表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

表現を喰ったAIに、敗北感を味わった日

作者: ru


 先日カクヨムで、AIが書いた小説がランキング一位になったという話をXで聞いた。

 私は、AIは結構好きで、じつは小説を書くのにもかなり使っている。


 一番助かっているのは、固有名詞。出てくるキャラクターの半分以上がAIで案を出してもらって決めた。『ヴ』を使うなと言ってるのに絶対入れてくるのが困る。


 それから壁打ちと、書きあがったのを読ませて、矛盾がないか誤字脱字がないかのチェック。それから褒めてもらってポイントが入らない自分を慰める。


 表現を修正してくるのは、あまり採用しない。

 AIは分かりやすく読みやすく、統一感を優先している気がする。なので、あえて引っかかるような表現を使うと、直せ直せと言ってくるのがちょっと嫌。


 そのカクヨムの方は、話を考えるのもプロットも、文章を書き上げるのも、全部AIだというから、私もちょっとやってみようと思った。


 ……そんな気持ちで始めたが、結局楽しくなって、AIを使いながら、結構ちゃんと書いた。

 なので、このエッセイは、大量生産のプロンプトにチャレンジする話ではない。


『これって、どこからがAI小説なんだろう』と思った、と言う話である。




 さて、下準備やプロンプトに凝るのも面倒なので、『なろうでランキングで一位を取れる題名をいくつか出して』みたいな雑なプロンプトで開始した。

 出してくれたのがこちら。


 =(AIコピペ)=


 ### 1. 「図書館に眠る異世界迷宮」

 ### 2. 「君のエコーが、僕の世界を壊した」

 ### 3. 「転生したら冷凍食品工場のライン長でした」

 ### 4. 「友達はみんな、幽霊配信者」

 ### 5. 「魔王を倒して農業始めました」


 ==


 うーん、どうでしょう。これは一位は無理じゃない??


 しかし個人的に、めちゃめちゃ気になるのが一つ。

 この、『3. 「転生したら冷凍食品工場のライン長でした」』が、私は物凄く気になったのである。


 転生してなくね!? この題名、転生してなくないか!? むしろ異世界から転生してくるのか!?


