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29.発明者の作戦変更。

―――少年は、黒き機体に。





《廃工場 B4F》



「そう……か」


「うん! 私は蒼華だよ―――って、いけない。皆とはぐれちゃったんだった!」



 いつもの、マイペースなテンションでそう慌てる蒼華。

 そんな彼女を見て、桜花はより一層焦りや恐怖心をその身に宿していた。


 まさか、自分たちをかばったせいで、弟が死んでしまった……なんて言える訳が無いから。



「コノヒト……ダレ?」


「こ、この人は……」



 言葉につまる桜花。

 しかし続きを答えたのは、桜花では無かった。



「―――私は緋神蒼華ひかみそうかって言います。仲間たちとはぐれちゃって、色々と調べてたら喧嘩するような声が聞こえたから来てみたら……キミたちに出会ったって流れだね」


「ヒカミ、ソウカ。オボエタ」


「それで? キミたちは? どうしてこんな所にいるのかな?」


「それは……」



 今度は蒼華の質問に言葉を詰まらせてしまう桜花。

 「どうしてここに居るか」という質問の答えは、恐らく誰に話しても非難されてしまう行動だったから、余計に言い出しづらかった。


 ましてや、紅蓮があんな事になった以上、絶対に。




「―――そっちには居たか!?」




 と、桜花が返事に困っていると近くからそんな声が聞こえた。

 逃げた桜花や蒼華たちのグループを探す獣人たちがすぐ近くまでやってきたようだった。



「んー、やっぱまだ居るか〜……。―――二人とも、ちょっと静かにしててね?」



 そう言って蒼華はすかさず物陰から飛び出していった。



「な、なんだ貴様は―――ぐぁっ!」

「ぐぁぁっ……!!」



 すると直後、二人の男性の倒れる音が聞こえて、再び蒼華は桜花たちの前に戻ってきた。

 ……蒼華は対人戦なら最強クラスの武術の使い手だ。だからきっと一瞬でボコボコにしたのだろう。



「んー、これで一応大丈夫だよ。それよりも、こんな所に長居するのはきっとまだ危険だから、早く地上まで戻らない?」


「そ、それは無理なのだ……」


「どうして? 何か目的とかあったりするのかな?」


「う……そ、それは……ちょっと……忘れ物を―――」




 ―――ドォォォォォォォォォォン…………!




 桜花がそこまで言いかけると、下の方からそんな地鳴りが響いてきた。さらに続けて、



「―――お姉さん! どこに居るんですかっ!?」


「蒼華さんっ!!」


「蒼華!!」



 近くからは蒼華を呼ぶ三つの声が聞こえてくる。



「あ、皆だ。お〜い! こっちだよ〜!!」



 呼ぶ声に反応して、こちらもまた大きな声で返事をする蒼華。

 しかしこんな通路で大声で会話をしていたら、敵にも気づかれてしまうのでは―――と若干冷静になった桜花は。



「あ、いたいた。お〜い、こっちこっち―――」



 ―――蒼華が、三人の人影を見つけて、そっちに意識を向けた瞬間。



「……アン、行くのだ」


「エッ、ウ、ウン」



 左側にあった下りの階段に向かって、全速力で駆け出したのだ。



「あっ、ちょっと! 二人とも!?」



 蒼華は手を伸ばすが、桜花たちには当然届かない。

 桜花たちは、地下五階へと足を踏み入れて行ったのだ。







「今のは……?」


「いや〜? 分からないけど、なんだか“迷子”? っぽい子たちだったけど……」



 あの少女が桜花だとはまだ気づいていない蒼華は、迷子の子たちだと思っていた。

 そして、そんな少女たちはたった今逃げるように地下へと向かって行ってしまったのだ。



「それにしてもあの口調……何処かで聞いたことあるような気がするなぁ……」



 蒼華の、記憶のどこかにある言葉。

 ただ忘れっぽい性格の蒼華にはその正体が何なのかはまだ分からなかった。



「って、あの子たち二人だけで大丈夫なのかな?!」


「今更ですかお姉さん……」


「い、いや色々あってびっくりしちゃってさ……」


「心配なら、助けに行きませんか? 先程ここより地下の方から地鳴りがしてましたし……」


「そうね。蒼華、決断するなら早い方がいいわよ」


「分かった。それじゃあ―――助けに行きましょうか!」



 幸いにも階段はすぐ側にある。

 これなら敵に襲われても問題はないはずだ。


 なんて思っていると。




「―――居たぞ! 脱獄者だ!」


「捕えろッ! 全弾砲火だァァッ!!!」




 先程蒼華が倒したのと同様の見回りの獣人兵たちが、大きな声に反応して多数駆けつけてきてしまい、蒼華たちは階段を背に、一瞬にして獣人たちと対峙する形になってしまった。



