37.進め巨人。
―――思い巡る夜、再び。
「―――ぐれんっ!!!」
「うわわっ!」
目が覚めると、いきなり誰かに抱きつかれてしまった。
俺はそれを受け止めると、そのまま“彼女”を静かに降ろしてあげた。
「心配、かけたよな……」
「心配、したのだ」
「ごめん」
「謝らなくていいのだ。ぐれんがこんな目にあったのは、わたしのせいなのだから」
「それでも、ごめん」
「……だから! 謝らなくていいって言ってるのだ!」
「……俺はお前を一人にしてしまった。だから、謝るんだ……本当に心配かけて、ごめんなさい」
「……分かってるなら、あんな事しないで欲しかったの……だぁ……!」
俺の胸に飛び込んできて、今度は胸のあたりをぽかぽかと叩いてくる彼女。
その目には、うるうるとたっぷりの涙が浮かんでいるのが見えた。
「……ごめん」
「謝るのをやめるのだ」
「わ、分かったよ」
俺の胸をぽかぽかと叩きながら、一転して威圧的な口調になったため、俺は彼女に従って謝るのを止めた。
「……でも、本当に良かったのだ。本当に……ほん……とうに……!」
「ああ、心配かけたな」
優しく手を後ろに回してくる彼女を、俺はそっと抱いた。
彼女は一瞬、驚いたような表情を見せたけど、すぐに顔を隠すために後ろを向いてしまった。
俺から、離れていく。
「ぁ……」
また、失うのが怖くて。
俺は手を伸ばす。
「ぐれん……」
彼女も、また振り返って。
俺の伸ばした手を優しく掴むと、言った。
「―――おかえりなさいっ!」
その瞳には、涙が溜まっていたけど。
それでも、笑っていた。
だから、俺は。
「―――ああ、ただいま。桜花!」
彼女に、そう笑って答えてみせたのだ。
■
「ひゅーぱちぱちぱち〜。感動的な再会シーンを見せてくれてどうもありがと〜う」
「ヒュー、パチパチパチパチ。フタリトモ、ウレシソウ。デモ、ワタシハ、ナンダカ、カナシイ」
ハッ、と気付くと後ろにはサイケリとアンが居た。
「な、なんだよ! なんか文句あるのか!?」
「いえ別に〜? ただ私はこの子も目を覚ましたので連れてきただけなんですけどねぇ〜?」
「はっ! そういえばアン! 目を覚ましたのだ!?」
ただからかわれただけかとも思ったが、どうやら目的は別にあったようだ。確かにアンも倒れて眠ったままだったようだが、もうすっかり元気に歩いていた。
桜花はアンを見ると、一瞬にしてアンのもとまで駆け寄って、ぎゅ〜っという音が聞こえてくるくらい強く抱きしめていた。
「イ、イタイヨオウカ! イタタタタ!」
「うぅ〜、良かったのだ〜! アン〜!」
子供同士で抱き合っているからか、何ともまあ微笑ましい光景がそこには広がっていた。
そしてそんな二人を横目に、サイケリは俺の方へとやってくる。
「けっ、悪運が強いガキですね―――ヒカミグレン」
「……俺もそう思うよ」
「言いたいことは色々とありますけどね。まずは無事に改造が成功して良かったですよ」
「随分と素直になったもんだね。俺たちを執拗に狙ってくるものだから、もっと攻撃的になるかと思ってたけど」
「まあ、命を救ってくれた恩人には足を向けて寝られないのと同じ事ですよ」
「ふーん。ま、今回の件に関しては、俺からも礼を言わせてもらうよ。本当にありがとう」
「チッ……一応ありがたく受け取っておきますよ」
悪態をつきながらも、なんだかんだちゃんと接してくれているサイケリに、やっぱりどうも慣れない。
なんて思いながらちょっとだけ気まずい時間が流れたあと。
「―――それで? この後はどうするんですか?」
「……いや、俺に聞かれても」
今後どうするか、なんて目覚めた直後で聞かれてもな。
そんなことよりまずは俺の体の事について詳しく聞いておきたいんだけど。
