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13.それぞれが動き出した。

―――交錯し合う運命。




「―――ただいまですッ! 誰か居ますか!!」



 家に着いた俺は大声をあげる。

 この両手に抱えた荷物を預けたかったからだ。一応肉とか魚みたいな生モノもあるし、食材に罪は無い。だから誰かに預けてそれを片付けてもらい、その空いた時間も使ってとにかく調べ物をしたかったのだ。


 すると俺の願いが届いたのか、とある女性の声が返ってきた。



「ほいほーい。どうかしたんかー?」


「メリドさんッ! ちょうど良かった。これ、頼まれてたやつと必要なやつ……まとめて買ってきたんで片付けておいてくださいッ!」


「えっ―――重っ……って少年! どうかしたんか?!」



 俺はメリドさんに両手の買い物袋を預けると、即座に駆け出す。―――この家の、書斎に向かって。


 この家には、基本的に何でも施設が揃っている。書斎や武器庫を始めとして、果てはサウナまで。本当に広い敷地内だからこそ、一つの高級ホテルみたいな施設の揃い具合なのだが。

 この家の書斎も、その分かなり豪華で。

 蔵書もかなり多く、色々な知識が学べるから暇があったら行ってみたいと思っていたのだが。


(まさかこんなに早く来ることになるとは思わなかったな―――)



「ここか!」



 家―――というかもはや屋敷だが、その中を駆け回ってようやく見つけた書斎。いや、これもむしろ図書館と言うべきか。

 とにかくそこに着いた俺は、とある本を探す。


 どうして桜花が消えたのか。そして―――“桜花”とは、何なのか。いつかは調べなきゃとは思ってたけど。

 それは今しかない。アイツの事を、もっと深く知るために。



「ちょ、ちょっと少年! ホントにどうしたんだよー?」



 とそこで、俺を追ってきたのか、メリドさんが書斎へと入ってきた。



「ちょっとメリドさん! 俺が買ってきた物は片付けてくれたんですか!?」


「もちろん。とりあえず食料品だけだけどね。―――それで、一体何なのさ? そんなに慌てて……」


「今はそんなに話している余裕はありません! ―――桜花が、消えちゃったんです!」


「……あぁ、そういう事か―――」


「それで、消えたのか、もしくは連れ去られたのかを調べる為にも、桜花について調べようと思ってて!」



 俺は本棚を漁りながらメリドさんにそう答えた。

 だが、メリドさんは俺の肩に手を置くと、首を振ってこう言ったのだ。



「―――今やるべき事は、ホントにそれかな?」


「え……?」


「だから。今やるべき事は、本当にそれなのかな?」


「い、いや……だから俺は桜花を助ける為に……」


(桜花を、助ける為に―――?)



 自分で言って、俺は気がついた。


 そうだ、何で俺は調べ物をしようとした?

 今、そんな事を調べてどうなるんだ?


 それは、後で調べればいい事じゃないか。後で直接本人に聞けばいい事じゃないか。

 今、必要な知識は桜花の過去や正体じゃない。大事なのは―――


(―――俺から桜花を奪えるような力か……もしくは……)



「俺から桜花を、連れ去った理由……っ!」


「……ふふ。そう、それでいいんだよ少年」


「メリドさん……ありがとうございますっ!」



 俺はメリドさんに深い礼をする。

 そしてそのまま、とある事を聞いてみた。



「何か、分かることはありませんか……? 何でもいいんです! 気づいた事とか、物を盗む時に使える力とか技みたいなのでも、何でもいいので教えて下さい!」



 俺はこの世界の知識にまだ疎い。それは当然の事だが、それならこの世界の事についてよく知ってる……そう、それこそこの世界の住人に聞いてみるしかないのだ。

 だから、メリドさんを頼って尋ねてみた。するとメリドさんは指をくるくると回しながらこう答えた。

 


