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1.始まりはいつだって突然に。

少年は、不幸体質。―――故に……






『―――自惚れないでくれ! 所詮キミはどうすることも出来ないただの……雑魚なんだからッ!!』



 ―――こ……れは。



『―――来ないでって言ったよねッ!? 何でついてきちゃったの!?』



 ―――違う……俺は、俺は皆を!



『―――私たちだけで“コイツ”は十分。アンタは黙ってて。弱いんだから、さ』



 ―――違う……違うんだッ! “ソイツ”は、そんな簡単に倒せる相手じゃ……



『―――大丈夫ですよセンパイ。いいから安心しておねんねしててください』



 ―――やめろ……やめてくれ……ッ! 俺を、置いていかないでくれ……ッ!



『―――ごめんなさいね後輩。足手まといになられると迷惑だから』



 ―――どう……して。どうして俺は肝心な時に何も出来ないんだ……ッ!!!




 これは夢。

 とても悪い夢。


 世界の命運を分けた、未来の、夢。







「―――い。―――――ろ!」



 チュンチュンと囀る小鳥の鳴き声が聞こえる。

 それに、心地良い風と光が俺を暖かく包んでくれているのが肌で感じられる。



「―――い! ―――――いい加―――きろ!!」



 何やら俺の周りが騒がしい。

 だが気にすることでは無いだろう。今俺を満たしているこの春の陽気には何人たりとも勝てないのだから。



「そうか……意地でも起きないと言うのか。ならば―――死ねッ!!!」


「―――イギャァァァァァァァアッ!!!」



 先程の言葉は訂正しよう。

 春の陽気にも勝る人物が、一人だけ居た。



「狂子先生……」


「やっと起きたのか! お前、次授業中に居眠りなんてしようものなら、校長先生に報告するのみならず、毎日家庭訪問でもして親御さんに言いつけてやるからな!」


「げ。それは勘弁してください……ちゃんとしますから」



 「あはははは!」なんて呑気な笑い声がクラス中から響き渡る。

 ―――2年D組。担任の言霊ことだま狂子きょうこ先生。


 彼女の授業中に寝てしまった俺は、彼女によって見つかってしまい、そのまま肛門に鋭い一撃を喰らってしまったのだ。



「ハァ、お前って奴は……。まあいい、授業を続けるぞ」


「「はーい!」」



 うちのクラスはだいぶノリのいい奴らが集まった陽気なクラスだ。それこそ、この春の陽気にも負けないくらいのな。


 俺の名前は緋神ひかみ紅蓮ぐれん

 俗に言うキラキラネームってやつを付けられたかわいそうな何処にでもいる平凡男子高校生だ。

 何をするにも平凡。テスト順位も学年中間、成績も同じく。趣味も人並みにはあるだろうし、とにかく特徴が無いのが特徴だ。



「ふふ、緋神君。また寝ちゃってたね」


「え? あ、ああ……そうだな。悪いないつも騒がしくしちゃって」


「いいよ別に! 私は全然気にしてないから。むしろ……」


「? どうした? 影咲」


「……ふぇ? な、なんでもないよ! うん、全然なんでもないんだから!」



 隣で慌てふためくこの女の子。

 この人は影咲かげさきかなで


 どういう訳か、席替えをしてもいつも俺の前後左右どこかにはいる不思議な女の子だ。

 ただこの影咲、黒髪清楚な感じでとてつもない美少女であるが故に、俺はいつもクラス内外問わず男子共から羨ましがられて、煙たがられてもいた。


 いわゆる“ぼっち”と言うやつだ。

 まあ、原因は影咲だけにある訳じゃないのだが。


 でも、そんな俺でも、影咲はいつも優しく接してくれていた。

 俺はそんな影咲に、いつしか恋心を抱くようになっていた。



―――キーンコーンカーンコーン。



「お、授業終了か。よしお前ら、今日はここまでだ! 私は購買に行ってくるから、お前らも適当に解散な!!」



 そう言い残すと、ビュン!と光の速さ5G回線の如く教室を飛び出して行った狂子先生。

