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4.不思議な剣と契約した。

―――少年が求めたのは、力。

  彼女が求めたのは―――?





「きょっ、おもつっるぎをみっがくぞぉ〜♪」



 ウキウキと俺は“宿屋”から飛び出し、数日前に見つけたあの遺跡へと足を運んでいた。

 目的はもちろんあの綺麗な剣の為だ。





 ―――あの豪雨の日、俺は雨が止んだタイミングで言われていた寮舎へと行ってみた。

 そこではクラスメイト達が既に普通に生活していて、支給された装備品やお金を見ながら今後についての話をしていたのだが。


 どうやら俺はもうクラスメイト達からも忌み子扱いされてしまっているようで、寮舎に俺の居場所は無く、支給された装備品は革装備のゴミ、しかも支給金は宿屋で一週間泊まれるくらいの分しか無かった。



 ちなみにこの国の通貨単位は、どういう訳か日本と同じく“円”で、言語も俺たちが普段馴染み深く使っている“日本語”だった。

 一応考察してみたが、可能性としては2つ。


 1つは本当にこの国の通貨や言語が俺たちの住んでいた日本と同じパターン。

 そしてもう1つは、俺たちに都合の良いように謎の力で翻訳されているパターン。


 まあ、考えても可能性はこれくらいだ。

 今後何処か、図書館のような場所でも探して調べてみないことには真相は分からないままなんだが。



 さて、話は脱線したが。

 俺はそんな居心地の悪い寮舎を飛び出して、3日間だけ宿屋に泊まることにした。

 そして残った金額で、あの剣を磨く道具を買うために使うことに。


 そうして掃除道具を買い、宿屋に泊まりながらあの綺麗な剣を磨くこと、早2日。

 今日で剣磨き3日目だが、遂に今日、それが終わりそうなのだ!


 ―――宿屋生活も今日で終わりなのだが。



(これからは野宿生活か〜……)



 なんて今後に軽く絶望しながらも、俺はあの遺跡へと到着した。



「さて、頑張るぞ〜!」





「はぁ、ハンター……ですか」


「ウム。今のそなたらの金策、だな」



 再び城に集められた影咲達は、そこでペイン国王からの説明を受けていた。



「今はまだ我々の援助があるから金銭的には余裕があるだろう。だが、今後我々が援助出来なくなった時のために……そしてそなたらの戦闘訓練のために“ハンター協会”での登録を勧めようと思う」



 この世界では、“闘気オーラ”や“魔力マナ”を操りながら依頼された仕事をこなす人たちの事を“ハンター”と呼んでいた。

 その依頼の幅は、ペット探しから果てはドラゴン退治まで。


 当然こなした依頼の難易度につき報酬が上がったり、ランクが上がったりする。



 ランク……。

 ランクとは、ハンターの中での“階級”を表す物として使用されている物。決して身分を表しているものでは無く、己の実力を表す物となる。


 最高ランクはS。最低ランクはFだ。

 参考までに、Fランクに相当する者の能力数値の平均は30程度。Sになるのには200は必要なのだとか。

 現在トップランカー達は、500ポイント前後らしい。

 しかしそれも数十年やってそのポイントだ。どれだけキツイのかはそれだけで想像がつく事だろう。



「と、言う訳で数値100を叩き出したそなたら5人は勿論、他の皆もハンター登録をして、戦闘経験を積むといい。

 もちろん、こちらである程度の戦闘知識は教えるつもりだがな」



 当然、と言った様子でそう言う国王。

 影咲たちは全員、その言葉を聞いて決心した。


 とりあえず、ハンターになろう……と。



「―――それにしても、あのゴミは消えたか。フン、腰抜けめ……あんな奴を生かしておくのも勿体ない」



「……ッ」「……」

「……」「……」「……」



 国王は、消えた腰抜け―――紅蓮の事をそう評価し呟いた。

 しかし、それは数値100を叩き出した逸材達を知らずに怒らせていたのだ。



「まあ良い。それではこの後は戦闘訓練を―――」







「へっくし! うー……だいぶ冷えてきたな―――って、もう夜かよ!?」



 空を見上げると、知らぬ間に夜になってしまっていた。

 今から宿に戻っても、もう時間的に厳しいかもしれない。


 幸い、荷物は俺には無いのでもう一度わざわざ荷物を取りに戻る必要は無いのだが……。



「今はこうしてお前を磨く事だけが生きがいだよ……」



 一人、そう呟きながら俺は悲しくなる。

 しかしいいのだ。この3日間、俺はこの剣を磨くことで精神を安定させていたのだから!


 ―――何かに、夢中になっている時だけは……自分を忘れられて良かった。



「うし……こんなモンかな!」



 研磨剤までちゃんとかけて、ツルツルピカピカにしてやった剣を眺めながら俺はそう呟いた。

 そのまま俺は星空に向けて剣を掲げ、その輝きを楽しむことに。



「―――やっぱ、綺麗だな。お前」



 星空の光に当てられて、俺の磨き上げた剣―――勝手に“桜花おうか”なんて名前を付けてみたのだが、そんな“桜花”はとっても綺麗に輝いていた。


 最近……というか名前を付けたのはつい先日の事なのだが、その名前を付ける時、剣が桜色に輝いて……それで咄嗟に“桜花”って名前が思いついて。

 だからそう名付けたのだ。


 もしかしたら、もう既にちゃんとした名前が存在してるかもしれないがな。



「本当に……綺麗……だな」



 ツー……ポタッ―――。


 気づけば、俺は涙を流していた。

 何でだろう。“桜花コイツ”を見てると、なんか安心してきて……これまでの俺の事とか……思い出してきて……。


(ダメだダメだ。何弱気になってんだ俺は……!)