「くっ……面倒だね……」


「大人しく捕まっていろ、脱獄者共め!」


「そうはいかないのよ。―――凍てつきなさい。【氷結】!」


「ぐあっ……! 何だこれは……っ!!」



 迫りくる獣人に、麗が一つの魔法を放った。

 水属性の魔法で、放った魔力の弾に当たったら凍らせる力を込めた魔法、【氷結】。麗が練習して初めて使えるようになった魔法である。


 それが、獣人の足を凍らせたのだ。



「私に近づけば、皆その人みたいに凍ることになるけれど―――いいのかしら?」


「くっ……魔法とは、厄介な……!」



 麗が、獣人たちに牽制をしながら、振り返らずに言った。



「ここは私に任せなさい。貴方たちは先に行って、あの子たちを助けてあげて」


「待ってください。それなら僕もここに残りますよ。会長を一人にはしておけないですから」


「あら、ホントに? ありがとね、悠くん」


「いえ。この数を一人で相手するのには無理があるでしょうから、当然の事ですよ」



 と、悠もまた剣を構えて麗の横に並び立った。



「二人とも、本当にいいの……?」


「ええ。それよりもいいから早く行きなさい。あの子たちに何かが起きてしまう前に」


「……うん、分かったよ。それじゃあ、絶対無事にまた会おう」


「ええ。待ってるわ」



 そんな、短い会話のあと。

 蒼華と冥は、少女たちを追いかけて階段を下りて地下五階へと向かって行った。



「(絶対無事でいてよ……二人とも……っ!)」




《廃工場 B5F》



「ぐれん……ぐれんぐれんぐれんぐれんぐれんっ……!!!」



 私は、無我夢中で走っていた。

 敵とか、見つかるとか、どうでもいい。


 とにかく地下に。

 ぐれんが連れて行かれた方に向かって。



「アソコ! カイダンアル!」


「分かったのだ!」



 早く、助け出さないと。

 私たちのせいで、ぐれんがあんな目にあって……みんなに合わせる顔が無いから!



「テキ、イナイ……ケハイ、シナイ! ソノママイケルヨ!!」


「らっきーなのだ……っ!! このまま行くのだ……っ!!」



 何故か地下五階には誰も居なかった。

 それは不思議だったけど、らっきー以外の何でもない。だから、夢中で階段を下りていった。


 下へ、下へ。

 とにかく今は、ぐれんの事だけを考えていた。




《廃工場 B6F》



「クククッ……! まさかお前たちが“コイツ”を連れて帰って来た時はびっくりしたが……これはこれで面白い事になりそうだァ……」


「そ、それなら良かったです。ですが……その人はもう、瀕死状態ですよ?」


「そうだな。俺が緊急治療してやったお陰で、何とか生きながらえてる訳だなぁ」


「ええ。ですから、こんな状態では機体のコアとしては不十分なのでは無いかと……」


「ヒヒヒッ……それなら安心しなぁ。機体のコアになれば、中で勝手に死なれないように栄養補給や排泄のサポートが出来るような仕組みになってるからなぁ。当然、肉体の治癒もそれに含まれてるのさ。だから、何も問題はない……って訳だ」


「なるほど……。それでは、このまま彼を機体に投入する方向で行くのですか……?」


「ああ。その方向で行こうか。―――どうやらネズミが何匹もこの部屋にやって来そうな気がするからなぁ……」




 ―――ヒカミ・グレン。

 貴様がどれだけ価値のある人間か……早速この場で試させてもらおうじゃないかァ……ッ!!





《廃工場 B4F》



「会長。まだ、行けそうですか……?」


「ごめんなさい……まだ慣れなくて……少し、厳しいかも……!」


「分かりました。それなら残りは俺に任せてください」


「で、でも、一人じゃ……」


「大丈夫ですよ。僕ってば周りがあんなだから……相当鍛えられてましたし」



 武器をしまって、拳を構えた悠は麗を庇うような態勢で獣人たちと対峙する。

 残るは強そうな獣人兵が数人。麗は魔力マナが尽きかけてふらついている為、もう戦うのは厳しい状態だ。



「さて……どこまでやれるかな……っ……!」


「臆するな! 我らが同胞たちのお陰で奴らは消耗しているッ! あと少し……あと少しで勝てるぞッ!!」


「僕だって……負ける訳には行かないんだ……! ここからは、本気で行かせてもらうよ―――!」




《廃工場 B6F》



「はぁ……っ……はぁ……っ! やっと、辿り着いたのだ……」


「ヒロイネ……アトクライネ」


「そう……なのだ」



 広くて、暗い。

 まるで不気味な空間に、桜花とアンは辿り着いていた。


 どうやらこれより下の階は無さそうだし、ここにきっとぐれんがいるはずだ。

 そう信じて、二人は暗い空間の中を、手を繋ぎながら進んでいった。




 ―――目の前に、その“ぐれん”が乗った、兵器があるとも知らずに。





『―――やぁお嬢さんたち。こんな所までどうしたんだい?』





 ―――部屋に響くのは、舐めるような、見下すような口調の言葉。

 そして桜花にとっては、聞きたくもない最悪の声―――



「その……声は……ッ!」


『おやおや。お嬢さん、怖い顔だねぇ〜。ま、別に怖くも何ともないんだけど』


「ぐれんを……ぐれんをどこにやったのだ!!! 答えるのだッ!!」


『ぐれん……って、ああ、“ソレ”の事かい?』


「そ……れ……?」



『ふふ。見せてあげるよ―――俺の自慢のナンバー2をなァッ!!!』



 刹那。

 バチンッ!という音がして、部屋の明かりが灯っていく。


 光が闇を切り裂いて、目の前にあった物の正体が徐々に分かっていく。



 それは、スラッとしたフォルムの黒い機体で。

 一本の剣を腰に携え、紫色の目を輝かせ、鋼鉄の肉体を持った巨大な人型兵器。


 そしてその胸元。

 そこには、明らかに核だと思われる部分があって。


 真っ赤に、輝く、一つの球体。



 それはまるで、紅蓮色の―――



「まさ……か……!」


『ヒヒヒッ!! そう。そのまさかだよ……! コイツの名前は―――“サイケリナンバー2 グレン”ッ!! ヒカミ・グレンの肉体を核に使った、俺の最新作さァッ!!!』




 サイケリのこの言葉が、“絶望”の幕開けとなるのだった。

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次回更新は一週間後くらいになります!なるべく早く更新しますのでチェックをお願いいたします〜!!

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