31.【白熱】黒き機人VS二人の闘士【戦ってみた】
―――少女たちは逆転するも……
《研究室》
「……これはッ!」
「戻って、すぐに報告したほうがいいみたいね」
「はい……! このままじゃ、紅蓮が……ッ!!」
研究室で見つけた3枚のメモ。
その内の一枚に書かれていたのだ。“緋神紅蓮”を、機体の核に使っていると。
このままでは、先に地下に向かった蒼華たちが危うい。
早めにこの事実を伝えて、どうにか対処法を考えなくては……。
そう考えた悠と麗は、即座にメモを持って地下へと向かっていった。
「(頼む……間に合ってくれ―――)」
◆
《B6F 黒き機人の間》
『へ、ヘェ……やるじゃないか。ただのガキだと思っていたが、どうやらそれは間違っていたようだな』
「あら、評価を改めてくれるのは大いに感謝したいわね。だけど、見てなさい。今からもっと凄い物を見せてあげるからっ……!!」
そう叫ぶと、蒼華は黒き機人に向かって一直線に駆け出した。何の小細工も無しに飛び出したのだ。
『ハッ、馬鹿かテメーはよォッ!! やれ……“グレン”ッ! 相手がガキだろうと容赦はすんなよッ!!』
それに即座に対応した“グレン”は、黒いレイピア状の剣を高速で突き出してくる。
「はんっ! 対剣戦は何度もやって来たのよ……こちとら、半端な覚悟で武術を学んでた訳じゃないからねッ!! はぁっ……!!」
しかし。ガキィンッ!!という豪快な金属音が再び響き、グレンの突き出した剣は蒼華によっていなされてしまった。
『チッ……拳で剣を受け流したか。なかなかやるじゃないか―――だが、この程度で終わる私の傑作ではないぞッ!! 行けぇっ!! グレン!!』
「ッ! ―――冥ッ! 来るよ!」
「は、はいっ!!」
グレンに詰め寄る蒼華だが、対するグレンはその俊敏性を活かして蒼華との距離を常に一定に保ったまま剣で仕掛けてきていた。
蒼華に続く冥も、この状況に対応しきれず、常に前方を走る蒼華に全て任せっきりな状態だった。
「どうにかしてお姉さんが仕掛けられるような状況を作り出せれば……!」
「冥ッ! 右に飛んでッ!」
「右―――ッ!!!」
レイピアを横凪にしてきたグレン。
どうやら敵機は、その武器の利点をしっかりと理解しているらしく、かなり厄介な相手だった。
「くっ……なかなか攻められないね……!」
「はい……どうにかして懐まで潜り込みたいところですけど……。残念な事に私達二人じゃ遠距離攻撃は全く出来ません」
「そうだね。せめて魔法さえ使えれば良かったんだけど……!」
魔法が使えない二人にとって、こういう戦い方を理解している敵は強敵と言わざるを得なかったのだ。
当然向こうも戦い方を理解していると言うことは、攻撃の手を緩めるはずもなく―――
『ハッハハー!!! おいおいどうしたよガキ共ォッ!? さっきまでの威勢はどうした、なァオイ!』
「うっさいわね! 今から反撃するところなのよ!」
「そうだそうだー!」
『ァ? そうかよ……ならやってみやがれ。行け、グレン―――奴らを仕留めろッ!!!』
紫色の瞳を光らせて、再びグレンは詰め寄ってくる。
―――いや、詰め寄って来たのだ。
「……お姉さん」
「うん、分かってるよ」
『おいおいどうしたよォッ! 棒立ちかァ? ならいいや、そのまま死ねやァッ!!!』
勝てると確信したグレンは、指示を受けてギリギリまで蒼華達に詰め寄る。そして、構えたレイピアを一気に引くと―――
『穿てェェッ!!!』
そのまま勢い良く前に突き出したのだ。
「ふふ―――」
『―――なッ……!! 何処に……何処に消えたッ!?』
しかし。
攻撃対象であった蒼華と冥は、その場から姿を消していた。それは、一瞬の事だった。
「勝てると思った瞬間に、馬鹿になるなんてね。どうやらこの機体を操っているのは相当なお馬鹿さんみたいだね―――」
「ですね! 馬鹿なら―――私達だけで簡単に仕留められますッ!」
『ふ……ふざけた事を言うなよこのガキ共がァッ……!!!』
再びグレンはレイピアを構えた。
しかし、依然として蒼華たちはその視界には映らない。
『どういう……事だ! どこに隠れたッ!!』
「そんなのも分からないなんて、ホントに視界が狭いんだね」
「ぷぷー! これじゃあまるでセンパイみたいですっ!」
そう冗漫混じりに煽りながら、蒼華たちはそこで構えた。
強い、強い一撃を放つ為に。
『チッ……見えないなら……グレン! 飛んで攻撃を避けろッ!』
「させないよ―――」
「だって飛ばれたら……バレちゃいますから!!」
『―――なっ……まさかそんな所にッ!?』
そう。蒼華たちが隠れていたのは―――
「懐だよ。灯台下暗し……ってね!!!」
「ふぃすとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ガッシャァァァァァァァン!!!