 これのあらすじはこんならしい。


 =(AIコピペ)=


 ## ■ あらすじ


 ブラック企業で過労死した高橋元たかはし はじめは、目を覚ますと異世界の「大精霊冷凍工場」で働いていた。

 肩書は“ライン長”。

 作るのは、魔王軍向けの「冷凍魔物餃子」だ。


「え、これ……戦争兵器じゃん!?」


 異世界の食文化を支える重要部署と聞いていたが、実態は魔王の兵糧基地。

 しかも現場は、人間・ゴブリン・スライム・妖精など種族混合のカオス職場。


「品質管理と改善会議? ないよそんなの! 壊れたら魔法で直せ!」

「冷凍ライン止まったら? 怒鳴ってでも回せ!」


 ブラック企業よりひどい。


 しかし元は、前世で培った「改善スキル」を駆使し始める。

 Excelも会議もない異世界で、“魔法式工程表”を導入し、ラインを自動化。

 やがて冷凍食品が軍需から離れ、“民間向けの冷凍ピザ”として流行し始める。


 だが魔王は激怒する。


「なぜ貴様の餃子を食べると、兵士が戦う気を失うのだ!」


 ――原因は、「うま過ぎて平和になった」せいだった。


 元は、戦争を止めたライン長として“世界一の冷凍食品ブランド”を築き上げる。

 最後に彼は笑う。「うちの製品、心まで温めます。」


 ==


 可愛そうに。ブラック企業からブラック企業に転生。。。

 そのまま、ちょっと最初のほうを書いてみて、と出してもらったらこうなった。


 =(AIコピペ)=


 俺の名前は高橋元。

 三十八歳、独身、冷凍食品メーカー勤務。

 誇れるものは、残業時間と冷凍庫の耐寒スキルくらいだ。


 で――気づいたら死んでた。


 会社の床に星が飛んで、次に目を開けたら石造りの天井。鼻の奥に、氷と油の匂い。起き上がると、角の生えた背広姿が両手を広げた。


「おめでとう! 本日より貴殿は《大精霊冷凍工場》第七ラインの長に任命された!」


 角ビジネスマンは満面の笑みだ。名刺を差し出してくる。

 ――魔王軍供給管理局・局長代理バロック。肩書きが筋肉でパンパンだ。


「ライン長……って、え、ここどこですか」

「魔界の誇る兵站拠点だ。作るは冷凍魔獣ギョウザ。納期は夜明け。以上!」


 以上、じゃない。だが俺の抗議は、轟音にかき消された。


 ==


 え、結構面白いんだけど。と言うのが、率直な感想。


 私には絶対思いつかない。異世界に転移して、日本の知識でチートして、スローライフするやつは憧れるのだけど、ぜんっぜん思いつかないので書けないジャンルである。


 こういうのもいいのかもしれない、と、これをもとに私なりにリライトしたのがこちら。


 ==


 俺の職場は冷凍庫だ。

 今年の夏は暑かった。普段は「大変そうだね」と言われることが多い仕事だが、今年ばかりは羨ましいと言われる。


「うわ、ひどいな」


 扉を開けると、冷凍庫の床がいつもより白かった。結露だ。

 外が蒸し暑いので気をつけなきゃいけないのに、今日は新人が入っていて、出たり入ったりが多かったらしい。


 気をつけつつ、そっと倉庫内に足を入れる。

 床が凍っていて、まるでスケートリンクのようだ。と思ったとき──奥の方でビービーと警告音が響いた。

 何かあったのかと気を取られた瞬間、足元がツルっと鳴った。


「うわっ──!」


 視界がぐるりと回転し、世界が逆さになった。

 ごちん、と、頭蓋骨に激しい衝撃を受けた。頭の奥で、何かが弾ける音がした。

 霜が舞い上がり、冷気が俺の頬を撫でていく。

 ……なんだ、きれいだな、なんて考えたのを覚えている。


「……高橋さん? 高橋さーん!」

「救急車! 頭打ってる!」


 遠くで誰かの声。それから警告音。ビー、ビー、ビー……。

 そのうちそれが、耳鳴りに変わる。


「の、納期……」


 それが俺の、最後のつぶやきだったと思う。




 ……そして、次の瞬間。


「おめでとう! 本日より貴殿は《大精霊冷凍工場》第七ラインの長に任命されました!」


 そんなおっさんのだみ声で、俺は目を覚ました。


「はっ」


 バッと起き上がると、そこは──


「え、事務所?」


 倉庫の事務所の机とソファーをちょっと端に寄せて、無理やり場所を作ったようなスペース。

 そのど真ん中に、俺は寝かされていた。


 いやいや、こういう時は休憩所に連れていって、簡易ベッドに寝かせろって安全マニュアルに……。

 いや、そこまで気が回らなくても、せめてソファーに寝かしてくれないかな!?


 コンクリ打ちっぱなしの冷たい床から身を起こすと、なんか周りに変な絵が描いてある。

 床に落書きしたらダメだろ……最近の新人はそこから教えなきゃいけないのか?


「おお、起きた!! 救世主よ!!」

「……え」


 起き上がると、角の生えた厳つい中年が満面の笑みを浮かべていた。こちらに一枚の紙を差し出している。

 アイボリーの厚紙、何やら仰々しい縁取り。そこには毛筆でこう書いてあった。


「じ、辞令……?」

「人手不足でな……“履歴書不要! 経験者求む!!”とやったら、ついに成功した!!」

「は?」

「ライン長が昨日逃げてしまってな……求人も全く応募がないし……そこで召喚の儀を試してみたのだ。やけくそで」

「召喚?」

「君はこの工場の、救世主だ!!!」


 おっさんの頭には、立派な角。

 よく見れば、周りの落書きは魔法陣のようだ。

 ドアの隙間から、羽の生えた小さい妖精(?)がこちらをのぞいている。


 なんだこれ、もしかして今はやりの……


「いっ、異世界転生……?」

「ここは世界最大規模の冷凍倉庫である、《大精霊冷凍工場》だ!!」


「……ええええ」


 俺はこうして、冷凍庫から冷凍庫へ、転生したのだった。


 ==


 ここまで書けば、『AI小説”ではない”』と、私は思った。……え、これでもだめですかね?

