第一章その2
それから一週間、強行軍は続いた。
さすがに夜は休む物の、夜明けから夕暮れまで休まず歩き続けるアリスとルイスに、ナユタは付いて行くだけで精一杯だ。
というか、良く付いて行ける物だとナユタは自分で自分を誉めてあげたいと思った。
きっとアリスとルイスの事だから、昼夜兼行でも問題ないのかも知れない。
夜は休んでくれるのはアリスの優しさかも知れないが、どうせならその優しさは昼の移動ペースにも発揮してもらえない物か。
「はあ……もうダメ死にそう……」
すでにナユタは疲労困憊、今までどこをどう歩いてきたかもほとんど記憶に残っていない。
ふと気が付くと、建物と建物の間に出来た狭い空間にアリスは立っていた。
逆光になっているせいで、その表情を伺い知る事は出来ない。
だけどアリスのシルエットがぐっと親指を立てたような気がした。
「………」
ナユタは訳も解らず、とりあえず同じように親指を立て見せると、アリスは笑い返してくれた、ような気がした。
アリスはナユタから離れるように一歩を踏み出し、向こう側の通りに飛び出していく。
そして……馬車に轢かれた。
跳ね飛ばされて地面の転がったアリスの身体の上を、がたごとと音を立てて馬車が走っていく。
……………。
…………。
………。
……。
…。
「アリス~~~~~っっっっっ!!!!!」
少し遅れたナユタの声は、虚しく空に消えていった。




