第二章 未来は手の中に
「アリス! 大丈夫?」
ナユタは大の字になって寝転がるアリスの元に駆け寄る。
一旦、慌ててはみたものの、よく考えたらアリスはほぼ不死身とか何とか言っていたから、心配する必要はなかったような。
「大丈夫ですか?」
馬車の御者をしていた男性が駆け寄ってくる。
銀髪で長身の青年は、あまり身体を鍛えている雰囲気はないが、なかなかの美形だ。
「ええと……大丈夫だと思います。たぶん、頑丈な子なので……」
普通ならどう考えても大丈夫じゃない轢かれ方だったが、ほぼ不死身だと見知らぬ人に説明してしまって良い物かとナユタは悩む。
すると、がばっと勢い良くアリスの上半身が跳ね起きる。
「これを作ったのはあなた? どうやって動くの? 動力は何? スピードはどこまで? 航続距離は? 積載荷重はどれくらい?」
アリスの口からぽんぽんと質問の言葉が飛び出す。
改めて見ると、ナユタが馬車だと思っていたのは馬車ではなかった。
少なくとも馬で曳いていないのだから、いくら馬車らしく見えていても馬車とは呼べないだろう。
では馬で曳いていないのに、下り坂ではない平地を進んでいた、明らかに馬車ではないが馬車っぽいこれを、何と呼ぶべきだろう?
興味津々のアリスと疑問符を頭の上に浮かべたナユタを見比べた青年は、苦笑して答える。
「私の名前はアルバート。そしてこれは魔動車と言って、私が作りました」
アルバートと名乗った青年は、自慢げに胸を張る。
「この魔動車は、いずれ世界を変える発明なのです」
その言葉を、ナユタはバカみたいにあんぐりと口を開けて聞いていた。




