表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄執世界のアリス  作者: 千里万里
第二部 少年皇帝の岐路
58/124

第二章その11

 それからさらに一週間ばかり旅を続けた一行は、ついに霊峰ヴィートコフ山の麓にある神殿に辿り着いた。

 一般の参拝客も訪れるそこは、皇帝への即位を控えた者が山頂を目指す前に立ち寄り、一夜を明かして早朝に出発するのがいつものパターンである。

「これはこれは皇太子殿下。長い旅路を乗り越えてよくぞここまで辿り着かれましたな」

 神殿を司る神官長、相好を崩してマティアスを迎え入れた。

「私の代で皇帝へ即位される殿下をお迎えする事になるとは、身に余る光栄にございます」

「う、うむ。よろしく頼むぞ。神官長」

 若干の緊張を滲ませながら、マティアスが応じる。

「殿下が幼少のみぎり、一度だけ御尊顔を拝謁する栄誉を賜ったのですよ」

「ははは。そうであったか……すまぬ。覚えておらぬ」

「いえいえ。幼少であらせられましたから、無理もありません。御立派に成長されたお姿に感激の思いでいっぱいです」

「ははは……」

 神官長のやたら暑苦しい歓待に、マティアスは苦笑いを浮かべる。

 と、神官長がふいに声を潜める。

「ところでお供はこちらの女性お二人だけですか? 私はてっきり、数十人規模の騎士隊と共にいらっしゃる物と思っていたのですが……いえ、疑っているわけではありませんよ?」

 などと非難の色合いが強くならないように言われる。

 十四歳の皇太子殿下が連れてきたのが、十八歳と十七歳(見た目)の少女であれば、疑うのも無理はない。

 幼い頃のマティアスの顔を見た事がある、というのが唯一の救いだ。

「道中でトラブルがあってな。はぐれてしまったのだ」

「おお、そうでしたか」

「この二人は古くから余に仕えてくれている、信頼の置ける者達だ。手厚く遇してやってくれ」

「それはもちろんですとも!」

 神官長が勢い込んで言ってくれたので、ナユタはそっと胸を撫で下ろした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