「お前はなんかないのか?」
「そうですねぇ……。こんな所に長居するのも時間の無駄ですし……空いた時間はとにかく次の計画のために使いたいですしねぇ」
「次の計画ってお前……まだ懲りてないのかよ」
「当然です。あの“ガキ共”に復讐して、そしてその後にお前たちを殺す。完璧な計画を遂行してみせますからね」
「……あのガキ共……?」
「そんなことよりも……そうですねぇ。この後行くとしたら、私の隠しラボでしょうか」
「“隠しラボ”? なんなんだ、それ?」
隠れ家みたいなものだろうか。
サイケリは俺の問いかけに、「ええ」と答えると、言葉を続けた。
「私の隠しラボの一つが、魔人族の大陸リューディッヒにあるんですがね」
「魔人の……大陸」
前にメリドさんやクロキリさんから聞いたな。
《魔人の大陸リューディッヒ》。人型の魔族や獣型の魔族。人間と獣人の間をとって、それに魔の要素を足したような者たちが住まうところらしいが。
そんなところに、コイツの隠れ家が……?
「どうして人間のお前が……」
「まあ私、発明者ですから。どの国でも数少ない発明者は、種族の垣根を超えて重宝されてるんですよ」
「そういう物なのか……?」
「ええ、そういう物なのです。それよりもどうしますか? このままここに居てもやる事は無いでしょう? それに、貴方の改造もまだ不完全だ。帰ると言うなら止めませんが、もう少し私と一緒に居たほうが賢明だと思いますがねぇ」
確かに、サイケリの言う通りだった。
予備のパーツで作ったらしいこの体は、彼の言う通りまだ不完全で、まだしっかりと機能してないらしいのだ。
具体的には、今の俺にとって一番重要な“核”の部分がちゃんとしたパーツで改造できてない分、エネルギーの供給がうまくされていないのだと言う。
今俺が動けているのは、サイケリや桜花の残り少ない魔力や闘気のお陰らしいが……。
「ああ、分かっているよ」
「賢明です」
このままじゃあ全員行き倒れだ。
悔しいがこのサイケリにしか俺の事は任せられないから……だから俺は、コイツと一緒に行くことを選択する。
そして、核がしっかりしたら、姉ちゃんたちを探すんだ。
じゃないとまた、桜花一人に負担をかけ続けることになってしまうから。
「では、さっさと行きましょう」
「でも、移動手段が徒歩っていうのは……」
「ああ、それなら安心してください。我がサイケリナンバー2、グレンは機体の中からの手動操縦も可能ですから」
「……ホントどこまで計算づくなんだ」
「ククク……発明者ですから」
こうして俺は、あの憎き敵であるサイケリの手によって救われ、そして行動を共にすることになったのだ。
まだ抱き合っていた桜花とアンを、俺のいない“グレン”の左手の平に乗せて、俺もそこに一緒に乗った。
サイケリはグレンに乗って操縦を始め、俺たちはついにこの世界に来て三つ目の大陸……《魔人の大陸リューディッヒ》へと向かうことになった。
『さあ、目指すは私のラボがある《ゼアンの村》です! ここからはバレないようにステルスモードで進みながら、尚かつ人のいない森や山を抜けるルートを通りますから、皆様しっかりと指に捕まっていてくださいねぇ〜?』
「お、おう……!」
「分かったのだ!!」
「マカセテ!!」
気分はまるで、巨人に乗った小人のようだ。
俺はこれから、完全体を手に入れるために魔人族の大陸へと行くのだ!!
「さあ行きますよ〜!!」
命からがら〜!
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思い出したように闇落ち要素が来ましたけど、大事です。
次回はどうなることやら。
次回更新予定日→土曜日か日曜日(体調が良ければ土曜には更新したいです)