「―――んー、そうだねぇ〜? 少年から桜花ちゃんを盗む理由は、さしずめ“希少価値が高そうだった”とかじゃないかな? そして盗みを出来る力だけど……スキ―――いや、何でもない。多分、魔法とかじゃないかな? うん。私にはそういう能力があんまり無いから分からないんだけどね、あははー」


「なるほど……」



 少し適当な回答だが、確かに希少価値が高いと見たから魔法の力を使って盗みを働いた……か。まあ、一応考慮できる可能性の一つではあるな。

 だが、どうもそれだけじゃない気がする。何か、何かが引っかかる。



「―――ああそれと」


「……?」


「多分、盗みを働いた悪党共が隠れる場所って言ったら多分―――」



 次の瞬間。

 その言葉を聞いた俺は、お礼も言わず……ただ「行ってきます」とだけ言って家を飛び出していた。


(待ってろよ桜花……すぐに取り返してやるからなっ!!)







「あーらら、行っちゃった。―――かわいい少年だこと」



 その女は、少年が家から出て行くのを笑いながら眺めていた。

 そして舌をペロリと見せながら、呟く。



「ホントごめんねー? でもやっぱり、恋にスパイスは必要だしね。彼が強くなれるなら、私は何でもいいのさ」



 そう、不敵な笑みを浮かべながらも女は通信魔法を発動した。



「―――あー、もしも〜。今から例の少年がそっち行くから。アンタは邪魔かいにゅうしないでね? ―――うん。そのままあの発明者クンにおまかせしていいからさ。うん、うん。そんじゃ後はシクヨロ〜。じゃね」



 手短に通信を切った女は、ひらひらとしたレースのついたメイド服を脱ぎ捨てて家を出ていく。黒いローブに顔を隠せる専用のゴーグルを着けた女は、家を出る直前に一人の女の子の写真に赤い丸をつけていた。


 恋にスパイスを与える為に。そして、事の顛末を見届ける為に。





「―――ヒ……ヒヒッ。いいぞ……あとはキミを刺しこむだけでこの装置は……この兵器は完成する……ッ!」


『や、やめろ……やめてくれっ!』



 ただの剣である桜花には、抵抗する事が出来なかった。

 ただただ目の前にいるこの男、サイケリに好きなように触れられ、調べられ、実験に使われ―――


 もう、桜花の心はボロボロだった。

 それでもまだ、反抗し続けられたのは主である紅蓮の存在があったからだ。

 彼女は信じていた。彼が、必ず助けに来てくれると。


 ―――でも、それももう限界だった。

 全てが、終わろうとしていたのだ。



「ヒ……ヒヒヒ……イヒヒヒッ! この装置の核となれば最期……お前は意識を失い、魔力が尽きるその時まで人々を蹂躙し尽くすこの魔術兵器の動力として稼働し続けるのみなのだッ!!」


