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35.意味深なヒントを残すなよ!!

―――絶望からの、再起。



「ぱれっつ……だと? ンだよその変な名前はよォ!」


「変で悪かったわねぇ〜。文句ならリーダー様に言ってくださるかしらぁ〜?」


「フシュ! フシュ!」



 土煙の中から突如として現れた謎の二人組。

 一人は全身をピンクの、そう、例えるならバニーガールのようなセクシーな格好に見を包んだ妖艶な女性。

 そしてもう一人は、そんな女性に跨られていて、まるで馬や犬のような役割を果たしている大男。


 自分たちの事を“ぱれっつ”と名乗り、颯爽と派手に現れたその二人組は、何故か蒼華たちの事を守ってくれているようだった。



「さてと……」


「チッ……パレットだかパレッツだか知らねェがよ、俺らの邪魔をするってんなら容赦はしねーぜッ!?」


「ああ。クロウの言う通りだ。邪魔立てするなら貴様らもここで死んでいけッ!!」



 《双翼の爪牙》の二人は、パレッツと名乗る二人組に向かって同時に攻撃を仕掛けにかかった。

 正面からの、正々堂々とした攻撃だ。



「儚く消えろッ! “水蛇アクアサーペント”ッ!」


「グハハハッ! “強斬りパワースラッシュ”ゥゥッ!!」



 ファングの手元からは、蒼華たちを襲ったあの水で出来た長い蛇の魔法が現れて、ピンクのバニーガールを狙った。

 さらにそれに合わせるように、クロウは手に持った剣でそのバニーガールが乗っている大男へと大振りで斬りかかっていく。


 どちらの攻撃も素早く、一朝一夕には手に入らないような連携が取れていた。これは流石に躱せない。

 蒼華は見ていてそう確信してしまう。


 だからこそ、彼女は驚いた。



「―――嘘……」



 《双翼の爪牙》の二人が、目にも見えないスピードで遥か後方の壁まで吹っ飛んで行ったからだ。



「ふあぁぁ〜。眠いわぁ〜」


「フシュ! フシュ!!!」



 まるで何事も無かったかのような謎の二人組。

 実際、その一連の流れを全て見ていた蒼華たち四人にも、何が起きたかは分からなかった。



「(今……どちらが攻撃したのかすら全く分からなかった……。まるで、あのファングとクロウとかいう二人が勝手に吹き飛んでいったみたいな……)」



 蒼華はその二人の、目に見えない謎の力に驚きながらも、しっかりとこの場を切り抜けようと考えることはやめなかった。



「ん〜? あれれ? ねーねー少年少女たちさぁ〜?」



 するとバニーガールの女性は、蒼華たちの方を向いて何か不思議そうに問いかけてきた。



「な、何……?」


「さっきのよく“使えそうな”男たち、どこに行ったか分かるぅ〜?」


「フシュフシュフシュ!!」


「使えそうな……?」


「あ、別に怪しいことに使うとか、そういうのじゃないんだけどねぇ〜。てか、私たち怪しくなんてないしぃ〜」



 見るからに怪しそうな連中が何かをほざいている。

 と、蒼華たちは思う。


 が、まあ確かに助けてくれたのも事実だった。

 だからこそ、蒼華は正直に《双翼の爪牙》の二人が吹き飛んでいった方向に指を向けて答えた。



「あっちに飛んでいきましたよ」


「わぁ〜、ありがとねぇ〜!」


「フシュフシュ!」


「この子も“ありがとうございます”って言ってるわ〜!」


「いえ……別に」



 この二人といるとペースが崩される。

 まあそれもそのはずだろう。こんな現れた方をして、こんな個性的な見た目と喋り方なんだ。今までの対人やコミュニケーションでは通用し切れない部分が多いのだから。



「ひゃ〜、それじゃあ行くわよぉ〜!」


「フシュフシュ!」



 まるでお父さん馬にのった小さな子供のように、はしゃぎながらその場を去って《双翼の爪牙》を追いかけようとする二人。



「あ、あの……!」


「ん〜? なぁ〜にぃ〜?」



 しかし、蒼華はそれを引き止めた。

 今ここで、この二人と別れるのはいけない。直感的にそう感じていたからだ。



「どうかしたのかしらぁ〜?」