 一応、冷凍倉庫での死亡事故原因とか調べたし、突然任命されるくらいだから、工場は経験者採用したいんだろうとか考えて設定作ったんだけど……

 じつは結構気に入って、このまま投稿したくなったくらいだ。


 しかし、ここからなんですよ。


 私は、自分の文章が、web向きではないんだろうなー、と、薄々思っていまして。


 これでもかなり、作法にのっとって書いたつもりですけど、「web小説っぽい文章だったら、どうなるんだろ」と、思ったのです。


 そして。……なろうと言えばあの、有名なスライム風な文章でリライトしてみてって。


 出来心で。やってみたんです。それがこちら……


 =(AIコピペ)※改行だけ、自分で編集した=


 俺の職場は冷凍庫だ。


 ……うん、文字通りの意味で。


 世間では「冷凍倉庫業」とか言うらしい。

 まあ、食品工場の下請けみたいなもんだ。

 普段は「大変そうだね」と言われる仕事なんだが、今年の夏ばかりはちょっと違った。


「いいなぁ、涼しくて」


 そんな声を聞くたびに、俺は笑ってごまかした。

 中に入れば確かに涼しい。……というか寒い。

 でも、汗が凍るほど寒い場所で働くのを羨ましがる人間は、だいたい中を見たことがない。

 そんな日常の、ほんのワンシーン。


 ――あの日も、いつも通りだったんだ。


 ---


「うわ、ひどいな」


 扉を開けると、冷凍庫の床がいつもより白かった。

 結露だ。嫌なパターンである。

 外が蒸し暑いと、出入りのたびに空気が入れ替わる。

 そして湿気が冷気に触れて、霜となり、氷膜を作る。


 つまり、よく滑る。……非常によく滑る。


「気をつけないとな」と思いつつ、倉庫に足を踏み入れた。


 ああ、これは完全にスケートリンクだな、とか考えてたその時だ。

 奥の方で、ビービーと警告音が鳴った。

 何かトラブルか? と思って気を取られた瞬間――


 ツルッ。


「うわっ──!」


 体が軽くなった。

 いや、違う。足が浮いたんだ。

 視界がぐるりと回って、世界が逆さまになる。

 背中にドンと衝撃。頭の奥で、何かが弾けたような音がした。

 目の端に、青い冷気がゆらめく。

 霜が舞い上がり、俺の頬を撫でていく。


 ……きれいだな、なんて場違いな感想が浮かんだ。


 ---


「……高橋さん? 高橋さーん!」

「救急車! 頭打ってる!」


 遠くで誰かが叫んでいる。

 ああ、やばいな。これは、完全にやらかしたやつだ。


 でも、体はもう動かない。

 警告音が耳鳴りに変わり、頭の奥が遠のいていく。


「の、納期……」


 それが、俺の最後の言葉だったと思う。


 ---


 ……そして、次の瞬間。


「おめでとうございます! 本日より貴殿は《大精霊冷凍工場》第七ラインの長に任命されました!」


 ……ん?


 今、なんて言った?

 なんか、やけにテンション高いおっさんの声が聞こえた気がする。


「はっ」


 反射的に起き上がった。

 周囲を見渡す。そこは、どう見ても見慣れた“事務所”だった。

 机、ソファー、資料の山。


 ただ――妙に狭い。無理やりスペースを作った感じだ。

 その真ん中に俺は寝かされていた。


 あれ、これって……事故った後の応急処置?

 普通こういう時は休憩室に連れていくんじゃ……いや、それよりも床、冷たっ。


 身を起こすと、床に変な模様が描いてあるのに気づいた。


 いや、落書きか? それとも清掃中?

 最近の新人、ルール知らないのか……?