『い、嫌だ……消えたくないッ! たすけて……たすけてよぐれん……っ!』



 彼女は必死にその名前を呼ぶ。

 叫ぶ。何度も、何度も、何度も何度も何度も。


 でも、届かない。

 代わりに届いたのはサイケリの手だ。


 触れられたくない。でも、ただの剣には抵抗する事は出来ない。マスターが居ないと、一人で動くことも出来ない。

 どうすることも、出来ない。



「じゃあね、剣に宿りし精霊ちゃん……」


『や、やめてくれ……やめるのだ……』



 剣は掲げられる。

 もう、桜花がいくら泣いて懇願しようと、サイケリの耳には届かない。



「それじゃあねぇ……。僕の発明の、礎となるんだよぉ……!」


『やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!!』



 ―――グサッ。

 用意された台座に、桜花は刺さった。


 そしてそのままサイケリは、装置―――いや、巨大ロボットの中から外に出ると、リモートリモコンを自身の白衣のポケットから取り出した。



『いや……いやぁっ!!』


「―――魔術兵器、第1号機……起動ッ!!」



 ―――ピッ。

 そんな、無機質な音と共に兵器は起動した。



『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!!!』





「―――っと! これで最後!」


『ギャァァ…………』



 バタリ、と獣のモンスターは蒼華の蹴りを喰らって倒れる。

 そしてそのモンスターを倒した時、辺りは完全に静かになった。



「これで2つのクエストを達成できたのかな?」


「ええそうね。モンスターの皮剥ぎの依頼と、害虫モンスターの駆除依頼。2つのクエストを達成できたわね」


「はい! 魔法の使い方もだいぶ分かってきましたし、帰ったら報酬も貰えますし、いい事ばかりですね!」


「うんうん、そうだね! それじゃあクエストも無事クリア出来そうだし、早く家に帰ろうよ!!」


「ああ、紅蓮が心配ですから」



 影咲たち5人は、そんな二つのクエストを簡単にこなすと、すぐに気を抜いてそんな会話を始めた。

 そんな中、蒼華は依頼にある獣モンスターの毛皮を剥ぎながら呟く。



「紅蓮が心配……か。そうだね……ホントは、あの子を一人にはしておきたくないんだけどね……」


「うん……蒼華の気持ち、よく分かるよ。センパイを一人にしておくと、必ず何かの事件に巻き込まれてるもんね」


「「だからこそ、私が一緒に居ないと駄目なんだけど……」」



 2人の言葉は重なった。

 すると次の瞬間、2人は刹那にして取っ組み合いを開始したのだ。



「あーもう。2人は昔からいつもこうだ」


「あ、あはは。そうなんですね。でも、そっか……一人にしておくと事件に巻き込まれる、かぁ……えへ……」


「? でも、その話が本当なら早く帰ったほうがいいかもしれませんね。でないとその事件とやらに巻き込まれる可能性が―――」




『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!』




「……ッ!? 何……叫び声?」



 麗が途中まで言葉を言いかけた時、町の方から叫び声が響いて聞こえてきた。取っ組み合いをしていた蒼華たちも喧嘩をやめて、全員は静かに息を呑んだ。



「まさか……ね」


「でも、蒼華……そのまさかかもしれないよ?」


「……紅蓮が心配だ。早く戻りましょう!」



 悠がそう言って立ち上がると、その時どこからか軽快な音楽が鳴った。それはまるで携帯電話の着信音のような……



「……失礼。私です」



 すると麗はポケットから携帯電話―――ではなく、ペンダントのような物を取り出して言った。



「それは一体?」


「……これはメリドさんから預かった通信装置です。早速通信に出ます」



 悠の質問に答えると、麗はそのままペンダントを耳に当てがって誰かと話し始めた。



「はい……はい。―――家を? え、ええ。はい。分かりました……。すぐに戻ります」


「……メリドさんからですか?」


「はい。ただいま彼女から伝言を預かりました。私たちには、あの家を守っておいてほしいとの事です。―――後輩が……緋神紅蓮が居なくなってしまい、自分がそれを探すからその間は君たちで家を守っておいてくれ、と」


「ええっ!? 紅蓮が居なくなった?!」



 麗から伝えられたその話に、蒼華を始め、全員が驚いた。



「ま、まさか……本当にそうなるなんて!」


「じ、じゃあ早く探さないと!」


「ですが、メリドさんが今探してくれていると……」


「ええ。ですから、今は言われた通りにしておきましょう? それでも、待っても帰ってこなければ……その時は私たちが……」



 うつむきながらも、今はただそう言うしかない麗に、他の4人も言葉が出なかった。



「とにかく、今は戻りましょう。―――言われた通りに、しておきましょう」


「……」



 言葉は出なかった。

 5人はそんな会話を繰り広げたあと、すぐに家へと向かって走り出した。ただひたすらに、紅蓮の事を思いながら。


星をおしてください!!

高評価ください!!!!モチベが!!上がらないから!!!ブックマークもついでにお願いします!!

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