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17.皆に昇格試験のお知らせが来た。

―――少年が眠っている間に、物語は再び動き始める。




 ―――あれから、俺たちは力の使い過ぎが原因で気を失ってしまっていた。

 誰かしらが助けに来てくれるだろうと思って、あの時は桜花と2人で安心して眠りについてしまったのだ。というか、半ば強制的に倒れ込んだ訳だが。


 ともかく寂れた廃工場で、俺と桜花。そして何故か居た影咲は、誰にも見つかる事なく静かに息を―――





「―――引き取らずに済んだ、って訳さね」


「いや、本当に助かりました。メリドさん」


「いやいやなんのなんの。気にしないでね」



 俺は、目の前にいるフランクな女性―――メリドさんに深く礼をした。だが、彼女は別にそういうのを求めていると言った様子では無かったが。


 ともかく。

 あの廃工場での一件の後、俺と影咲、そして桜花はそれぞれの理由でずっと気を失ってしまっていたのだ。

 が、その時俺たちを探しに出てくれていたメリドさんが、運良く俺たちをあの廃工場で発見してくれて、何とかこうして治療を終えるまでに至ったのだ。


 俺は特に目立った外傷は無く、少し背中とか腹があのロボットに殴られたせいで痛かったぐらいだった。そして桜花は、魔力の使い過ぎが原因でしばらく動けなくなるが、それ以外は特に問題も無いとか。


 という訳で俺たち2人は、病院―――とまではいかないにしても、診療所のような小さな病院で数日間療養する事になった。



 そして、残った影咲なのだが。

 彼女もその診療所に運ばれて療養する事になっているのだが、俺たちと違って、彼女には1つだけ問題があった。



「それよりも、影咲が―――」



 俺は、メリドさんに目を向けて呟く。



「まあまあ、そんな不安そうな目を向けなさんなっての」


「で、でもあれから目を覚まさないなんて、何かがおかしいですよね……」


「うーん……そうね。しばらくは様子見と言ったところかしら」



 俺の隣のベッドで眠る影咲は、まだ目を覚ましていなかった。

 これは一応、原因は分かっていた。


 使い慣れない力―――つまり魔力マナの力が暴走し、影咲の体力を大きく奪ったらしい。

 影咲の魔力マナの属性は、もっとも使用者が少ないとされる“闇”の属性で、奪われた体力はかなり多いのだとか。


 ともかく、別に死んだとかそう言う訳では無いようなので少し俺は安心していた。



「まあそんな訳だからさ。2人の事は君に任せるよ?」


「はい。任されました」


「うん。いい返事だ。それじゃあまた顔出すからね〜」


「はい! 色々とありがとうございました!」



 あらかたの後処理が終わったメリドさんは、そう言ってこの場を後にした。俺はそんなメリドさんに、再び礼をしながらも考える。


(それにしてもアイツ……何処に逃げたんだろうか) 



 そう。何を考えたか……そんなの一つしかない。

 あの一件の事だ。



 あの時見つかったのは俺と桜花と影咲の3人だけ。

 つまり、あの発明者の男―――サイケリは何処かへと消えてしまったのだ。

 俺にとってはあの男は宿敵―――絶対に許せない存在だ。だから何としても次に見つけたときは引っ捕らえてみせる。


(その為にも、今は体を休めるのが一番大事……だな)



