第二章その5
ナユタとアルバートはがたごとと魔動車に揺られながら、街道を行く。
「あのう……アルバートさん、ちょっと聞いてもいい? 答えたくなかったら答えなくても良いんだけど……」
「じゃあ聞かなければ良いのでは?」
「確かにそうなんだけど……」
「冗談です。何でも聞いて下さい」
「あら、そう?」
「ちなみに恋人ならいません」
「それは聞いてないけど」
アルバートのお茶目なジョークを無自覚に一刀両断した後、ナユタは本題を切り出す。
「魔動車ってどこがすごいの?」
「………」
「スピードだって馬車より遅いくらいだし……荷物だってたくさん積める訳じゃないし……正直、アリスがあそこまで夢中になる理由が解らないの」
「ああ、そうですか。そう思うのも無理はありませんね」
アルバートは苦笑しながらも、にこやかに答える。
「今のところ、魔動車には馬車と違って馬の世話のような手がかからない、馬の調子に左右されない、くらいしかメリットがないのは確かです。それも高価な魔力鉱石を使わなければなりませんから、お金がかかるのは問題です」
「じゃあ……」
「ですが魔動車と魔導炉はまだ発展途上の技術です。いずれ技術が進歩すれば、スピードでも積載量でも馬車を追い抜いていく事でしょう」
「そう……なのかな……?」
「もっと大きな乗り物を作る事も可能でしょうし、船の動力に転用したり、あるいは手作業でやっている糸を紡ぐ作業などにも応用する事も考えています」
「へえ……」
ナユタは感嘆の声を上げる。
なるほど、そこまで考えていたのか。
目の前にある魔動車しか見えていなかった自分を恥じ入る思いだ。
でも……。
「いずれ馬車はなくなって、魔動車が街を走る……のかな?」
「そうなるのが目標です」
「じゃあ、馬車に関わる仕事で食べている人はどうなるの?」
それがナユタの疑問だった。
難しい事はナユタには解らないが、魔動車が人を幸せにするか、それは知りたいと思った。
「馬車や馬具を作っている職人は、そのまま魔動車を作る仕事も出来るでしょう。魔動車にも御者は必要です。魔動車が普及すれば、魔力鉱石を採掘する仕事も増えるでしょう」
「………」
「魔動車が発展すれば、遠くの国へ行くのに必要な時間は劇的に短くなるし、物を送ったり取り寄せたりするのも容易になり、人々の生活を豊かにする事でしょう。とても素晴らしい事だと思いませんか?」
アルバートは夢見るように熱く語る。
ナユタも微笑ましくその横顔を見ながら、アリスが言っていた産業革命ってこの事なのかな? と頭の片隅でふと思っ




