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27.動き出す思惑。

―――それぞれの思惑が動く夜。





「ここなのだ?」


「ああ、ここのはずだ」


「スゴイ、キタナイトコ」



 俺たちは、病院(?)を抜け出してすぐに、サイケリの手紙に書いてあった“はず”の場所にやってきていた。

 ……桜花とアンの二人に、俺が車椅子に乗ったまま町中を駆け回ったのだ。


 多分、かなり噂になってるんじゃないかと思う。

 だって……めちゃめちゃ視線感じたもん。少女二人に押されてびゅんびゅんびゅんびゅん駆け回る車椅子に乗った男、なんて文字だけでも異様な光景なのが伝わるだろう。



 そんなこんなで、指定された場所―――よもや運命を感じてしまう場所だが。“廃工場”、そう呼ばれるような所に俺たちは辿り着いていた。



《廃工場 1F  地上・入り口付近》





「―――嘘……っ」


「クッ……まさかこんな罠が仕掛けられているとは……ッ!」


「それにしたって……こんな事―――ッ!」



 メリドとクロキリは、目の前で起こった光景に、ただ口を開く事しか出来なかった。


 ―――廃工場の、地下へ繋がる鉄梯子。それを、『自分が先に行く』と言って引かなかった少女が、梯子を降りきった瞬間に、“それ”は起こったのだ。



「影咲……ちゃん……っ!」



 サイケリが仕掛けたのは、梯子を降りてすぐの足場を起動スイッチにし、それを踏むと正面の壁から梯子を破壊しつつ、そのスイッチを踏んだ人物を確実に殺す巨大ドリルを突き出す装置だった。

 これに貫かれれば、ちょうど小柄な女性の身体ならぎりぎり胴体が切断されないレベルの大穴が生まれるのだ。


 当然、当たれば即死。


 だからこそサイケリは、初動で、やってくるパーティーの中でも一番の実力者を殺す為にこのトラップを仕掛けていたのだが……。



「クッ……すまない、メリド。俺があそこで押し負けてなければ……」


「ううん……私もこの子に助力しちゃったし、アンタに罪は無いわよ」


「いや、どうにかする術はあったはずだ。先に投げ物を投げて罠が無いかどうかを確認するとか―――普段の俺なら、こんなぬかる事など無かったのだが……どうやら少し浮かれていたらしい。本当に、すまない。折角の“闇の魔力の保有者”だったと言うのに」


「……こればっかりは、しょうがないよ。こんな結果になってしまったのは、半分は自分のせいなんだからね」


「メリド……。これから、どうするんだ? もう、彼女は助けられないだろう。放置してこのまま撤退するか?」


「―――いや、まだ何とかなるんじゃないかな」


「……何とかなる、だと?」


「うん。それこそ、私たちの『真の目的』―――ううん、目標が達成出来るかもしれないんだから」


「目標―――ま、まさかッ……! だが、死人では話が別じゃ……ッ!」



「やってみなきゃ分からないでしょ? ナニ、それともワタシに逆らうっての?」



「い、いや……それは無いが―――分かった。速やかに回収して、肉体を完全に保存しておこう」


「うん、それでよろしい。あとは君たち《十ノ色パレッツ》に任せるからね。そのまま彼女で“実験”を進めて」


「……了解。こちらで最善は尽くしておこう」



「最善、じゃなくて“絶対”に“蘇らせる”んだよ。どんな手段を使ってもいいからさ。目標達成と、彼女の復活―――それが今の君たちの任務だから。分かった? 分かったらとっとと行ってくれるかな。そろそろ“彼”も来ちゃうだろうし」



「―――了解」



 ―――しかし、サイケリの狙い通りにはならず。

 それが事態を急速に激化させているのだが、まだそれは水面下の話だった。


 メリドの命を受け、クロキリは影咲の、穴のあいた死体を担いでその場を去っていく。

 そしてクロキリが去ったのを確認したメリドは、せめてこの広がった血だけでも片付けておかないと―――と思って即座に掃除を始めるのだった。



「流石に……少年にバレるわけにはいかないからね―――」



《廃工場 B1F  入り口付近・梯子下》






「おい……ッ! これは一体どういう事なんだッ!」


「わ、分かりませんッ!」


「分からないだとッ!? 見張りは何をやっていた!!」


「み、見張りは地下二階から下にしか居ませんので……」


「く……く……口ごたえをするなよ……下っ端が!」



 ガァンッ!とサイケリは目の前の机に勢いよく拳を叩きつけた。



「せめて……せめて死体だけでも回収しろ! この際誰でもいい―――奴を、ヒカミグレンを潰せるのならそれでいいからなァ……!」


「了解いたしましたッ!」


「分かったらとっとと行けよッ!」


「はいッ!」



 サイケリの指示で、部下の獣人は事の起こった地下一階へと向かって行った。



「クソ……クソクソクソクソクソクソッ! 何でだ……何でここまで上手くいかないんだよッ……! 俺は世界でも有数の『発明者』の一人なんだぞ……ッ!? それなのに……奴が、ヒカミグレンが俺に関わってから……全部、全部がおかしくなりはじめた……ッ!」



