第三章 皇帝陛下の日々
ついさっきまでマティアスの命を狙っていたロザラム達を加え、一気に大所帯になった一行は、帝都への帰路を進んだ。
ロザラムと部下が偵察やら宿の手配やらをしてくれるので、これまでよりずっと快適に、つつがなく旅をする事が出来た。
ナユタとマティアスは事あるごとに「ロザラムは今は大人しくしているが、いつ手の平を返すか解らない、信用しちゃダメだ」と、ロザラムの耳に入るように話し合い、その度にロザラムが嫌な顔をする物だから、それが楽しくて余計に二人して盛り上がった。
そんな一幕はあった物の、ロザラムは傭兵上がりのくせに細やかな気配りで旅をサポートしてくれたので、荒事だけでなく多方面に優秀なのかも知れない。
そして一行は、ついに帝都に帰り着いた。
「よくぞご無事でお戻りになられました。マティアス殿下」
城壁の外で一行を出迎えたのは、ラルダーン帝国の宰相を務めるミュランその人だった。
身なりこそ豪華な刺繍を施した立派な物だが、小柄でいかにも人が良さそうな老人だった。
とてもラルダーン帝国の屋台骨を支える重責を一身に担うやり手には見えない。
「出迎えご苦労である」
マティアスが応じる。
慣れている相手だからなのか、堂々とした態度だ。
「この三人は道中、世話になった者達だ。賓客として粗相のないようにもてなすように」
「はい。承りました」
使用人のように恭しく頭を下げるミュラン。
「帝都の忠実な民衆達が、お帰りになった殿下のお姿を一目見ようと待ち望んでいます。馬車を用意しましたので、どうぞお乗り下さい」
促されるまま、一同は豪華に飾り付けられた馬車に乗り込んでいく。
見上げるほど高い城壁の分厚い城門が開き、馬車はそこをくぐって帝都へ入っていく。
ナユタ達の、帝都での日々が始まる。