―――『何故お前は泣いているのだ?』




「そりゃ……俺が惨めな奴だからだよ」




―――『惨めだと? お前のような素晴らしい人格の持ち主がか?』




「そんな褒めんなって。別に俺は大した―――に……んげ……ん……じゃ―――」


(え? 俺、今誰と喋って……?)




―――『ワタシだ! おうか、なのだ!』


(へ……? おうか、って―――“桜花”なのか!?)




―――『うむ! 如何にもワタシが“おうか”なのだ!』



 そんな声が剣から聞こえて、かと思えば剣―――“桜花”はひとりでに動き出した。



「うわぁっ……!」



 オカルト現象、というやつだろうか。

 “桜花”は喋っただけではなく、どういう訳か俺の前でふわふわと浮いているのだ。



『うむ、驚くのも無理はないだろう! でも正真正銘、ワタシは“おうか”なのだ! あの日、ワタシにそう名付けてくれたあの日から、ずっとこの機会を待っていたのだ!』


「名付けてくれた、あの日……?」



 そう言えば。

 あの日に桜色に輝いたから“桜花”って名付けたんだったな。

 もしかして、そういう反応を示したのもこの声の主が宿っていたからか……?



『そうなのだ! 今まで放置されていたワタシを綺麗にしてくれてありがとう! ぐれん!』


「い、いや……別にそれほどでもないよ」


『いいや、それほどでもあるのだ! ぐれんが毎日ワタシを磨いてくれたから、こうして今、お前と話ができているのだからな!』


「そ、そうなのか……?」


『うむ! ぐれんが綺麗にしてくれたお陰でワタシの本来の力が少しだけ戻ってきたのだ! だからこうしてぐれんともお話ができているのだ!』



 “桜花”はぶんぶんと回転しながらそう感謝を伝えてくれる。

 そんな異常な光景だが、俺は素直に感謝された事が嬉しくて、また涙を零してしまっていた。



『あわわわ、何故泣いているのだ! すまない、ワタシが何か変なことを言ってしまったか!?』


「あはは、全然違うよ。俺が、俺の行動が感謝される日が来るなんて思いもしなかったからさ」


『そ、そうなのか。でも、やはりぐれん……お前はどうにも自分に自信が無いように見えるのだ。何があったか話してみるといいのだ』


「何が……あったか、か。―――じゃあ、聞いてくれよ。俺の、話を」


『うむ。なんでも話してみるのだ』



 “桜花”はそう言うと、俺の話を最後まで聞いてくれた。

 クラスではぼっちだった事、この世界に召喚されて、無能なのが分かって、そして仲間たちから忌み子扱いされた事。

 そして俺に、戦闘能力も知識も無いこと。


 ―――“桜花”を磨くことだけが、生きがいになってしまったこと。


 全部、全部洗いざらい話した。

 どうしてか、“桜花”なら信頼できたから。



『ゔっ……うぁぁぁぁぁぁん! ぐれん、ぐれん! お前はなんと悲しい人間なのだぁぁ! 酷い、酷すぎるのだぁぁぁっ!』



 話を聞き終えた桜花は、こんな感じで号泣してしまったが。



「どうせ、こうなる運命だったんだよ。こうしてお前も元の力を取り戻せた訳だし、俺の役目はここでお終いだ」



 野宿生活で飢え死に―――

 そんな未来が妥当な落ちどころだろう。



『ぐれん……』


「話を聞いてくれて、ありがとうな。でも、もうお別れだ。俺にはもう、存在価値が無くなってしまったから」



 姉ちゃんたちには見放され、恋心も叶うこと無く、両親すら居ない。こんな俺に残っている物なんて、もうきっとない。

 訓練した所で、俺に活躍の場なんてきっとこない。


 ―――生きる価値なんて、もう俺には無い。



「じゃあな、桜花。また、生きてたら会おうな」


『生き……っ?! ―――待つのだ!』



 今までより迫力のある声で俺を呼び止めた桜花。

 そんな桜花に引き止められて、俺は振り返った。



「どうしたんだ?」


『―――存在価値が無いと言ったな?』


「あ、ああ。もう、生きている価値なんて俺には……」




『なら! ワタシがお前に存在価値も、生きる価値も与えてやるのだ!』




「お前……が?」


『ああ! ワタシと、契約しよう!』


「けい……やく?」



 一体、桜花コイツは何を言って―――




『ワタシが求めるのは、お前だ……ぐれん! そして、ワタシが与えるのは―――力だ!』




 その言葉を聞いたとき。

 俺は迷わず“桜花”を手に取った。


 そして―――



「―――その契約、乗った!」


『うむ! これで契約成立なのだ!!』




 こうして、俺と不思議な剣“桜花”は互いの利益の為に契約を成立させたのだった。


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【ランク】

S.200

A.120

B.100

C.80

D.60

E.40

F.30

【補足】

・ランクの初期はハンターたちの活動の活発化を促す為に、少ない数値でランクアップが出来るようになっている。

・能力数値は、高ければ高いほど上がりにくくなる。(経験値のような物)

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