 “パレッツ”に“双翼の爪牙”……立て続けに色々な事が起きていて、頭の整理が追いつかない現状。

 これから行動するにあたって、障害となりうる者たちの情報は少しでも多く得ておいた方がいいと感じたからこそ、蒼華は勇気を出して尋ねてみることにした。



「あ、あの。聞きたいことが、あるんですけど」


「聞きたいこと、ねぇ〜? ―――いいわよぉ〜、多分さっきの子たちもまだ意識は戻ってないだろうから、少しなら答えてあげるわぁ〜」


「あ、ありがとうございます」


「それでぇ〜? 何が聞きたいのかしらぁ〜?」



 何かの手がかりを掴めるかもしれない、大きなチャンスだ。

 紅蓮の事が絡んでいる可能性もある。だってまだ彼は生きているはずなのだから。


 それなら。


 すると蒼華は冷静にもこんな質問をしてみた。



「あなた達は……何者なんですか」


「んー? 私たちぃ〜?」


「はい。“パレッツ”、とは一体何なんですか」


「《十ノ色パレッツ》って言うのはねぇ〜? 何だったかしら〜? ―――あ、そだそだ。世界に安寧をもたらすのが私たちの使命でぇ〜、確か今は二人の少年少女を探しているんだったかしらねぇ〜」


「二人の、少年少女……ですか?」



 恐る恐る。蒼華は針の穴を突くような質問をしてみる。



「うんうん。そうだよぉ〜? なんか超重要なんだってぇ〜。なんてったって女の子の方は闇属性の魔―――」


「―――フシュフシュ!!! フシュー!!!」


「……え? あ、これ言っちゃ駄目だったっけ。あ、メリさんに駄目って言われてたやつかぁ〜」


「フシュ!」


「そかそか。まあそんな感じ〜。分かったかしら〜?」



「―――はい。ありがとう、ございました」



 蒼華はこれ以上その二人に問いかける事は無かった。

 今の会話だけで、十分だった。



「それじゃあ〜ねぇ〜」


「フシュフシュシュ〜」



 そう言って、二人の変人はその場を後にした。



「……」



 全てが終わり、再び辺りが一気に静かになる。

 この場には、蒼華たち四人が取り残されていた。



「ひとまず……家に戻ろっか」





《自宅:リビング》



「おねーさん……すごかったです」


「ん……何が?」


「さっき……私はあの人たちが怖くて、恐ろしくて、動くことすら出来ませんでした。でも、おねーさんだけは違いました……。ほんと……すごすぎますよ」


「そう……かな?」



 家につくなり、冥は蒼華の事を俯きながらも褒めていた。

 素直に、すごいと思っていたのだ。


 するとそれに同意するように、頷きながら悠が言った。



「確かに、さっきのあの“パレッツ”とかいう二人組……あの二人が放っていたオーラのような物は尋常じゃありませんでした……。動くことすらままならないような、それだけ強大な威圧感……あの風貌からは想像もできないくらいの力が感じられて……情けないですが、男の自分ですらかなりの恐怖心を覚えましたね」


「ほんと、貴女ってどういう神経してるのかしらね」



 麗もうんうんと頷きながら同意していた。



「ちょっと! 褒めるのか貶すのか、どっちかにしてよ!!」


「ふふ……」


「はは……」


「…………」



 蒼華の渾身のツッコミも、いつもの賑やかしも、今はまったくの効力を持たなかった。

 やはり、事態は急を要するのだ。


 いつも通りの……この世界に来て、少し経ったあの頃の時のような、平和な日常。あれを取り戻すには、やはり紅蓮と奏は必要なのだ。



「―――とりあえず、今私たちが持っている情報を整理して、今後どうしていくかを決めよう?」


「……ええ、そうしましょう」


「先程の、“パレッツ”と名乗る者たちとの会話で分かった事もいくつかありましたね」


「うん。まずは一旦、それを分かりやすくまとめてみよう!」



 かくして。

 蒼華たちは、いつも以上に真剣に、深く集中してこれからの方針を決めようとしていた。




「まず、最初に現れた《双翼そうよく爪牙そうが》とかいう二人組。クロウと名乗る武闘派の男と、ファングと名乗る水魔法を使う男……あの二人は、どうやら私たちの事を知っているみたいだったね」