と派手な轟音を立てて、グレンの機体は大きく打ち上がった。
「技名―――そうね。言うなれば“スマッシュアッパー”、かな!」
「さあ、一気に畳み掛けますよお姉さん!!」
「ええ!!」
無防備な状態で打ち上がったグレンは、まだ宙に浮かんだままだ。しかしその大きさと重さによって、すぐに落下してしまうだろう。
―――畳み掛けるなら、今がチャンスだ。
『クソ……早く元に戻れグレンッ!!!』
「だからさせないって……やっと訪れたチャンスなんだからさっ!!!」
「行きます……やぁっ!!」
冥は、足に力を込めると一気に飛び上がった。
ここからが蒼華と冥の、武闘派コンビの真髄だ。相手が行動不能に追い込まれた後の、畳み掛け―――その、無言の意思疎通の強さの頭角が現れる時なのだ。
「いっくよぉぉ!!」
足に力を込めると、冥はそのまま勢い良くグレンの腹を蹴り上げた。
「ナイスだよ冥!」
「全然ですよ! そんな事よりほら、早く追撃を!」
「了解……っと!!」
冥の、闘気が込められた渾身の蹴りによって、グレンは再び高く打ち上げられる。
そこに追撃するのは、交代で飛び上がった蒼華だ。
「まずはダメージを稼ぐよ……ッ! ―――“踵落とし”ッ!」
グレンより高く飛び上がった蒼華は、高い位置から強烈な踵落としを繰り出す。
これを受けて、グレンはその機体に大ダメージを負いながら急速に落下していく。
『クソがッ!! 早く……早く何とかしやがれクソゴミ人間がッ!!! 俺の最高傑作がまた……しかも今度はこんな女のガキ共にやられてたまるかってんだよッ!!』
「残念ですけど……行動させるつもりはありませんよッ! もう一回―――“スマッシュアッパー”ッ!!」
ガン!!と冥の拳が再びグレンの腹に当たり、勢い良く高く打ち上げられる。そこに蒼華が再び合わせて飛び上がった。
「“踵落とし”ッ!」
ガァンッ!!と再三装甲が凹むような鈍い音が響き、急速にグレンは落下していく。
『クソ……クソクソクソクソクソクソ!!! ふざけるなよガキ共がぁっ!!!』
「ふふん、これが私達の力なのです! さて……もう一回―――」
『させる……かよォ……! ―――グレン! “バースト”だ!!』
「……ッ! 冥、一旦下がって!!」
「はいっ!!」
ここに来て、謎の声―――サイケリは新たな指示を出した。
“バースト”……この指示を受けたグレンは、落下する中で行動に出た。
「これは……!」
背中部分にある排気口の稼働をを一気にブーストさせる事で、爆発を起こし、攻撃や移動を行ってみせたのだ。
まさに博打……賭けの一手と言ったところか。
しかしこれにより、グレンは窮地を脱してしまった。
蒼華たちにとってはかなり不利な状況だ。何故ならば、また懐に入り込むチャンスが限りなく低くなってしまったから。
これもひとえに、あんなに煽ってしまったが為だろう。
「形勢逆転、かな?」
「……いいや、どうやら有利なのはまだ―――私達みたいですよ!」
だが。先程までの打撃が、思いの外グレンに効いていたようで。
『グレン……どうした!? おい、グレンッ!!』
「あの機体……少し無茶をしたせいでどうやらだいぶ厳しい状態にまで追い込めたみたいですよ、お姉さん」
「なら……まずは足から仕留めようか! そこさえ潰しちゃえば、あとは楽に終わりそうだからねっ!!」
「了解です!」
グレンは所々に損傷が見られ、既にその行動に支障をきたしていた。具体的には、だいぶ動きが鈍くなっていて、倒れかけの戦士……いや、不屈の闘志で立ち上がるプロレスラーと言ったほうが良いだろうか。
ともかく、よろけていたのだ。グレンは。
『クソ……何故だ! 何故だ何故だ何故だッ!!』
「さあ、諦めて姿を現しな! お馬鹿な人っ!!」
蒼華は、今度は足に闘気を込めると、グレンの足元を狙いながらスライディングをした。
これが決まれば、巨大な身体は一気に態勢を崩し、倒れ……そのままうまく破壊まで持っていけるかもしれないのだ。
この時、蒼華は勝利を確信していた。
態勢さえ崩してしまえば、あとはこちらの物だ。周りから増援の様子もない為、冥と二人で打撃を何度も打ち込めば機械の身体は完全に停止するだろう。
と。そう、思っていたのだが―――
「―――待って! 蒼華っ!!!!」
蒼華の足が、グレンの足をちょうど蹴った瞬間。
突如現れた、麗の声が、蒼華の追撃を止めていた。
「紅蓮ッ!!!」
悠の声が、今まで戦っていた機体の名前と一致する。
しかしこの感じは、やはり蒼華にとっては考えたくもない結論にたどり着いてしまう物であった。
グレンは、蒼華の蹴りをモロに喰らってしまい、その巨大を一気に傾かせ―――そのまま倒れてしまった。
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【緋神紅蓮 残存生命力30%】⇒自爆フェイズ移行推奨
【活動限界まで あと15分】⇒自爆フェイズ移行推奨
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今回は命からがらの更新
次回は次の金曜日か土曜日か日曜日に更新しま!!す!!!
なんか方向性おかしくなってきてる気がする




