幕間3 死神の誘い
―――死神は嗤う。少年の、行く末は……
◆
―――フフフ……まだ、死なせはせんさ。ようやく見つけた“適合者”だからな。
◆
目が覚めた時、俺は暗くて寒い―――だけど何故か安心感のある、真っ暗な空間に居た。
「(ここは……何処だ?)」
何にも思い出せない。
今の俺にあるのは、“虚無”。そう。何も無いのだ。
―――何故か。知りたいか?
「(お前は……あの時の……?)」
目の前には、何かが居るようだった。
暗くて一寸先も見えない。だが、確かにその声は近くに“あった”。
俺はそいつに問いかける。
「ああ。教えてくれ」
―――いいだろう。これが、お前が体験した出来事の、全てだ。
そう、告げられた直後の事だった。
俺の脳内には、沢山の情報が流れ込んできていた。
この世界に来たときのこと。
俺に。俺だけに才能が現れなかったこと。
相棒が出来たこと。
大切な人の為に命を張ったこと。
相棒が連れ去られたこと。
相棒の為に、命を落としたこと。
それを死神に助けられたこと。
姉ちゃんたちが居なくなったこと。
獣人の国に行ったこと。
奴隷の少女を救って大怪我を負ったこと。
そして―――
「―――そう……か。……俺は、桜花たちを庇って……死んだのか……っ!」
―――ああ、お前は再び“死”を体験した。
「ぅ……あ……ま、また俺は……死んで……っ!」
―――そう怯えるな。安心するといい。我がお前を死なせはせん。それは誓おう。絶対に、だ。
「ほ、本当……か? 俺はまた……あの世界に戻れるのか……?」
―――ああ。前にも一度言っただろう? お前の寿命を代償に、一時的に神をも超える力を与えてやる、とな。
「そうか……その力で、俺はまた蘇れるのか……」
―――だが、それは本当にお前が死んでいた場合の話だ。
「……どういう、事だ? 俺は、死んだんじゃないのか? さっきお前は、確かにそう言ってたはずだが……」
―――ああ、確かにお前は一度“死んだ”。だが、その場に居た者のせい……というかお陰だろうな。お前は、“蘇生”されたんだよ。死んで、すぐにな。
「蘇生……だと!? でもあの時、俺の近くには誰も居なかったはずだが……」
―――理由は見てないから知らん。だが、お前は今、生きている。だから、我の力を使うことはできないのだ。
「それじゃあ……俺はどうしてここに?」
―――フフフ、当然の疑問だな。ならば答えよう。
死神は、俺の疑問に答えた。
―――今お前は、確かに生きてはいる。だが、死にかけているのも確かだ。完全な蘇生が出来ていないみたいだからな。生命力が、尽きかけているんだよ。
「……死にかけの状態、ってそのまんまの状態な訳だな」
―――ああ。そして今、お前は二つの選択肢の前に立っている。
「二つの……選択肢?」
―――そうだ。お前の、今後の行く末だよ。
「俺……これ以上まだどうにかなるって言うのかよ……!?」
―――まあ、死にかけだからな。当然といえば当然だろう。
「そ、それで……? 俺にはどんな選択肢があるんだ?」
―――一つは、その身に“死”を纏う事。
「死を、纏う?」
―――そう。死を纏う……つまりは、“生きた死者”になるという事だ。
「ちょっと、待ってくれ。何を言っているか全然分からないんだが……」
―――分かりやすく言えば、“アンデッド”になる。
「アンデッド……ってことはゾンビか。ゾンビ……ゾンビ……ってマジかよ!? それって俺死んでるじゃんか!」
―――まあ、確かにな。
「そ、それで? 二つ目は何なんだ?」
―――二つ目の選択肢。それは、機械との融合体になる事、だ。
「機械と……融合?」
―――つまり改造人間だ。
「嘘……だろ。俺が、機械の人間に……?」
―――どういう理由でそうなったかは知らないが、今お前の前にはその二つの選択肢がある。そして、そのどちらかを選ばなければ、お前は寿命を削って、我が力を発動させる事で今まで通りに生活が出来るだろう。
「な、ならそのほうが良いに―――」
―――しかし、疑われるだろうな。何せ、死にかけが一瞬で元通りになるんだから。機械化を果たそうとしているという事は、技術者やそういった才能のある者が近くにいるのだろう。当然その者にはいい研究対象になってしまうかもな。
「そ、それは……」
―――さあ、どうする。最後に選ぶのは、お前の意志だ。意志によって、全ては決定されるのだから。
「……お、れは……」
―――どうやら、そろそろ時間みたいだ。生者の空間には長く居られないのが死神だからな。
「お、おい! 待って―――」
―――ではな。また、お前が死と邂逅した時に会おう。フフフ……フハハハハハッ!!
そう言って、死神は高笑いと共に消えていってしまった。
それと同時に、俺の視界も徐々に揺らぎ始める。
「(俺が、どうなりたいか……? そんなの、決まってるだろ―――)」
そして、一つの決意を固めると。
「俺は、皆のもとに―――」
黒く染まる視界に、身を委ねるのだった。
次回、幕間4 十ノ色と死の闇
メリドの命令で、影咲の死体を持って去っていったクロキリ―――ことクロカゲ。彼が向かった先で行われていた実験とは―――
次回は来週22日(火曜)の更新となります。
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