 そう考えた俺は、まだ桜花も影咲も起きなくて暇だったからか、少し目を瞑っただけで……また深い眠りへとついてしまった。





「―――という訳で、2人……いや、3人かな? は無事だったよ」


「そ、それは良かった……! 本当に、良かった……!」



 自宅でメリドから伝えられたその事実に、蒼華は大粒の涙をポロポロとこぼした。

 それにつられてか、冥までもが、



「ちょ、おねえ……ちゃん! なか、ないでよ……!」


「何よ、アンタだって……泣いてるじゃないのっ!」


「「うえええええええええんっ!」」



 嬉しさからか、これまた大粒の涙をこぼして互いに抱き合っていた。

 見れば悠も麗も、少し泣きそうになりながらも堪えている様子だった。



「あらら。皆そこまであの少年の事が好きだったんだね」


「い、いや違いますよ! 心配してるだけです!」


「ふーん。ま、そういう事にしておいてあげるよ」


「だ、だから……もうメリドさん!」



 その適当な態度に少し怒った蒼華。そんな蒼華を「はいはい」と適当に流すメリド。

 ここでその無限ループが組み上がってしまったのだが、そんな流れを壊すように麗は言った。



「それで、彼らはどのくらいで戻ってくるのでしょうか?」


「ん? あー、そうだねぇ。多分、長ければ2週間くらいじゃないかな。特にあの女の子の方がいつ起きるか分からない状況だからね」


「……そうですか」


「まあ、あの子たちの事は心配しないで、私に任せておいて? ―――それよりも、今は君たちに別の話があるんだよ」



 メリドはそう言って、懐からとある一枚の紙を取り出した。

 巻物のようなその紙を、開くことなくそのまま麗へと渡すメリド。



「これは……?」


「ま、開いてみてよ」



 そう言われて、メリドは丸まったそれを少しずつ広げていく。

 全員の視線は、その紙に集中されていた。



「これは……」


「―――“昇格試験”、ですか?」



 悠は、少し疑問混じりの声でメリドへと問いかけた。

 その紙には“昇格試験について”と書かれていたのだ。



「そ。昇格試験。意味はもちろんまんまだよ?」



 メリドは、さも当たり前かのようにそう答える。

 が、当然皆には通じていない。かろうじて言葉の意味が分かるくらいだ。

 そんな様子に気づいたメリドは、溜め息を付きながらさらに掘った答えをくれる。



「ほんと察し悪いねぇ。まあ、最初だからしょうがないか―――」



 そう言って、メリドは言葉を続けた。

 曰く、“昇格試験”とは言葉の通り“昇格”する為の“試験”という事なのだとか。もちろん何の昇格かと言うと、“ハンター”の“ランク”の昇格を意味している。


 蒼華たち5人は、本来であればBランクやAランクと並ぶくらいの数値を持っているため、当然ランクもそこに当てはめるべきなのだが……。

 だが、現実はそうは上手くいかないのだ。

 ハンター協会のお偉いさん方にも当然蒼華たちの情報は入ってきている。だからこそランク設定の会議もその重鎮たちで行われたのだが、その結果、蒼華たちは戦闘経験が少ないことから、初期ランクのFから一つずつ上げてもらうおうと言うことに決定したのだ。


 数値に、実力が伴っていない。

 そう言われたのだとか。



「なるほど……確かに、それはその人たちの言う通りかもしれないですね」



 悠はその話をメリドから聞いて、納得せざるを得なかった。

 当然賢い麗も悠と同じ意見を持っている。



「そして、そんな君たちに初めての“昇格試験”のお誘いって訳さ。今君たちはFランクだから、次はEランクだね」


「あの、一つ聞いてもいいですか?」


「はいほい、何でしょう」



 麗の問いかけに、メリドは気さくに返事する。

 麗はそれを受けて、言葉を続けた。



「何故、いきなり試験の開催を……? まだ我々にはまともな戦闘経験なんて無いと思うのですが」


「あー、そんな事気にしてるの? ……ってかそうか、まだ試験の詳細とか話してなかったっけ」


「まだ……聞いてない、ですね」


「そっか。それならちゃんと話しとこうかな? それ聞いてからまた質問あったらしてね」


「……分かりました」



 メリドの言葉に頷く麗。

 「おーけー」と応えて、そのまま“昇格試験”の詳細についてメリドは語り始めた。



 昇格試験―――それは、ランクごとに設定された試験に挑み、その結果によってランクアップが出来るかどうかが決まるという仕組みだ。

 そして問題となっている試験の内容なのだが。


 Bランクになるまでは、一律して協会から出される全員同一の試験となっている。例えば、指定された物を採取してきたり、強力なモンスターを討伐したりなどが試験内容だったりする。

