幕間4 《十ノ色》と死の闇
色とりどりなメンツが揃ってます。
「―――クロカゲ、ただいま帰還した。誰か至急応答を求む!」
とある場所まで辿り着いていたクロカゲは、すぐに大声をあげた。もっとも、誰も返事をする訳が無いのだが。
何故ならば、クロカゲの所属する《十ノ色》は良くも悪くも奇想天外なメンバーばかりが集まる不思議な集団だったからだ。
「やはりか……無能共が」
こうなる事を頭の片隅で想像していたクロカゲは、一人愚痴を呟きながらさらに足を進めた。
急がねば、取り返しのつかない事になってしまう。そうなる前に、早く“実験”を開始しなければならなかった。
現在の《十ノ色》を、直接操っているメリドの命令だ。
当然、失敗する訳にはいかなかった。
「急ぎ、彼女を蘇生せねば―――」
―――影咲奏。異世界から召喚された、“召喚者”にして、それ以外には何の変哲もないただの少女。
クロカゲやメリドを守って、腹に大穴を開けて死んでしまった少女。
そして。
「―――闇の魔力をもった少女……死なせてたまるか!」
クロカゲたちにとって、とても大切な“力”を持った少女だった。
“実験”を行う場所へ向かう足が、次第に早まっていくのが分かる。クロカゲは焦っていた。何としても彼女を死なせる訳にはいかなかったからだ。
すると、それを不思議に思ったのか、はたまた面白く思ったのか。とある人物がクロカゲへと声をかけた。
「―――ねーねークロカゲ。キミが抱えてるその子、一体なんなのー? まさか、誘拐してきたとかじゃないよね―??」
「……“キサメ”か。メリドからの命令だ。別に攫ってきた訳じゃない」
「ふーん。メリド様からの命令かぁ……。で? その命令って?」
「気になるなら付いて来い。ここで活躍できれば、奴に認めてもらえるかもしれないぞ」
「えっ!? なになに、そんなに重要な任務だったの?!」
「ああ。何せコイツは、我々が求めている“闇の魔力”の持ち主なのだからな」
クロカゲは、抱えた影咲の体をそっと撫でると、その身体に宿る微かな闇の魔力を感じながらそう呟いた。
すると、キサメと呼ばれた無垢そうな少年は笑って言った。
「あははっ!! それなら僕も協力するよー! メリド様に認めてもらえるなんて、相当すごいことだからねー!!」
「感謝する。正直お前の“雷”の力が無いと、実験は厳しいと思っていたから素直に助かるぞ」
「うえっ……別にクロカゲみたいなおっさんに感謝される為にやるんじゃないんだからね?」
右手で口元を押さえて、何やら吐きそうにそう答えたキサメ。
残った左手からは、威圧するかのような電気がクロカゲを狙っていた。
《十ノ色》、【黄】担当の“キサメ”。
小さな見た目からは想像もできないくらいの雷電を放つ純真無垢な少年だ。
「―――おい、待て」
すると。
さらにクロカゲたちを呼ぶ声が一つ。
「待たん。気になるなら勝手に付いて来い」
しかしそれに背くクロカゲ。
“実験”用の施設まで、足を止めるつもりはないようだった。
「チッ。だがまあいい、話は聞かせてもらった。我も同行しよう」
《十ノ色》、【青】担当の“アオギリ”。
忍者のような風貌だが、巨人のように身体が大きい男だ。クールで冷静で、どこかストーカー気質のあるアオギリは、クロカゲとキサメの話を既に聞いていた。
だからこそ、実験の成功率を少しでも上げるために同行しているのだ。
「ところで他の者は?」
「んー? えっとね……分かんないや!」
「アオギリは分かるか?」
「そうだな……我はずっとメリド様の帰りを待っていた故、他の者が今何をしているかは分からん。だが、魔力から位置は把握できるが故、呼ぼうと思えば我が分身に頼んで呼んでくるが。どうするか?」
「そうか。ならば呼んでおいてくれ。これは、我々にとって重大な任務なのだからな」
「了解した」
クロカゲの頼みに頷いて答えるアオギリ。
彼はすぐに“水属性”の魔法の一種、“霧”を使って自分の分身体を作り出す魔法で他の《十ノ色》の仲間たちを呼びに行かせた。
「ねーねー! そんな事よりさ、そのおっきい穴の空いた子。もしかして僕たちの仲間になるのかな?」
「さてな。全ては奴の判断次第だ。だが、その判断も、我々がこれから行う実験の結果次第では変わってくるだろう」
「フム。それほど重要な物なのか。ならば尚更他の者たちの力は必要だな」
「―――アァッ!!? 一体全体どうしたってんだッ!!」
と、そこに突然現れたのは、一人の炎を纏った獣人の青年だった。彼は空中から、高速で現れたのだ。
「やっほー“アカギ”! 今日も元気だねー!!」
「おうキサメッ! ―――って、そういう話をしにきたんじゃねェぞ! クロカゲ、アオギリ! どういう事だこれはァッ!!」
《十ノ色》、【赤】担当の“アカギ”。
上半身裸で、龍のような獣人族のワイルドな青年。それがアカギだ。
「どういう事だ……とはどういう事だ?」
