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21.獣の香りがしていた。

―――少年の大切な人たちを襲った真実。




「ここが……?」


「うん。ここがハンター協会だよ」



 俺は影咲に案内されるがまま街の中を駆け回り、ようやくそこに辿り着いていた。

 ハンター協会。街のシンボルともいえる建物なだけあって、流石に豪華で大きな造りになっていた。まさに圧巻だ。



「それじゃあ行こっか」


「あ、ああ」



 俺はフードをかぶったまま、桜花の手を引いて協会の中へと入っていく。


(こんなのが初めてのハンター協会だなんてな……)


 複雑な気持ちを抱えたまま、協会の中を進んでいく俺と影咲。

 受付に向かって真っ直ぐと進んでいくが、協会内は結構騒然とした様子だった。初めて来たから断言は出来ないが、多分この感じは普段の騒がしさとは違うだろう。



「なんか、嫌な視線を感じるのだ……」


「剣に戻るか?」


「ううん。戻りたくないのだ。ぐれんと手を離したくないのだ……」


「そっか。ならずっと繋いでような」


「うんっ!」



 まるで娘のような感覚になってきた桜花の手を、さっきよりも強く握ってやると、桜花もぎゅっと握り返してきてくれた。


 確かにさっきから俺と桜花を見つめる嫌な視線をいくつも感じられる。桜花もまだ不安な気持ちがあるのだろう。

 俺が安心させてやらないとな。



 そう思っていると。



「二人とも……私の後ろでいちゃいちゃしないでくれるかな……?」



 ……目の前からも突き刺すような視線が向けられていた。



「ほら、受付に着いたよ」


「あ、うん。……影咲、悪いけど話は任せてもいいかな……?」


「うん。それは任せておいて!」



 そう言って、影咲は受付の女性に話しかけに行った。俺と桜花はその後ろにくっついて、影咲の話を聞くことにする。



「あの〜すいません」


「はい―――って、あ、貴女は……! も、もしかしなくても影咲様……ですよね!?」


「は、はい……そうですけど、どうかされたんですか?」


「良かった……まずはご快復、おめでとうございます」


「あ、どうもです……」


「それで、少し込み入った話がしたいので、奥の部屋まで来ていただいてもよろしいでしょうか? お連れ様も一緒で構いませんので」


「わ、分かりました」



 そう言って受付の女性と影咲は奥の部屋へと消えていってしまった。それに続くようにおれたちも部屋へと入っていく。


 部屋の中は結構シンプルな造りになっていて、ソファーとテーブルと、少しのの観葉植物があるだけだった。



「お連れ様もよかったらそちらにおかけください」


「いや、俺たちはここで大丈夫です」


「そうですか。では影咲様、少しだけお話にお付き合いくださいませ」


「は、はい……」





「メリド様からはどこまでお伺いになっていますか?」


「いえ、メリドさんにはまだ会っていませんけど」


「そうでしたか……。では、現在の状況を一から説明させていただきますね」


「はい。お願いします―――」



 そう影咲が答えると、受付の女性―――フェイルさんは緊迫した様子で話し始めた。



 事の始まりは、やはり3日前だったらしい。

 その日の俺たちはサイケリによって襲われていたのだが、同時刻にハンター協会側でも色々と起こっていたらしいのだ。


 何があったかは、秘匿事項とのことで教えてはくれなかったのだが、ともかく色々とあったみたいで『ハンターランク昇格試験』の日程が早まってしまったのだとか。

 まさかの即日開催で、緊急で集められたハンターたちはすぐに試験会場である“とある洞窟”へと出発したらしい。


 それが、今から2日前の話だ。

 しかしここで事件は起きてしまった。本来なら1日で終わるはずの試験だったのだが、いつまで待ってても試験に出たハンターたちは帰ってこず、そんな状態のまま早2日が経過してしまっていた。

 昨日の時点で協会側は捜索隊を出したのだが、結果は良いものではなく。見つかったのは試験用に渡したビンと、ハンターたちが装備していたと思われる武器だけだった。



「そんな……! それじゃあ行方知らずのままってことですか!?」


「……姉ちゃん……っ!」



 驚きと恐怖から、俺はその場で歯ぎしりをしてしまう。

 ギリィ……という音が鳴るくらい、強く、強く。



「ぐれん……」


「大丈夫……俺は、大丈夫だよ」


「……っ」



 不安そうな目で訴えかけてくる桜花に、「大丈夫」と伝える。

 何度も何度も、「大丈夫」だと。


 それはまるで、自分に訴えかけるように。



「……影咲様のお気持ちは痛いほど理解出来ます。私も、妹が同じ試験に出ていたので……」


「妹さんが……?」


「はい。ライラと言います。少々勝ち気で、でも真っ直ぐな子で……今回の試験も大丈夫だよって言っていたのに―――ライラ……っ!」



 そう言うと、フェイルさんも悔しそうに拳を握りしめていた。

 家族を失ったかもしれない恐怖。その思いが心を埋め尽くしているのだろう。

 俺も、同じ気持ちだから。



「……何か、何か手がかりは無いんですか……? 本当に、ただ消えちゃっただけなんですか……?」


「―――手がかり、と呼べるかどうかは分からないのですが……。これを見てください」



 コトッ……と、フェイルさんは机の上に一つの小瓶を置いた。

 ハンターたちが試験用に持っていったビンより細長く、ワインのボトルをそのまま小さくしたような形状をした小瓶だ。

 小瓶の中には、何やら小粒の木の実のような物が詰まっていた。



「これは?」


「これは、“マクネの実”という木の実です。食べると一時的な興奮状態になれる、いわゆる麻薬の一種ですね」


「麻薬、ですか。でも、それがどうかしたんですか……?」


「……このマクネの実は、この世界全土において生産が禁止されている植物なのです。しかし法の目をかいくぐって育成している、いわゆる“売人”と呼ばれる存在はまだ世界にある程度存在しています」