 そしてAランク、Sランクへの昇格を果たすには、同ランク帯のハンター達と戦わなければならない。何度かそれに勝利をする事が出来れば、晴れて上級ランクへと昇格できる訳だ。



「で、問題の君たちの試験内容だけど……」



 メリドは続ける。

 Eランクへの昇格試験は、ハンター達に与えられる最初期の試験と言う事もあって、内容自体はめちゃくちゃ簡単だったりする。


 具体的には、いわゆる“採取クエスト”というやつだ。

 とある洞窟の奥にある湖から、支給される瓶に水を汲んでくるだけ。本当にただそれだけの試験クエストなのだ。

 別にすごく強いモンスターが道中にいる訳でも無ければ、トラップや悪党が潜んでいるという事もない。

 ただの洞窟に、ただ水を汲みに行くだけのクエストなのだ。



「そんな簡単なクエストで昇格出来るんですか?」


「ん。そうだよ? だってこの試験の目的は、君たちハンターがちゃんと冒険出来るかどうかっていう、基礎中の基礎を学ばせたりさせるための試験だからね」



 話を聞き終えた悠の疑問は、すぐにメリドが解消した。



「ともかく。それならば問題無いので、その試験……我々にも受けさせてください」



 やがて麗は、決意を固めたようにそうメリドに告げる。



「皆も、それでいいかしら?」


「……大丈夫なようね」



 麗の問いかけに頷いて応える他3人。

 それを確認したメリドは、「それじゃあ……」と部屋を出ていこうとする。

 部屋から出る直前、メリドは最後にこう告げた。



「あ、そうだ。試験日は、影咲ちゃんが回復してからまた改めて連絡するから、それまでは気楽に、自由に過ごしててねー?」


「分かりました。重ね重ねありがとうございます、メリドさん」


「いやいや、気にしないでね。それじゃあまた何かあったらくるねー」



 「ばいば〜い」と、メリドは嵐のように去っていった。

 彼女を見送った麗が言う。



「それじゃあ、言われた通り各々で自由行動にしましょうか? やりたい事も特には無いし」


「ですね。それに、今は冥たちが精神的に不安定かもですから。って、あれ―――?」



 悠はそこまで言いかけると、とある事に気づく。

 振り返ると、そこに居たはずの蒼華と冥が居なくなっていたのだ。



「まさかあの2人……!」


「あ、あはは……流石ね、あの2人。それじゃあ私たちも一旦解散にしましょうか」


「分かりました。それではまた後で!」



 そう言うと、悠もとある場所へ向かって駆け出した。

 冥たちの行き先はどうせあそこだろう―――そう、確信して。



「私は……何しよっかな……」



 ただ一人取り残された麗は、気が抜けたように脱力する。



「私も、彼のところ……行こっかなぁ……?」







「はぁっ……はぁっ……! クソ、クソがッ! クソガキがッ!!」


「煩い。貴様は静かに出来ないのか。さっきから同じことばかり叫んで……」


「仕方無いだろうッ!! まさかあんな結末、誰が予想出来るかッ!」


「……この考え無しが」



 クロカゲは、目の前の男―――サイケリにも聞こえないようにそう呟いた。



「まあいい。それよりも、貴様の行き過ぎた行動は褒められた物ではないが、それによって得られた物も大きいのは事実だ。だから、それに関しては評価するべき所はしっかりとしよう」


「な、なら……もう一度俺にやらせてくれ!! 大丈夫、今度は失敗しない!」


「……いいだろう。作戦の内容は任せる。だが、そうだな―――」



 サイケリの言葉に頷くクロカゲは、少し考える。

 しばし思考を巡らせた後で、クロカゲはこう命令したのだ。



「―――狙うのは、やはりあの男だ。徹底的に潰せ……緋神、紅蓮を」

時系列おかしくなってそうで不安です。

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