第一章その6
魔動車は街の中に入っていく。
大勢の人々で賑わう目抜き通りに入ると、道行く人達が次々と声をかけてくる。
「アルバートさん! この間あんたに教えてもらった薬草のおかげでとっても良くなったよ!」
「古い文献を調べてみただけなんですけどね。それは良かったです」
「アルバートさん! あんたが勧めてくれた三本爪の鍬、よく売れてるよ!」
「やはり石の多い荒れ地には三本爪ですよね」
「アルバートさん! 言われた通りに店の陳列を見直したらすごい売れ行きでね!」
「何事もちょっとした工夫です」
「アルバートさん! 頼まれてた品、入荷したからな!」
「ありがとうございます。後で取りに伺います」
などとみんながみんな、口々に親しげに声をかけてきて、アルバートはにこやかに笑いながらひとつひとつ丁寧に応対するので、ナユタは目を丸くしてしまった。
「アルバートさん。凄い人気ですね!」
「少しでもみなさんのお役に立とうと思っただけですよ」
アルバートは苦笑する。
ナユタにとってのアルバートは魔動車の研究という印象しかなかったから、多岐に亘る相談に乗ってきたらしい事は意外だった。
「アルバートさん、みんなに慕われているんだ。凄いなー」
「いえいえ、それほどでも」
口では謙遜しながら、誇らしげに胸を張るアルバート。
「ただの変な人だと思ってた」
「ナユタさん……さらっと酷い事を……」
「冗談よ! 冗談だから! 落ち込まないで!」
がっくりと項垂れるアルバートに、慌ててフォローを入れるナユタだった。