「それじゃあその売人が落とした、という事ですか?」


「はい。その可能性は高いでしょうね。そして、このマクネの実を詰めていたビンなのですが、調べたところ『グラ』の物だと判明いたしました」



 言いながらフェイルさんは机の上に世界地図を広げた。

 そして、大きく分けて4つに分かれた大陸の内の左下の大きな大陸を指差すと、



「ここが、私たち人間族ヒューマンが暮らす大陸『ユーストリア』です。ちなみにここが、ここペインですね」



 と現在位置を説明してくれた。

 そのまま続けてフェイルさんは言う。



「そして問題のグラですが―――ここ。ここがグラの大地です」



 そう言って指差したのは、左上の小さな大陸だ。

 確かに、英語の筆記体のような字で“Gula”と記されているな。



「グラは、獣人族ビーストの住む土地で、我々人間族ヒューマンとは犬猿の仲な関係をずっと築いているようですね」


「それじゃあ戦争してるのは、そのグラっていう……」


「いいえ、それは違いますね。今の世界情勢としては、主に各大陸内で、どの国家が大陸を統一するか……という争いを行っております。そしてそれと同時進行で、別大陸との睨み合いもしている訳です。我々ユーストリアは、魔族デモンズの大陸『リューディッヒ』との睨み合い状態にあります」



 味方内同士で争っているというのか。

 そしてこれは結構重要な情報だな。獣人族の大陸『グラ』と、魔族の大陸『リューディッヒ』。

 そして人間族の大陸『ユーストリア』と……



「ん……?」


「どうかしたのか?」


「ああいや、もう一つの大陸は何なのかなって思って」


「ああ、ここですか?」



 フェイルさんは右下の大陸を指差しながら言う。



「あ、はい」


「ここはですね、『エリシア』と言う大陸で今は誰が住んでいるかが分からないのですよ。見ての通りこの大陸は他の大陸とかなり離れていますし」


「なんか、バッテンがいっぱい書いてあるのだ」


「ええ。この印がついている所に巨大な魔物や竜巻などが発生していて、まともに向こうの土地に渡れた者は居ないのです。その結果、今は生命が存在しているのかすらも分からない、不思議な大陸となってしまったのです」



 自然が守る未知の領域、か。

 それはそれでかなり気になるが、今はそっちの話をしている余裕はあまりないな。



「……とまあ話は反れましたが、問題なのはこの小瓶がグラ製の物であると言うことなのです」


「それじゃあ……つまりどういう事なんですか?」



 影咲は、フェイルさんにそう聞く。



「はい―――つまり、今回の件はグラの者が関わっている可能性が高いです。ですから、皆様にはとある作戦に参加していただきたいと考えております」


「とある、作戦ですか?」


「作戦―――いいえ。クエスト名は、『グラの調査』です。影咲様……どうか、どうかよろしくお願いします!」







「ここは、何処かな……?」


「さあ。でも、悪いところじゃなさそうだが」



 薄暗い部屋で、冥と悠は二人で話していた。

 照明は無いものの、草で出来たベットやしっかりとした水場があるワンルームに軟禁されている事から、自分たちを捕らえた人物が悪い人じゃないのは分かったのだ。



「あとはお姉さんたちが何処に居るか……ですね」


「……そうだな。蒼華さんたちも無事だといいんだが……」






「アイツ、強かった……」


「ええ。手も足も出ませんでしたね」


「……私なら勝てるって、絶対そう思ってたのに。こんなんじゃ、紅蓮なんて守れないじゃない……ッ!」


「蒼華、落ち着きなさい。今考えるべきはどうやってこの状況を脱するか、でしょ?」


「そうだね……ごめん、麗」



 こちらもまた、薄暗い部屋の中で二人は話していた。

 式神兄妹と同様に照明が無いだけで、割と充実した部屋の中で軟禁状態になっているが、特に殺されるとかそういう様子は無かったのだ。



「……紅蓮、大丈夫かな……」


「大丈夫ですよ。きっと後輩くんは―――あー、もしかしたら助けに来ちゃうかも、ですね……」


「ちょっとー! 心配にさせるような事言わないでよ!!!」



 ぽかぽかぽか。

 そう、力無く麗の胸を叩く蒼華だった。




 四人に迫る、「死」の足音。

 それに気がつくのは、もう少しだけ後の話だ。

久々!

ブックマークや高評価をぜひぜひおねがいします!!!

じかいは火曜日あたりに更新できたらなって思ってます!!ゆっくり……まったり行くで!!

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