 仕掛けた監視カメラに写った、廃工場の外の様子を眺めていたサイケリは一人で怒りに満ちた呟きを放っていた。

 そしてその直後だ。



「ん……? あれ……は―――」



 画面に写ったのは、二人の少女と、一人の少年。

 少女の方は見たことがないが、少年の方は忘れもしない顔だった。


 サイケリにとって、人生を狂わせた張本人。

 全ての、諸悪の根源が、そこには居たのだ。



「クッ……ククク。アーハッハッハッハッ!!! ―――丁度いい餌が2匹もいるじゃないか。アイツらを使えば……ヒカミグレンはまた絶望するはずだ……ァッ! あぁ……アァ……良い。良いぞォ……! 奴の苦痛に歪む顔を想像しただけで天にも昇る気持ちだァッ……!」



 サイケリは監視カメラの映像から、自分の背後にある一機の大型兵器へと視線を移すと一人、こう呟いていた。



「さあ……早く来るといい、ヒカミグレン……ッ! 貴様の大切なモノは一つも残さず奪い取ってやろう……ッ!」



《廃工場 B6F  発明者の決闘場》





 一方その頃。



「あと……もう少しでっ!」


「頑張って! 蒼華!」



 同時刻、夕日が沈んだ頃。

 何処かの牢屋(?)に軟禁された蒼華たち四人は、それぞれの牢屋から同時に壁を攻撃して、何とか壁を破壊しようと目論んでいた。



「いけそうか……? 冥」


「うん……っ! だいぶ壁がぐらぐらしてるから……多分本当にあとちょっとで……っ!!」



 二人ずつ分かれた状況だが、幸いにもそれぞれに蒼華と冥という武闘派の二人が居たため、今回のような強行手段に出れたのだ。


 だいぶ老朽化している壁はそこまで厚くなく、材質はコンクリートだが、感覚的には薄い板一枚のみで仕切っている―――という感じだ。



「よーし……決めるよっ!!」


「そろそろ……決めますか……っ!」



 言葉は聞こえてないが、二人には感覚的にもうすぐ壊れるというのが分かっていた。

 だからこそ、意思疎通を取らなくてもこういう芸当が出来たのだ―――



「せーの……っ!」


「とりゃぁっ!!」 



 ドガァァァァァァンッ!

 と、二人の“闘気オーラ”を込めた渾身の一撃は、二つの牢屋を隔てていた壁を一気に破壊しきったのだった。



「よーし……! 冥! よくやったね!」


「おねーさんこそ! よく冥についてこれましたね!」


「……なんだって〜……?」


「ぷぷぷ〜、おばさんみた〜い!」


「な、何を〜っ!!!」



 壁を壊してすぐに、蒼華と冥は若干小競り合っていた。

 が、今度はクールな二人の出番だと言わんばかりに、悠と麗が声を上げた。



「ちょっと二人とも。今はそんな事言って争っている場合じゃ無いんじゃないかしら?」


「そうですね。今はとにかく、ここから脱出しないと。自分たちを捕らえた者たちの目的が分からない以上は、長居しているのは危険だと思うので」



「う……それはそうだね……」

「は〜い」



「ふふ、随分と聞き分けがいいのね、二人とも」


「だって……紅蓮が心配だし」


「ですね……センパイったら一人にしておくと危ないですから。また何かに巻き込まれてそうですし……」



 四人は、自分たちが獣人の国に来たことも知らずに会話を進めていた。

 当然四人の元には何にも情報が入ってきていない。だから、“まだ”何にも知らないのだ。何にも―――



「それじゃあ、すぐにでも行きましょうか。後輩くんが心配なら、なおさら行動は早いほうがいいでしょう?」


「ですね。まずはここから出て、自分たちが今どこに居るのかを把握するところから始めましょうか」


「おっけー。なら、さっさとここから出ちゃおうか。力仕事なら私と冥に任せておいてね」


「ふふ、それならおねーさん! 早速出番みたいですよ! ここの扉、さっさとぶち壊しちゃいましょう!」



 ―――合流した四人は、牢屋の扉を壊して自宅へと帰ることを決意していた。……のだが、その思いは部屋を出た瞬間に打ち砕かれることになる。


 蒼華たちが今、どこに居るのかを理解した、その瞬間に。



《廃工場 B4F  牢屋》















▲▼▲▼▲



“極秘”




『サイケリナンバー1 “オウカ” 報告書』


 この機体は核部分に、“奴”の持つ例の剣を埋め込んだ巨大兵器である。剣から供給される魔力で動く為、剣の魔力が無くなった瞬間にこの機体は行動不能となる。

 次回の機体ではこの点を改善しよう。

 機体の俊敏性が足りず、攻撃を受けてしまう確率が高い点も要改善だ。





『サイケリナンバー2 “―――――” 設計書』


 この機体は核を合計で三つまで埋め込む事を可能に設計する。

 さらに、前回と違う点として“物”だけではなく“人”でも対応出来るようにしようと思う。

 魔力炉や闘気炉を最初から組み込んでおき、供給切れが起こらないようにもしよう。

 後は機動力だ。前回は俊敏性が足りず、重い装甲が仇となったが、今回は逆に防御を捨てた設計にしよう。


 そして、前回とは大きく変える点として“自爆機能”をつけようと思う。

 最悪、“奴”に負けたとして、核部に使った奴の大切なモノを奴の手に戻さない為の機能だ。


 この機体に入ったものは、絶対に生きて返さない。

 それだけは、絶対に約束してみせよう。

更新できた……頑張ったよぉ……!

ブックマークや高評価をしていただければモチベーションがアップしまくるので何卒お願いいたします……!


次回更新予定日→月曜日か火曜日

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