子を確認しながらこう呟いた。



「んー……蘇生が成功したのはシンプルに嬉しいんだけど、流石にこの状態じゃあ“彼ら”のもとには返せないよねぇ……」



 そう……何度も言うようだが今の奏の状態は『魔人化』の影響で完全に記憶を失っているのだ。

 『魔人化』……それは魔ならざる者と魔をその肉体で融合させることによって、強大な力を得たり、死者を悪魔として転生させたりする、一種の儀式のような物だ。


 影咲奏は、その儀式によってその身に悪魔を宿し、完全に死んでいた肉体は蘇生できたのだが……。



「こりゃあ一回、ちゃんと魔族の専門家に見てもらった方がいいかもね」


「魔族の専門家……ということは、まさかお前……」


「そうだね、そのまさかだよクロカゲ」


「ほっほっ、メリドや。―――アンタまさか、“魔の国”に行くわけじゃないよね?」



 ハクアは威圧するようにそう言った。

 するとそんなハクアの様子など気にも止めず、メリドは頷いた。



「うん、行くよ。魔人族の住まう大陸……リューディッヒへとね」


「何故……僕が居ると分かっていて……それでも行くというのか!?」


「うん。これは命令だから。来ないなら切り捨てる、ただそれだけだよ」


「ッ……わ、分かったよ。切り捨てる……のだけは勘弁だ。ついていけばいいんだろう?」


「それでよろしい」



 と、簡単にハクアは丸め込まれてしまっていた。

 ハクアにも魔族との因縁があって、それを気にしての発言だったのだろうが……俺たちは―――



「そうと決まればさっさと行くわよ。今はとにかく時間が惜しいわ」


「なっ……今からか!? ……と驚いたところでお前は本当に行くんだろうな。それなら俺も文句を言わずついていくとしよう」



 俺は諦めて溜め息をつきながらそう答えた。

 すると他の仲間たちも同様に、メリドについていくようだった。



「今回は、全員で行くよ。何としても彼女は守らなくちゃいけないからね。不測の事態にも備えるってことで、全員で」



 普段はそんなこと絶対にあり得ない。というか全員で行動するなんて、結成当初くらいだっただろう。



「私も……行くの?」



 奏は少し嬉しそうにそう聞いてくる。



「ええ、もちろん」


「ふふ……やったわ。これで愛しいあの人を探せるのね」


「……そう、ね」



 メリドもどうやら、彼女と喋って感じ取ったようだ。

 底知れぬ違和感に。


 影咲奏と共に、短い間だったが旅をしたせいだろう。

 そのせいで、彼女の今の喋り方に違和感を感じてしまっていた。それに、言葉の節々から感じられる恐ろしい闇の気も感じられた。



「あは、あははっ! そうよ……私があの人を置いて死んでいくなんてあり得ないんだわっ! だってそうよ……私より死ぬべき人間はごまんといるんだからっ!!」



 闇が、魔によって増幅されているのだろう。

 そして彼女自身も、その力を制御できない。


 だからこそ、こんなただの言葉にすらその力が込められている。

 今の奏は、まさに恐怖その物だった。



「……さ、早いとこ行きましょうか」


「ああ。賛成だ」



 全員、それぞれ持ち物は大事な物以外はそもそも所有していない為、準備など必要も無く旅立てる状態だった。

 メリドは奏に服を着せると、全員に向けて言った。



「さーて、とりあえず目指すのは向こうに建ててあるアジトよ! 確か……“カース”とかいう国に建ててあるはずだから、まずはそこに向かって行くわよ!」


『了解!』



 かくしてメリド率いる俺たち《十ノ色パレッツ》は、魔人族の住まう大陸リューディッヒへと向けて、行動を開始した。







「ヘヘッ……おい、あれ見たか?」


「っす、見たっすアニキ!」


「周りに居る奴らは強そうだが、そのリスクを負ってでもあの女を手に入れる価値はありそうだなぁ〜?」


「っすね!」


「あの、服を一枚着ただけのスケベな女を手に入れて、リーダーに差し出せば、きっと俺たちも昇格間違いなし……だぜ!」


「っしゃあ! やっちゃいましょうぜ、アニキィッ!!」





「―――何をするのかな? ねぇ、私に何をするつもりだったのかな?」





「へ……?」


「さ、さっきの女……? な、何でここに……」



「あはは! そんなことどうでもいいからさ〜。―――私に触れていいのは“あの人”だけだから。君たちみたいな汚いおじさんたちに触らせるわけないじゃん。馬鹿なのかなぁ?」



「お、おじ……ッ!? だ、黙って聞いてりゃ勝手なこといいやがって! そんな格好してちゃ、誘ってるのも同然だろうがッ!!」


「っすよ!」



「んー、そっか。この格好じゃあの人は嫉妬しちゃうよね……教えてくれてありがとね」



「へっ、分かればいいんだ……って、俺は何を―――?」


「あ、アニキ! どうしたんすか!? とっとと襲っちまいましょうよ!」



「んー、もう用済みだから消えてね。ばいば〜い」



「えっ―――」


命からがら、お久しぶりです!

一週間ほど間が空いてしまいましたが、何とか更新にこぎつけました!!


そして次回は取り残されたクラスメイトたちの話に移ります!!

39.やっぱりテメーは駄目だ、クソ国王!

お楽しみに!


次回更新日は多分日曜日です

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