 それを見届けたクラスの同級生たちは、笑いながら各々早速弁当を食べ始めていた。


 かく言う俺も、狂子先生を見届けたあとすぐにコンビニの袋を取り出して、買ってきた惣菜パンを食べ始める。



「あ、緋神君。またコンビニ飯で済ませようとしてるでしょ。体に悪いよ?」


「え? い、いや、うち朝時間ないからさ。ほら、両親居ないし」


「……あ。ご、ごめんね……そう、だったね」



 俺の言葉に、心配して声を掛けてくれた影咲が落ち込んでしまった。



「き、気にしないでくれ! 俺は別に何とも思ってないから!」


「ほ、本当……? でも、ごめんね。嫌なこと聞いちゃって」


「いや、本当に大丈夫だから気にしないでくれ」


「うん……分かったよ。でも、コンビニ飯はやっぱり身体に悪いからさ……」



 それまでうつむきながら喋っていた影咲は、そう言いかけると上目遣いで俺を見つめて―――



「もしよかったら、私がおべ―――」




「―――よっす! 紅蓮、いま暇か〜?」




 ―――何かを言いかけたとき、その言葉はとある人物の声によって遮られてしまった。



「姉ちゃん……俺は今、影咲と―――」


「なんだぁ? 姉ちゃんという人がありながら、こんな美少女といちゃこらしてたのかぁ?」



「ちっ、ちげーよ!」「び、美少女……?!」



 うりうり〜と、姉ちゃんは俺の頭を小突いてきた。


 ―――姉ちゃん……名前を緋神ひかみ蒼華そうかと言う。

 俺の実の姉で、これまた美少女……というより美人だ。


 ただ、料理洗濯片付けと言った、女性に必要だと言われているスキル全般がコイツには無い。

 家事スキル皆無、ズボラレベル極の無能美人とでも名付けようか。



「今、失礼な事考えてるでしょ」


「いっ……いだだだだだだだだ! 考えてない考えてないって!」



 妙に勘が鋭い姉ちゃんは、持ち前のパワーで俺の頭をゴリゴリしてくる。ゴリラだ。もうこれはズボラゴリラっていう新種の動物―――



「ほーらまたッ!」


「あっ……いだだだだだだだだだだだだだだだ!!!」



 小さい頃から武道を極めていた姉ちゃんは、やっぱりゴリラ並の力を持っている。

 だからこそ目から血の涙が出るくらい攻撃が痛い……。



「お、お姉さんなんですよね?! だったらもうそれくらいに―――」


「いいんだよ! どうせこのバカは私の事をゴリラとか思ってるんだろうから……さッ!」


「あっ……だだだだだだだだだだギブギブギブギブ!」



 俺が降参の意を示すと、ようやく姉ちゃんは俺のことを解放してくれた。



「はぁ、全く紅蓮には困ったものだ。私みたいにもっと強くなってくれればいいのに」


「無茶言うなよ……姉ちゃんが強すぎるだけだって。それに俺も人並みには戦えるはずだからな?」


「あーはいはい、そうですね〜」



 俺の言葉は戯言と言った様子で手をプラプラする姉ちゃん。

 そんな会話を繰り広げていると、さらに事態をややこしくしそうな人物が現れたのだ。




「―――センパ〜イ! 居ますか〜?!」




 そう元気よく教室へと飛び込んできたのは、小学生の頃からの付き合い―――いわゆる幼馴染、腐れ縁って言われる存在の女の子。

 髪をツインテールにした、茶髪で背の小さい、本当の妹みたいな存在の子。


 名前を―――



「おっ、来たな冥! 今日こそ決着をつけてやるー!」


「出ましたねクソお姉さん! 今日こそけちょんけちょんにしてやるですー!」



 名前を、式神しきがみめいと言う。

 小さい頃から、俺と姉ちゃんと一緒に遊んでいた数少ない友人の一人。なんならさっきも言ったけど、本当の妹のような存在なのだ。


 たった今も姉ちゃんと戦い始めちゃったけど、冥の奴も昔から姉ちゃんと一緒に武術を学んでいて、姉ちゃんと互角レベルの戦いが出来るのだ。



「―――おい冥! やめないか人様の教室で!」



 さらに教室には新たな人物が現れる。



「あ、悠兄さん!」


「ああ紅蓮か。済まないな、また冥がお姉様に迷惑をかけてしまって」