クロカゲはそんなアカギの問いかけに、早足で歩きながら聞き返した。すると。
「いや、そいつ。アオギリの分身に話を聞いたが、マジで闇の魔力を持っていやがるのか? なのになんでそんな大怪我してんだよ! てかそいつ死んでね? おいおいおーい!! どういう事だァァ!!」
「……騒々しいな貴様は」
「テメェゴラアオギリ! オメェは黙ってろアホ!」
「……どちらも対して変わらんだろ。うるさいぞ」
「こいつよりかはマシだッ!!!」
怒鳴り超えが、シンクロした。
と、そんな怒声の浴びせ合いをアカギとアオギリがしていると。
「―――ちょっとちょっとうるさいわよ! なんなの? 呼ばれてきてみればこんな馬鹿騒ぎして……!」
「ああ、モモカか。よく来てくれたな」
《十ノ色》、【桃】担当“モモカ”。
一見すると魔女のような姿格好だが、マジものの魔女だ。ちなみに年齢は永遠の17歳。
「それで? その死体が今回の実験対象ね」
「ああ。闇の魔力を持っている者だ」
「そ。なら今回こそは成功させないとね」
「ああ。もちろんだとも。だからこそこうしてお前たちを全員集めようとしているのだからな」
さて―――そう呟いたクロカゲは、目的地へと辿り着いていた。
中からはいくつかの魔力の気配がある。つまりは既に何人かがこの部屋に居るのだろう。
『実験室』。名前の通り、実験用の施設へと辿り着いたクロカゲたち《十ノ色》は、早速中へと入っていった。
「―――フム。お前たち、残りの二人は何処にいる?」
そう言ってクロカゲが話しかけたのは、三人の仲間たちだった。
「知らないのぉ…………まぁ、儂が知ったっこちゃないわ……」
そう呑気にお茶を飲みながら答えたのは、《十ノ色》【白】担当の“ハクア”だ。
見た目こそよぼよぼの老人だが、その実年齢はまさかの10代という驚異の若さであり、これは相手を油断させるための罠として使っている魔法の効果なのだとか。
「ふはははは! ハクアは呑気だなぁ! む、クロカゲさん! その少女の死体が今回の主役ですね!?」
なんて元気に話しかけたのは、《十ノ色》【金】担当の“キンガ”だ。
金ピカで派手な服を着ている青年で、見た目から反応から、何から何まで元気でキラキラしてる金ピカマン。それがキンガだった。
「うるせぇ兄さん黙れカス殺すぞゴミが」
と、そんなキンガとは対象的なこの少年は、《十ノ色》【銀】担当の“ギンガ”だ。
言動からも分かるように、ギンガは地味な服で地味な見た目で、陰湿な言葉を吐き散らかすのが得意な陰気な少年だった。
キンガが陽なら、ギンガは陰。
二人はそんな関係性だったのだ。
「ああ、集まってくれてありがとう。で、【緑】と【紫】はどうした?」
「ああ、あいつらですか!! それなら奥の部屋で、【紫】が【緑】の調教をしてるはずですよ!!」
「ちょう―――あー、だいぶ理解したからもういいぞ」
クロカゲは遠い目をしながらキンガに礼を告げた。
そして、部屋の中央にあるベッドに抱えていた影咲の死体を寝かせると。
「さて。それではこれから、闇の魔力の保持者、“影咲奏”の改造を行う」
「また、あの方向性でいいのかしら?」
「ああ。そのつもりだ」
「それって、また魔人化させる実験ってことー??? やったー!!!」
「魔人化……フム。成功させることができればメリド様に認めてもらえる……!!」
「ほっほっほ……ま、一度も成功したことはないがな」
「うおおおおおおお!!! ハクア! 大丈夫だ! こういう時こそ成功させることができるんだァァァ!!!!」
「だから煩えよバカ兄貴。黙れ死ねゴミカスクズ人間が」
「ダーッハッハッハッハッ!!! 安心しろテメェら! このアカギ様がいれば、心配御無用だぜェッ!!」
「ほっほっほ……とか言っておいて、いっつもお前のせいで失敗しとるがの」
「黙れよ……クソジジイッ!!」
「―――黙れッ!!!」
場が温まって来たところで、クロカゲがそれを一喝した。
「これから行うのは、我々の今後に関わる重要な実験……もとい人命救助なのだ。失敗は許されない―――失敗すれば、奴に消されるかもしれない。
これは、我々の目的である“新たな国を創り上げ、どんな種族でも平和に暮らせる世界を築き上げる”という大きな大きな目標の、第一歩になりうる作戦なのだぞ!
いいか。我ら《十ノ色》は、奴……メリドに拾ってもらった恩がある。奴の大いなる願いを叶えるために、我らはいるのだ。その事をしっかりと心に留め、その上で今回の任務を遂行する事。いいなッ!?」
『了解ッ!!!』
全ては、自分の為。
全ては、世界の為。
彼らは、“死した闇”と戦う。
その命を、再び現世へと呼び戻す為に。
ブックマークや高評価を何卒よろしくお願いします!!
次回更新予定→27日(日)
次回から、遂に新章突入です。
紅蓮を失った蒼華たちは、メリドから影咲が死んでしまった事を告げられ―――




