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36.体は不死鳥で、心は機械で出来ている。

―――少年は舞い戻る。不死鳥のように。




《獣人の大陸グラ/とある森の中》



「―――ククク、ここまで来ればしばらくは安全だろう」


「これで……良かったのだ」


「なんだァ……? まだ後悔してるのか。これでも俺的には、あの場で最も最善な選択肢をお前は選んだと思うがなァ。―――なぁ、“オウカ”」


「……っ」



 先程の、廃工場での一件のすぐ後の事。

 俺たちは廃工場からかなり離れたところにある、かなり深い森までやってきていた。


 俺、こと“緋神紅蓮ひかみぐれん”は確かに薄れていく意識の中で、俺をこんなにした男“サイケリ”と、俺のこの世界でのかけがえのない相棒“桜花おうか”の二人の会話を、かすかに聞いていた。



「……ま、お前にとっては重大な選択だったのかもしれないからな。っと……そろそろ喋り方戻しますかァ」


「―――それ、作ってたのだ?」


「ン〜、まァ俺って本性がこっちだからさァ。だけど普段からこんなんじゃ、絶対嫌われちゃうじゃん? だ〜か〜ら〜ァ! 俺はこうやってキャラを隠してんの。分かったらいちいちツッコむなクソガキがッ!」


「分かったのだ。それよりも早く、紅蓮を何とかするのだ」


「あいあい、助けてもらった恩もありますからねぇ。少しは協力させていただきますよ」



 急なキャラ変を見せたサイケリに、桜花は全く動じた様子を見せず淡々と次の行動へと移ろうとしていた。

 サイケリはそれに適当な相づちを打ちながらも、“黒き機人おれ”を止める命令を出した。



「まあ色々と聞きたいこと話したいことはありますけどね……まずはこちらを優先した方がいいでしょうね」


「無駄な独り言はやめて、とっとと紅蓮を解放するのだ」


「おー怖い怖い。旦那様がやられちゃって不機嫌、ですか」


「黙るのだ」


「チッ、釣れねェガキだな。……まあいいですよ」



 かすかに聞こえてくる声だけでも分かる。

 ……桜花が、相当怒っている事。そして、焦っている事も同じくらい伝わってきた。



「そんじゃあまあ、まずは……っと」



 するとサイケリは、“黒き機人おれ”の今の大きな体までひょひょいっと登ってくると、そのまま俺の上げたまま・・・・・の右手に乗ってきた。



「このお子さんはアナタたちの連れでしょう? だったら自分たちで何とかしてください」



 そう言って、一人の少女を抱きかかえるとそのまま地面へと飛び降りた。



「アン、無事で良かったのだ……」


「まったく……おもりはちゃんとしてくださいよ? 私は面倒なんて見ませんから」


「そんなこと、分かってるのだ。それよりも早く紅蓮を―――」


「あーもう分かりましたから。静かにしてろガキ……」



 もうあからさまに本性を隠すつもりがないサイケリを横目に、桜花はたった今受け取った少女を近くにそっと寝かせたようだ。


 アン……やっぱり俺の右手に乗っていたのはアンだったようだが、そもそも状況がさっぱり理解できない。

 あの“死神”に言われて、『機械との融合体になる』っていうのは何となく分かってはいたんだけど、それにしたって状況が一変し過ぎていた。



(確か、姉ちゃんたちを助けようと廃工場に侵入して、そこで敵に見つかって……みんなが殺されそうになったところを俺が庇って、それで俺が死んだんだよな……)



