裏1.ワタシ ガ 殺シタノ。
【#1 叶わない恋の行方】
これは。
―――これは、“彼女”自身も理解していない裏のお話。
彼女の心の奥深くに眠る、深い、深い闇の様な記憶のお話。
今から語られるのは。
彼女が、今までにしてきた事の全てである。
■
彼女は、遠い昔にとある神によって創り出された“神剣”であった。
初めは精霊も宿っておらず、ただの剣だったのだが、いつの日か剣には精霊が宿って―――いや、生まれていた。
だが、その事に気づいた神は居らず、やがて神々の大戦が終わるとその剣は地上へと落ちていってしまったのだ。
そうして、とある小国に落ちてきたその剣は当時の国王によって拾われ、見た目やその剣が放つ魔力の量から、偶然にも“神剣”と再び名付けられ、幼子に押し付ける風習の際に渡す剣として利用されるようになった。
神剣は様々な“所有者”の間を行き来し、いつしか運命の相手―――アレスと出会った。
その時に、アレスの思いに応えるかの如く、神剣―――アレイアは精霊としてちゃんと自我を持ち、言葉を発するようになったのだ。
アレスが幼少の頃からアレイアは共に育ってきて、今までもそれは同じだったのだが、何かアレスからは違う気配がしていてその頃から彼女はアレスに惹かれていたのだ。
その“違う気配”の正体は、アレイアには検討もつかなかったが、とにかく一緒に居たいという想いは日に日に増えていった。
アレスには、幼馴染がいた。
同じ日に生まれた、妹のような女の子だ。
彼女もまた、アレイアと同様に幼少期からアレスと共に多くの時を過ごし、いつしかアレスに恋心を抱くようになっていた。
―――アレイアには、それがよく分かっていた。
しかし、アレイアにはどうする事も出来ない。
その頃に、アレイアにはマスターの魔力や闘気を借りて自立浮遊したりする事は出来なかった。だから、アレスがその幼馴染と共に出掛けている時も、食事を共にしている時も、ただアレスの背中で、またある時はベンチの上で、ただただ見ていることしか出来なかったのだ。
そんな歯がゆい思いをアレイアがしている中、町の人たちにはアレスの幼馴染の少女が、アレスに対して恋心を抱いている事が徐々に広まっていき、気づいた時には“お似合いカップル”等と町の人たちから称されるまでになってしまっていた。
しかも、当のアレス本人はまんざらでもない様子で照れていたのだ。
誰しもが、2人はあと数年―――16歳になって結婚できるようになればすぐにでもしてしまうだろう。なんて思っていたのだが。
―――それは、アレイアの覚醒を促してしまったのだ。
16歳……それはつまり、アレスが冒険の旅に出るのが決められた歳だ。だからこそ、町の人たちはすぐにでも少女との結婚をアレスに持ちかけたのだが。
町の人たちから、アレスに告げられたのは―――悲報……いや、“訃報”だった。
少女は、死んでしまったのだ。
犯人は不明。
被害者は幼馴染の少女と、その両親。そして、母親の腹の中にいた生前の赤子も共に殺されていた。
死因は、何者かによる刺殺と言う事になっていた。
アレスは、ただただ絶望した。
その頃から、アレスは変わってしまったのだ。
しかし、それに対してアレイアの内心は喜々としていた。
それもそのはずだろう。
だって、その幼馴染を殺したのは、アレイアだったのだから。
事件があった日の晩に、彼女は覚醒した。
今まで蓄積していた力が、彼女にその力を与えたのだ。
手に入れた力は、2つ。
1つは、透明化の力。
そしてもう1つは、自立浮遊の力。
その力を使って、彼女は少女を殺した。
少女を産んだ、両親も殺した。
全ては、アレスを自分に依存させる為。
それなのに。
アレスは、アレイアを見なかった。
それどころか、アレイアの事を忘れてしまっていた。
話しかけても、返事は無く。今までとは違い、ただの道具としか見られていないような、そんな気がアレイアにはしていたのだが。
それは、事実だった。
―――アナタが、ワタシを見てくれないノなら。
アレイアは、いつからか力を貸すことをやめてしまった。
そうなると、どうなるか。
力を大きく失ったアレスは、それに気づかずモンスターへと挑んでいき、やがてアレスはモンスターに敗北し戦える力を失ってしまったのだ。
―――こうなるのは当然だ。だっテ、ワタシヲ無視したんだカラ。
手に入らないのなら、殺してしまえばいい。
いつしかアレイアはそう考えるようになっていた。
だから、その時。
アレスがモンスターに襲われて、動かなくなってしまった時。
―――死んだラ、永遠ニ ワタシ ノ、モノ?
自らの意志で、自らの欲望を叶えるためだけに。
彼を―――
「殺シタノ」
―――それからアレイアは、町の外れの神殿へと封印され……やがて力を失っていった。
数十年もした頃には、もう魔力も無くなり、刀身も錆びてしまい、喋ることすら忘れてしまっていた。
そんな彼女が、再び目覚めたのは……その後の事だった。
■
これは、彼女の内に潜む悪魔の物語。
妖しく紫に光るアネモネのような、儚い恋の物語。
先に彼を信じなくなったのは、彼ではなく。
この、ワタシ自身だったのだ。
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ではまた明日!