「ええ。一瞬だったけど、奴らは確かにこう言っていたわ。『“召喚者”の中でも、抜きん出た才能を持ったエリート』ってね」


「あの二人は、僕らが“召喚者”であるという事を知っているだけでなく、“召喚者”が何人もいることや、その中でも僕らだけが抜きん出た才能を持っていた事を知っている、という点は確かに不可解ですね」


「スパイとか、そういうのじゃないんだったら……私たちの事をそこまで知ってるってことは、多分……そういうこと、ですよね? おねーさん」


「うん、そうだね。あの時―――私たちが召喚されて間もない時、あの神殿にいた人たちか、その後に行った王城の人たちくらいしか知らないだろうね」


「そして、僕らの事を“忌々しい召喚者ども”と呼んでいた点も気になります」


「―――つまり。《双翼の爪牙》と名乗る二人組は、私たちの事を召喚者と知っていて、尚かつ抜きん出た才能を持っている事を恨んでいる人が正体ってことだから……」



 そこで、四人は一つの結論に辿り着いていた。



「―――クラスメイト……それしか、考えられないかな」



 同じく召喚されてこの世界にやってきた、紅蓮や奏のクラスメイトたち。今この場にいる四人にとってはまったく縁が無い者たちの集まりだったが……恨まれるには十分すぎる理由を蒼華たちは持っていた。



「そして次にやってきたのは、“パレッツ”と名乗る二人組だね」


「ええ。でも、あの二人の言動から考えるに、きっとその“パレッツ”というグループは、あの二人以外にもいるのでしょうね」


「そして、最後に蒼華さんが聞いたあの質問の答え……『二人の少年少女を探している』って言ってましたね」


「その後に、闇属性がどうこう〜とも言ってましたね!」


「うん。そして、それを口止めしていた“メリさん”っていう人物の事も分かったね」



 一つ一つ、丁寧に、線と線を繋ぎ合わせていくように情報を整理していく。

 するとこちらもまた、とある一つの推測に辿り着く。



「……メリさん。二人の少年少女。そしてその内の女の子の方は、恐らく闇属性の魔法の使い手」


「……偶然では、無いでしょうね」



 そう。これらの情報が指し示しているのは、信じたくもない結論。しかし、それでいて希望に満ちている結論だったのだ。




「メリドさんと、紅蓮と奏ちゃん。“パレッツ”と名乗るグループは、きっとその三人と何か繋がりがある……」


「そして、“双翼の爪牙”の二人は、恐らく後輩くんたちのクラスメイトに何か手がかりがあるわね」


「やっと……見えてきましたね」


「そうだね、お兄ちゃん」



 単なる偶然が重なっただけかもしれない。

 だけど、その偶然が。神様が味方してくれると言うのならば。


 たった今見つかった、この地獄に垂れてきた一本の蜘蛛の糸を掴まない訳にはいかないだろう。



「―――行くよ、皆。なんとしてもこのチャンス、逃す訳には行かないからね!」


「ええ!」

「はい!」

「うんっ!!」




 そうして。一度、底知れぬ絶望の闇に突き落とされた蒼華たちは、再び希望が見えたことで再起し、行動を開始しようとしていた。


 まずは、“パレッツ”と名乗る謎の二人組の調査。

 そこで、何としても尻尾を掴んでみせると、そう強く意気込んだ四人は、一度しっかりとした休息を取るべく、それぞれの部屋へと戻っていくのであった。


命からがら!

少しでも面白いと思っていただけたなら、ブックマークや高評価を何卒よろしくお願いします!モチベーションの向上に繋がりますので!


さて、目的を見失ってしばらく三人称視点で物語を進めていましたが、次回からは一人称視点メインで行きたいと思います!


そしてそんな次回は、サイケリと桜花によって連れ去られた主人公・紅蓮が蘇る回になります!(盛大なネタバレ)

次回36.不死鳥の体と機械の心。

お楽しみに〜!


次回更新予定日→9(金)

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