 いや、正確には死にかけただけだが。

 そして目が覚めたら、俺の体に感覚はほとんど無くて、しかも何故か俺の体は巨大なロボットみたいになってて。


 右手には獣人の国で助けた奴隷の少女“アン”と、そして桜花とあの憎き元凶であるサイケリまでもが一緒に居たのだ。

 もうさっぱり状況が分からん。



「さてと……」



 なんて記憶を掘り返して、余計に訳が分からなくなっていると、再びサイケリのヤツが俺の体を登ってやってきていた。

 どうやらいよいよ、俺がいる心臓部のところに手を付けるようだ。



「とりあえず、生命維持装置ごと取り出しましょうか……」



 ガゴッ……という大きな音をして、俺の眠っている心臓部―――核が取り出された。どうやら思ったよりも簡単に外れるようだ。



「そしてこれをこのまま―――」



 下ろしてくれるのだろうか。

 さっきの聞こえてきた会話的に、どうやらこのサイケリは桜花に借りを作ってしまったみたいだから、こんなにも素直に桜花に従っているのだろう。


 そこは随分と律儀なヤツだと思う。

 敵だから、の一言で簡単に裏切れるというのに。


 そんなサイケリの行動に、俺は少しだけだがコイツを見直していた。



「―――ほいっ、と!」



 ―――が、その気持ちは一瞬で消え去った。



「お〜、壊れないと分かってても結構怖いねぇ〜!!」



 なんとこの発明者野郎、俺の入った装置を一気に落としやがったのだ。

 これには流石に俺の肉体もビックリして、今まで薄れかけてボヤケていた精神とまさかのビックリンク。完全に目を覚ますことが出来たのであった。


 だが、当然だが一度は死にかけた身。

 瀕死の肉体は、そう簡単には動かすことは出来なかった。



「良かった、無事そうですね」



 ガシャァァン!と大きな音を立てて、装置は落下したものの、やはり核だけあって頑丈に出来ているのか、壊れる様子も無く無事に着地していた。



「ちょっと! 紅蓮が傷ついたらどうするつもりなのだ!?」


「いやいや、大丈夫ですから。安心して見ててくださいよ」


「安心なんて出来るわけないのだ……」



 それは俺も同感だ桜花。

 もういっそのこと、早く俺を何とか生き返らせてくれないかサイケリ……。



「さて、問題なのはここからですよ」



 そう言いながら、サイケリも地面へと降りてくる。



「問題なのだ?」


「ええ。緋神紅蓮コイツの肉体はもう既にボロボロで、普通の方法じゃあ絶対に蘇生する事など不可能です」



 ……なるほど。そういう事か。



「じゃ、じゃあ紅蓮は……紅蓮は助からない……のだ!?」


「落ち着いて話を最後まで聞いてください? 私はこう言ったんです。―――“普通の方法”じゃ、助からない……とね」


「まさか……普通じゃない方法で……?」


「そう。実はここに来るまでの間、何とかできないかと考えていたんですよ。私を救ってくれたアナタとの約束……取引ですからね」



 ……やっぱりコイツ、そこんとこ律儀だよね。

 お陰で何とかなりそうだけど。



「それで……どうするのだ?」


「ええ。簡単に説明しましょう。―――そこの憎き男……緋神紅蓮を、この“サイケリナンバー2 グレン”と融合させます!」



 ―――やっぱり、か。これが死神の言っていた、機械との融合ってことなのかな。



「その兵器と……融合させる……?」


「もちろん、融合と言っても肉体は人間のまま、記憶も肉体の機能も、一部を除いてほぼ全てが人間の男のまま蘇生できますよ」


「そ、そんな方法があるのだ!? なら早くそれを……」


「―――ですが、それの代償……にはなりますが。その方法で蘇生した場合、この男の心臓は機械で出来た“エネルギー核”となり、常にエネルギーの供給をしなければならなくなります」


「エネルギーの、供給……?」



 なんだ、それは。



「エネルギー……すなわち、ここにセットで付いている“魔力炉”と“闘気炉”のことですね。ここが主な生命維持の核となりますので、ここに常に魔力マナ闘気オーラを流し続けなければならなくなります」


魔力マナと……闘気オーラ……を……」



 げ……嘘、だろ?

 その条件……普通なら満たせるだろうが……


 俺は―――



「そう。この男は魔力も闘気も“ゼロ”、でしたよね」


「う……す、少しだけなら伸びていたのだ」


「ですがそれも微々たる物。常に生命活動を維持し続けるには、最低でもそれぞれ50の数値は必要です」


「げ、なのだ」



 いや桜花。お前までそんな反応するなよ。悲しくなるだろ。

 確かに全然足りないけどさ……。



「なので私、考えました。これを解決する方法」


「な、なんなのだ!? 早く教えろなのだ」


「はいはい。つまるところですね、この男をこの方法で蘇生した場合、この男は充電式で活動出来るようになる訳ですよ。機械人間……そうですね。機械人間マギアスとでも名付けましょうか」


「……そういうのは後ででいいのだ」


「……でですね。充電式で活動出来る、ということは、常に本人が魔力や闘気を流し続ける必要はないんですよ。まあ、常時活動したければ本人の力は必要になるでしょうがね」


「……それで?」


「ですから、結論してですね。毎日必ず“スリープモード”を設定する事。そして、それ以外の時間を活動出来るだけの動力を、この男に、外から与えてやればいいんですよ」



 ……外から、魔力や闘気を与えるっていうのか……?

 確かに、充電式って言ってたから、スマホとかゲームの充電みたいなのと同じイメージなんだろうけど。



「そうです。充電式機械人間、名付けるなら“マギアス・ロイド”でしょうか!?」


「そのノリうざいからやめるのだ。それよりも、もう紅蓮が生きててくれるならなんでもいいから、早くするのだ!」


「なんですか……そちらから聞いてきたくせに。クソガキが……」



 いや結構重大な選択だとは思うんですけどね!?

 まあ、確かに俺が生きられるなら、それでもいいけど。



「ま、それじゃあちゃちゃっと済ませちゃいますね。幸い、この機体には必要になりそうなパーツは予備として脚の裏に積んでいますので」


「用意周到なのだ」


「発明者はそれが大事なところもありますからね」


「じゃ、さっさと終わらせるのだ」


「はいはい……分かりましたよ」



 桜花の頼みに、サイケリは渋々……とも見えるし、喜々としているようにも見える感じで俺の入ってる核をいじり始めた。

 そしてその時、生命維持装置か何かが外れたからだろうか。


 直後一瞬にして、俺の意識は再び薄れかけていった。

 それは、段々と、深い闇に沈んでいくように……



 さっきまでとは違って、今回は耐えることができなさそうだった。



(……後は、ヤツに任せるしか……ない、か)



 俺は、若干の不安な気持ちを残したまま、すぐに意識を手放すことになる。









 ―――そして、目を覚ました時。




「―――ぁ……お、れ……は……」





 俺は、再びこの世界へと舞い戻ってきたのだ。

 そう。まるで、不死鳥ように、二度目の死を乗り越えて。


命からがら〜!

ブックマークや高評価、ぜひお願いします!


次回は紅蓮たちの今後の方針を描きます……

お楽しみに!!


次回更新予定日→13(火)or14(水)

火曜日の可能性が高いです!!!

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