「いや、気にしないで兄さん。いつもの事だし」



 高身長で綺麗で艶のある黒髪、それに透き通るような声をした青年。名前を式神しきがみゆうと言う。

 俺の、実の兄貴みたいな人だ。


 俺たち緋神姉弟と、式神兄妹は昔から家族同然に育ったことからこうして今も同じ学校に通い続けているのだ。

 両家共に、両親を幼い頃に亡くし、家政婦さんやヘルパーさんに育てられた異質な家庭だったからこそ、心の頼りはこの3人だけなのだ。



「―――騒がしいですよ」



 姉ちゃんと冥の勝負がピークを迎えたと見えたその瞬間。

 突如として教室内には、暗くて冷たい声が放たれた。



「あら……生徒会長様じゃない」


「へぇ、蒼華。貴方が騒いでたのねぇ……?」


「え? い、いやぁ……」



 クラスメイトたちは、教室に現れたその人物。

 この学校の生徒会長である、榊原さかきばられいさんのその容姿に釘付けだった。


 黒くて長い髪にはち切れそうな胸の大きさ。

 それにこれまた透き通るような青い瞳。


 まさにクール美人だ。



「まあいいわ。どうせいつもの事だし」


「そ、そうだよね〜いつもの事だし、仕方ないよねぇ〜!」


「はぁ、ホントお調子者なんだから。早く帰るわよ」


「は、はぁ〜い。じゃーね、紅蓮とその隣の美少女ちゃん!」



 「び、美少女……っ!?!? ま、また……」






 ―――姉ちゃんが生徒会長に連れられて、教室を出ようとした時。



 ―――室内で暴れていた冥が、悠兄さんに怒られていた時。



 ―――姉ちゃんに美少女と言われて、影咲が顔を真っ赤にした時。






 それは、なんの前触れも無く、突然起こった。



「……ッ!?」



 「お、おいなんだよこれ……っ!」「ゆ、床が光って……!」

 「何これ、何これっ!」「びっくりさせんなって!何かのドッキリかよ!?」


 クラスメイト達にも動揺が走っているようだった。

 疑う者も居れば、恐れる者もいる。


 かく言う俺も、驚きを隠せなかった。



「おい、何だこれは。誰か知っている者は!?」


「か、会長……このクラスの反応からして、これは恐らくドッキリとかそういう物かと……」


「な、何だ。驚かせるな!」



 悠兄さんが会長さんにそう説明するが……

 どうにもこれはドッキリとかそういう物には見えない。


 ドッキリと説明するには、明らかに手作り感が無いというか……妙にリアルというか……。



「影咲、俺から離れないで……」


「えっ……う、うん」



 俺は男の本能で、近くにいた影咲を守ろうとする。

 周りを見ると姉ちゃんは生徒会長を、悠兄さんは冥を守る態勢に入っていた。



「光が、更に強くなって……っ!」



 教室に現れた謎の光は、さらにその輝きを増していく。

 やっぱりこれは、ドッキリなんかじゃ……無い。


 現実に起きている、謎の現象―――



「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



 痛いほどの光がクラスを包み込み……。




―――コトッ。




 気づけば、その時クラスに居た人間は全員。

 教室内から姿を消していたのだ。



 教室の床には、誰かの食べかけだった弁当箱がひっくり返って転がっていた。


どうも、テトラです。

『転生魔王』に引き続き、よろしくお願い致します!


今作は、転生魔王の完結までまったりと更新していく予定でございます!

★土日以外、月〜金で2〜4回の更新★

を、予定しています!


しっかりと連載する予定のある作品としましては、“2作品目”になりますのでまだまだ初心者ですが、まったりと更新していきますので、皆様もまったりとお付き合いくださいませ!


それでは次回更新は今日の夜22時になりますので、続きはそちらで!

ではでは!

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