「おお、起きた!! 救世主よ!!」

「……は?」


 顔を上げると、角の生えた厳つい中年男が満面の笑みを浮かべていた。

 あ、これ夢だな。夢か幻覚。たぶん。


「人手不足でな……“経験者求む!!”と求人を出したら、ついに成功した!!」

「え?」

「ライン長が昨日逃げてしまってな……求人も全く来ないし……やけくそで召喚の儀を試してみたのだ!」

「召喚の……儀?」

「そう! 君はこの工場の、救世主だ!!」


 おっさんの頭には、立派な角。

 よく見れば、床の模様は魔法陣。

 ドアの隙間から、羽の生えた小さな妖精がこちらをのぞいている。


 なんだこれ、テンプレにもほどがあるだろ。


「いっ、異世界転生……?」

「ここは世界最大規模の冷凍倉庫、《大精霊冷凍工場》である!!」


「……ええええ」


 ああ、やっぱり夢だ。


 だって、俺は――冷凍庫で死んだんだから。


 つまり、こういうことだ。


 > 俺は、冷凍庫から冷凍庫へ転生した。

 >


 ……笑えねぇ。


 ==


 これが出てきたとき、私、負けたわ、と思いました。


 しかしまず主張したいのは、この文章、『スライムの足元にも及ばない』。


 本家は全く超えられない。でも、確実に、『喰ってる』よな、とは思った。


 そして……この話は、残念ながら。……私が書いたものより、この文章のほうが良いのではないだろうか。と、思ったのだ。


 ちなみにこの後、「剣聖のおっさん風」も出力してみたが、この話については、スライム風が一番良かった。。。



 私の文章をもとに既存の作品風にリライトしたこのバージョンは、私の作品ではない気がする。しかしこれは、『AI小説』だろうか。内容はほぼ変わっていないのに。



 そうは思っても、もし投稿するとしたら、やっぱり自分で書いた方を投稿する。

 しかし、ポイントやアクセス数が欲しいなら、この劣化スライム風のほうが、良い気がするのだ。

 こっちの方がするする読めるもん。


 両方投稿して確かめてみたいけど、まったく同じ話を同時に投稿するのも変だし、場所が違えば反応も違うし、話が違えば反応も違うと思うから、ここに思いのたけをつづってみた。



 AIは便利だ。小説を大量生産できるほどは私はAIに詳しくないが、AIがなければ、私は小説を書けないと思うほどは使っている。


 どこからがAI小説なんだろう。最初のアイディア出しの時点で、AIだからAI小説?


 ポン出ししたのを第一稿として、それに設定を足して書き上げているので、どう書き直してもAI小説だろうか。少しでも書き直したら、修正したら、それはAIにアシストしてもらったでいいのだろうか。


 時間としては、文章を書いている時間は同じだから、いつも書くのと変わらなかった。

 まあ、高橋の話は私には絶対思いつかないから、考える時間の削減と言う意味では驚異的だったけど。



 ……ちなみに『コレ』は、パクりになるんだろうか。パクリと言うにもおこがましいほどの劣化だが。そのまま出力したよりはるかにAIくささは薄まっていると思う。

 それは、仕上げに、『人間の表現を喰った』AIを使っただけだ。


 私自身は、それでも自分で書いた方を投稿する。


 評価は欲しい。リワードだって欲しいけど、数字を上げるために何かをつくるのは、私にとってそれは仕事で、趣味ではない。


 でも、イラスト界隈を見れば、人気絵師の劣化コピーは山ほどあるわけで……リワードも始まったし……

 こういうの、増えるだろうなーと、思ったのでした。




 ……そして、高橋の冷凍庫転生の話はちょっと気に入ったので、ネタ帳にそっと入れたのだった。



読んでいただいてありがとうございました!

初のエッセイ投稿でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
面白く読ませていただきました。 個人的には。ですが、AIを悪いとは思わなくて、AIを使う人のモラル?考え方?に思うところがあります。 AI問題は、なろうでAIを推奨する人たちのエッセイくらいしか知ら…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